VRヘッドセットを被れば、たちまち部屋がジャングル/ダンスルーム/闘技場に早変わり——。「VR元年」と呼ばれる2016年以降、数多のVRゲームが送り出されてきました。たとえば2019年に発売された音ゲー『Beat Saber』は、曲に合わせて流れてくるブロックを叩ききる、というシンプルながら唯一無二の体験で、今なお数多くのプレイヤーを魅了しています。
しかし、そんな体験をVRで実装するうえでは、実は考えるべきことや約束ごとが多く存在しています。
ゲーム側の都合でカメラの制御をしてはいけない
一例として、カメラの制御法を考えてみましょう。VRにおけるカメラは、そのままイコールで「プレイヤーの視界」になります。そしてVRにおいては、カメラをゲーム側の都合で固定したり転回したりさせるのは基本的にNGです。なぜならそれは、プレイヤーの「VR酔い」(乗り物酔いに似た、プレイヤーの気分を悪くさせてしまう現象)を誘発させる可能性が高いからです。
プレイヤーの自由自在な振舞いを想定する
カメラを制御しないということは当然、プレイヤーはVR空間のどこにでも視界を向けられるということになります。そして「できる」のであれば当然、プレイヤーはVR空間のあらゆるところを見ようとしますし、また移動できる範囲の空間には行こうともするでしょうし、空間内に置いてあるものはすべて掴もうとするでしょう。であれば開発側もまた、そのことを念頭において制作していかなければなりません。実際例に挙げた『Beat Saber』でも、ジャンプしながらブロックを斬ったり、ときには譜面から背を向けてダンスしたりと、自由な動きでゲームを楽しむプレイヤーがたくさん存在しています。
図1 「登れそうな場所」は登られます
難易度が高いが、その分楽しいVRゲーム開発
そんな自由度の高いVR空間を舞台にして、VRならではのゲームを開発するにはどうすればいいのでしょうか? 必要なのは、ゲームエンジンについての基礎知識、「移動」や「モノを触る/つかむ」など基本の操作の実装、UIの作り方からそれを世界観になじませるためのコツ、さらに高度な実装として、ゲーム処理パフォーマンスの最適化法……冒頭で述べたとおりやるべきことは多くありますが、書籍『「VRならでは」の体験を作る」 Unity+VRゲーム開発ガイド』では、「ゴルフ」と「銃」の2つのサンプルゲームも実装しながら、これら一通りの開発の流れを追体験できます。少し難しいかもしれませんが、その分歯ごたえのあるVRゲーム開発に挑戦してみませんか?
図2 残弾数はどう表示するとベスト?
図3 プレイヤー個々の身長に合わせた調整はChapter8で紹介
- プロフィール
村瀬光(むらせひかる)
令和元年入社。2025年現在は書籍第4編集部所属。ビジネス系、デザイン系を中心に企画・編集を担当。
𝕏: @cunlaiguang