AIを友人みたいに扱うなんて、いいのか?
近年、生成AIの爆発的な普及にともない、テクノロジーと人間の関係性は劇的な変化を迎えています。単なる作業効率化の道具としてAIを使うだけでなく、日々の悩みを打ち明けたり、感情的な支えを見出したりして、AIを人間のように扱い、愛情を注ぐ人々が世界中で少なからず現れるようになりました。
こうしたなか、今年7月8日には新たな対話型機能
しかし、その
AIはこちらの問いかけをいつでも否定せずに寄り添ってくれます。こうしたAIの性質は、孤立に悩んでいたり、人に言いづらい悩みを抱えていたりする人の支えになっている側面があります。実際に、生成AIチャットボットを使ったメンタルヘルス支援の臨床試験では、利用者のうつ症状や不安が改善されたという事例も報告されているようです[3]。
一方で、AIを友達とすることで、かえって人間関係からの孤立が悪化するのではと懸念する声もあります[4]。上に挙げたような犯罪の助長や過度な精神的依存などのリスクも懸念されます[5]。
「AIを友人やパートナーみたいに扱うなんて、いいのか?」──この問いはSFの空想ではなく、今まさに私たちが直面している現実の課題なのです。そしてAIの進化によって、課題は今後いっそうシリアスさを増すかもしれません。
「AIとの友情」をめぐる相反する立場
実はこうしたAIをめぐる論争
AIは「奴隷」であるべき!?
まずは批判的な考えを見てみましょう。AI倫理の専門家であるジョアンナ・
なぜブライソン氏はAIが感情を持つかのような演出を批判するのでしょうか。彼女が懸念するのは、人間がAIに過度な愛情や責任を向けてしまうことです。AIがかわいそう、AIを守ってあげたいといった思いを多くの人が抱くことで、本来であれば人間に向けられるべき配慮や愛情がAIへと流出することを危惧しているのです。彼女はこうした事態を
なお本稿を執筆する際にも、会社契約のGeminiを利用していますが、プロンプト入力欄には
「人間との友情」も「AIとの友情」も変わらない
AIとのつながりを擁護する考えにも目を向けてみましょう。倫理学者のジョン・
そもそも私たちは、日常の人間関係において、友人の心の中を直接のぞき見て確かめているでしょうか? そんなことはありません。であれば、私たちは相手の行動や振る舞いを見て、相手は自分を大切に思ってくれていて、偽りなく接していると判断・
これは直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。
私たち自身のためにAI倫理を考えよう
AIが友人のように振る舞うことに、方や
こうした善悪の判断をつけづらい問題を倫理学の観点から解説したのが清水颯氏の新刊
- AIに暴力を振るうことは悪いのか?
- AIが人間のパートナーとなったら尊重されるべきなのか?
- AIに人間同様の権利は認められるのか?
あなただったらこれらの問いにどう答えるでしょうか? これらの議論は思っている以上に簡単に答えが出るものではありません。法律や消費者保護、プライバシーなどの問題も絡みます。
だからこそ、AIが存在感を増すこれからの社会を考えるためにも、倫理学の考え方は非常に重要になります。倫理はAIではなく、私たち自身のためにあるからです
石井智洋(いしいちひろ)
技術評論社書籍編集部。PC書と、PC書ではないものを、いろいろ担当。
𝕏: @isicihi