前回はスマートフォン対応をしていないサイトの話でしたが、今回は「せっかくスマートフォン対応をしているのに、対応方法が微妙なために、ユーザビリティが低下している」という例をいくつか見ていくことにしましょう。
もちろん、ここで紹介している点を解消すれば最高に使いやすいスマートフォンサイトになるわけではありませんが、「こういうサイトでイライラさせられる」という具体例を確認することで、改善への第一歩を踏み出すことができるでしょう。
スマートフォン対応しているのはトップページだけで、ほかのページは未対応
タイトルですでにすべてを語り尽くしていますが、「トップページにアクセスしたらスマートフォン対応されているのに、深い階層のページにアクセスすると普通にPCページになってしまう」というタイプのサイトです。最近減ってきている……気もするのですが、探したらまだけっこう見つかりました。
たとえば以下は、大分市のサイトです。
トップページががんばっているだけに、いざ具体的な情報に触れようとした瞬間にPCページになってしまうと、がっかり感が増幅されます。もちろん、内容を読めないよりはずっとマシではありますが、実際に読みたい内容はトップよりも深い階層のページにあるはずですから、ユーザーとしてはなんだか意地悪をされたような気分になってしまいまい、非常にもったいないと言えます。
スマートフォンで深い階層のページにアクセスするとトップページにリダイレクトされる
第2のパターンは、トップページだけをスマートフォンに対応させていたり、深い階層のページがPCサイトとスマートフォンサイトで1対1対応していないケースについつい発生してしまいがちです。問題が発生するのは、SNS、ブログなどからのリンク、検索エンジンの検索結果からのアクセスなどで、PCとスマートフォン両方から同じURLにアクセスされた場合です。
このケースの最大の問題点は、たとえばユーザーが「Facebookに貼られたリンクのタイトルに興味を惹かれた」あるいは「あるキーワードで検索をした結果、リンクをたどった」といった何らかの目的を持ってアクセスをしたにもかかわらず、トップページにリダイレクトされることで、ユーザーが目的のコンテンツにアクセスできなくなってしまっていることです。これはPC向けのサイトが表示されるよりもさらにユーザビリティが低下した状態といえるでしょう。
こうしたサイトは、Googleでも「問題のあるサイト」と認識されていることは、Googleのウェブマスター向けブログの「スマートフォン向け検索でのランキングの変更について」という記事にもはっきり書かれています。
関連性の低いリダイレクト設定を避ける方法は簡単です:単純に、あるデスクトップユーザー向けページを訪れたスマートフォンユーザーをそのページに対応したスマートフォンユーザー向けページへとリダイレクトさせるだけです。もしそのコンテンツがスマートフォン向けに最適化された形で存在していない場合でも、関連性の低いページにリダイレクトするよりも、リダイレクトをしないでそのコンテンツが載ったデスクトップ環境向けページを表示させる方がよいでしょう。
「そのページに対応したスマートフォンユーザー向けページ」とかかんたんに言っているけど、それができれば苦労はしねえよ!という気持ちも湧いてしまいますが、ここで述べられていることはユーザビリティのためにとても重要ですし、しかもSEO的な問題もあります。PCサイトをそのまま表示したほうがまだマシであるといえるでしょう。
PC向けのURLにアクセスするとPC向けのページの上部に「スマートフォン版はこちら」などと表示される
郵便局の「郵便局・ATMを探す」のページがまさしくこれに該当します。スマートフォンから「郵便局」で検索して、トップページ(このページもPCサイトのみ)にアクセスし、そこからリンクをたどると、以下のページにたどり着きます。
ユーザーエージェントなどをチェックして表示しているのだと思いますが、この挙動にした理由は正直なところまったく謎です。「わかってるなら、スマートフォン向けのページを表示してよ!」と心から思います。PCサイトで見たいケースもあるかもしれませんが、特にこのような検索ページの場合には目的がはっきりしていますから、スマートフォンサイトでもPCサイトでも、その目的さえ果たせればいいわけです。
そもそも、検索エンジンからの導線でPCサイトを最初から表示する意味はまったくありません。しかも、スマートフォン向けのサイトにはGPSを使って現在地付近の郵便局を探す機能なども用意されていて、「最初からこちらを表示すればいいのに……」と強く思います。
スマートフォンからPCサイトで提供されている機能が利用できない
せっかくスマートフォン対応しているのに、使える機能が限定されているケースがあります。費用対効果から、利用頻度の低い機能の対応を削ったり、後回しにしたりといったことは、意思決定としてはまっとうです。しかし、その場合は、ぜひともPCサイトへのアクセス経路を用意してほしいものです。筆者も「PCサイトのURLにアクセスしても、強制的にスマートフォンサイトに飛ばされてしまい、しかもそこにほしい情報や使いたい機能が用意されていない」というケースに過去何度かあったことがあり、非常にフラストレーションがたまった記憶があります。
インタラクティブなマップ機能とサイト全体への操作が衝突してしまう
サイト上にGoogle Mapなどのインタラクティブな地図機能を利用しているケースはよくありますが、スマートフォンとの相性はあまりよくない気がしています。
たとえば「どこかの企業を訪問する」「イベント会場に行く」といった際にその場所の地図を「アクセス方法」といったページから調べたいとします。そのとき、地図が載っていると非常に親切ですが、「PCサイトなので小さくてよくわからない」と、ピンチインして拡大しようとするわけです。しかし、そこでサイト全体の拡大や移動と、地図の拡大や移動の操作が衝突して、ピンのある場所がどこにあるかわからなくなり、リロードを余儀なくされるという経験を筆者はかなりの頻度でしています。
そもそもこれは、PCサイトをスマートフォンで見ているために起こる問題です。そのため、スマートフォンに対応してくれればいいのですが、サイトによっては「インタラクティブな地図を埋め込む必要があるの?」と思うケースもあります。GoogleはStatic Maps APIという、、静的な地図を表示できる機能も用意しているので、もしかしたらこっちで十分なんじゃないか、という気もします。
モバイルサイトの場合は、地図の操作とその他の画面操作が衝突しない作り(たとえば、画面がスクロールしないなど)が多いのですが、モバイルサイトの場合も、静的な地図を検討できるケースもあるかもしれません。
広告といかに付き合うか
インターネットサイト/アプリケーションの収入源の1つに、広告収入が挙げられます。しばらく前に、Yahooショッピングが出展手数料を無料化し、広告収入モデルに移行したことで話題になりました。そして、ウェブサイトでは、いたるところに広告が存在しています。もちろん、スマートフォン向けのサイトも、さまざまな広告が表示されています。その中でも最も一般的なのは、バナー広告でしょう。しかし、ただでさえ狭いスマートフォンの画面内でバナー広告を表示するのは、コンテンツの配置の観点からもなかなか難しいのが現状です。
アプリの中には、「お金を払うと広告が消える」というモデルでアプリ内課金を行っているケースもよく見かけます。サイトだろうとアプリだろうと、開発や運用にはお金がかかりますし、趣味でやるのでなければそこから収益を得なければなりません。広告を画面上に表示するのは収益を確保するひとつの方法であり、それ自身は特に問題になるようなことではありません。
そういった広告は、アドネットワークと契約を結んで表示するケースが多く、そのアドネットワークが公開するSDKを使えばかんたんに広告が導入できます。しかし、アドネットワークによっては、SDKが今ひとつなケースもあります。
たとえば、筆者がいつも鬱陶しいと思っているのは、以下の図のように、「画面をスクロールすると、本来スクリーンの一番下に配置されているべきバナー広告がいっしょにスクロールされてしまう」という広告です。スクロールを止めるとまた一番下に移動するのですが、スクロールしながらサイトを読んでいると、ちょうど見たい場所(スクロールによって表示されるようになる部分)に広告がバッチリかぶって、ものすごく見づらいのです。
数あるアドネットワークから利用するものを選ぶ際の基準は、「広告在庫の数」や「得られる収益」「サイトへの組み込みやすさ」などいろいろありますが、「表示される広告がユーザー体験に及ぼす影響」はかなり重要です。
今回紹介したイライラの原因は、ちょっとした工夫で解消できそうなものです。ただし、どこにユーザーがイライラしているかを気づくのはなかなか難しいですよね。アタリマエのことではありますが、「いかのユーザーの視点に立てるか」が、ユーザビリティ向上には重要ですので、油断しないようにしましょう。