中国では、2014年末ごろからテックスタートアップブームが起こり、その後2021年頃からOSSムーブメントが活性化し始めました。アメリカではOSSムーブメントのほうが先にあり、OSSによって優れたWebアプリを中核にしたスタートアップViaWebの起業とEXITに成功したポール・
そのためか、中国ではOSSプロジェクトそれぞれに対しても、スタートアップ企業を見るような視点で検証されることが多いです。
OSSプロジェクトの健康度合いを測るCHAOSSプロジェクト
Linux Foundationのプロジェクトの1つCHAOSSプロジェクトは、
株式会社には、売上や利益、資本回転率や時価総額といったさまざまな評価指標があります。上場企業であればIR資料として公開が義務づけられていますし、非上場の会社でも投資家向け資料として整備されます。CHAOSSは、OSSプロジェクトに対して定量的な評価と、最終的にはどのプロジェクトにも適用可能な
エンジニアリングの成果であるOSSプロジェクトでは、ソフトウェア工学でもともとあるIssueの発生とクローズまでの期間など、いくつか定量的に評価可能な項目があります。定量的に測れる価値がOSSのすべてではありませんが、OSSへの注目が高まるにつれ、GitHubのForkやStarの数など一部の数字がわかりやすく取り上げられて独り歩きすることが出てきています。
Apache Wayで
CHAOSSの中には、以下の3つのカテゴリの目標があります。
- 実装にとらわれず、指標を開発する
- 指標に基づいてコミュニティを分析する
- 分析に基づいて、他者も検証可能な再現性のあるレポートを発行する
それぞれのターゲットに向けて、
新しくOSSプロジェクトにコミットする人にとって、プロジェクトが健全で持続可能かどうかが事前にわかるのは大事です。それぞれのプロジェクトの運営から見ても、健全さを表す指標があることは、中身を置き去りにした数値ハックに陥らなければ有用です。
このプロジェクトが、中国のOSS界で大人気になっています。会議やレポートへの中国人のコミットも増え、2021年には王晔晖がBoard of Directorの1人に選出されました。毎年発表されている
CHAOSSの考える「いいOSSプロジェクト」とは何か
CHAOSSが指標としているのは、コード量やコミット回数、Star数、Issueの追加やクローズまでの期間のように容易に数値化可能なものだけではありません。たとえば、活動にどれだけ幅広いメンバーが関わっているかを表すエレファントファクター[1]
また、定量評価だけでなく、以下のようなさまざま定性評価も試みようとしています。
- Code of conduct
(行動規範) が定義されているか - メンター制度があり、機能しているか
- 管理が1人でなく委員会の合議制になっていて、委員は多様で開かれているか
以前OSSプロジェクトを中核にしたスタートアップ投資についてレポートしましたが、その際に例に挙げられたPingCAP社のTiDBは、開発コミュニティが成長するに従ってコントリビューションの時間帯がプロジェクトが始まった中国の昼間から、やがて24時間まんべんなくコミットがおこなわれる様子を発表し、プロジェクトの健全性を表す1つとしていました。投資対象であるスタートアップの活動の一環としてOSSプロジェクトを見る姿勢は、アメリカのOSS文化、特にスタートアップブーム前のそれに強く影響されている日本とは大きく違います。
「OSSプロジェクトも企業活動も同じように評価指標で測ることができる」