「Flashはクリエイターの要望に応えていきますよ!」
Adobe取材レポート
この「Flashゲーム制作レクチャー」の連載第一回目を公開した際、一回目を読まれたAdobe関係者の方から有難い応援メールを頂き、それならば~と、Adobeさんへ取材を決行することにした。そのメールをくださった方は、Macromediaさんにもおられた方で、あぁ、Flashを愛しておられるんだなぁ~と、頂いたメールの文章から感じた。今一度、この場を借りてお礼申し上げます。
それでは、2007年9月某日にAdobeさんへ取材したレポを、要点をまとめつつお届けしましょう!
Adobeさんへ質問!
「Macromedia Flash」から「Adobe Flash」に変わり、AdobeさんがFlashに求めるものって何ですか?
Adobeさんといえば、Flashに対するような「LiveMotion」というアプリケーションがあった。LiveMotionはすでに販売終了しているが、Adobeさんから見て、Flashの表現力はWebにおいて重要という認識が当時からあったようだ。現在、MacromediaさんがAdobeさんに吸収されて一つになったことにより、Adobeさんが描く構想はFlashによって結実していくのだろう。今回の取材では、Adobeさんから次のコメントが聞けた。
Adobe:
「二つの会社が一つになったことにより、ユーザー層が広がり、より広い方面からユーザーの声が聞けるようになりました。Adobeとしては、Flashのいい部分+従来のAdobeユーザーにも使いやすいユーザービリティを大事にしていきたい。そして今後も、色々な人に喜んでもらえる機能強化と製品作りをしていきます」
このAdobeさんのコメントは、Flashの最新版である「Flash CS3」でも実現されている。例えば、それまではパス描画の操作はAdobeさんの「Illustlator」とFlashは異なっていたが、今回のCS3では、両者のパス操作が可能になっている。また、Adobeの2大アプリケーション「Photoshop」「Illustlator」とのデータ互換も上手くなった。実際、PhotoshopもIllustlatorも必須のクリエイトツールなわけで、それらとFlashの連携がバッチリ取れることは、Flashクリエイター側にとっても望むことだ。
Adobeさんへ質問!
ケータイ雑誌を見ても、Flashスペックやテクノロジーな紹介記事って無いですけど、Adobeさんはどう思われてます?
皆さんも承知のように、今やFlashは各キャリア端末に搭載されており、コンテンツだけでなくメニューにも用いられている。そこまで浸透しているケータイのFlashだが、ケータイ雑誌を見てもFlashの欠片も見つからないぐらい記事にならないし、ゲームでいえば、アプリゲーム特集はされてもFlashゲーム特集はまず無い。せいぜいサイト紹介で載るぐらいだ。筆者としては非常に不満があったので、この取材の機にAdobeさんに質問をしてみた。
Adobe:
「Adobeとしては、雑誌メディアへFlashLiteをPRしていくのはあまり考えていません。Flashだと意識せず自然に使って頂けるのがあるべき姿と考えていますし、そう浸透していると考えています。ただ、これまでにWebでFlashサイトやコンテンツを作ってこられたユーザーがモバイルではどう作れるかの"ストーリー"は示していく必要はあるかもしれませんね」
これはAdobeさんも言われたが、FlashだろうとJavaだろうと何だろうと、コンテンツが面白ければユーザーは遊んだり楽しむわけで、Flashだから…と意識して選ぶことは普通のユーザーはしない。しかし、筆者は思うのだ。Flashは非常にクリエイティブなツールであり、そこから創作される作品は非常にアーティスティックな作品になる。Flashは、ビジネスなコンテンツツールでもあるがアートなツールでもある。それ故、多くのユーザーがFlashを使って最っと最っとアートをしてもいいのではないか(今のFlashは初心者には高価で難しくなってしまったが…)。それには、一般の人がFlashという表現ツールの楽しさや何が作れるかを知らなければならない。Adobeさんは"ストーリー"と言われたが、Flashだからこそ、こんなストーリーがあってもいいのではないか? と思うのだ。そしてもちろん、これまでの連載の中で書いたように、「Flashならではのゲーム表現の素晴らしさ」。それを最っと多くの人に知って貰いたいし、Flashゲームのムーブメントが起きて欲しい。雑誌メディアさん、Flashアート(待受けもメニューもゲームも全て含めて)の楽しさや面白さを、ぜひ特集よろしくお願いします!!
Adobeさんへ質問!
CS3のエミュレータ「DeviceCentral」について。それと、FlashLiteについて聞きたいです!
ケータイFlashゲーム開発で最もネックになるのは、各端末スペックがまちまちなため、FlashPlayer上で問題なく動作していても各端末で動く保障がないことだ。最新のFlash CS3には「Device Central」が導入され、エミュレータではあるが、これによって多くの端末情報を見ることができ、電波状態やメモリ状態等を設定しての動作テストが行えるようになった。しかし、ケータイ新機種は次々と発売されるわけで、はたしてAdobeさん、これからしっかりサポート続けて頂けるのだろうか?
Adobe:
「FlashLiteのパフォーマンスは、実装段階で各キャリアのスペックへ落ちていくので、FlashLiteスペックはこうだと言っても各端末で差が出るのは実際です(端末によっては完動するかどうかも含めて)。しかし、世界から見れば日本の端末は優れているので、今段階は大きな問題ではないと考えています。DeviceCentralの端末情報は各キャリアから提供頂いてますが、Adobeとしても各端末情報を求めていく考えです」。
Adobeさんは、Flashテクノロジーを提供する側なので、どのFlashLiteバージョンを搭載するかは各キャリア側の選択になる。しかし、Flashの重宝さは、FlashPlayerを見てもわかるように、過去のバージョンでもサポートし続けているところにもあるわけで、ぜひFlashLiteもその良さは継承して欲しい。そうすれば、FlashLiteのバージョンがどんどん進化しても、過去のバージョンで制作されたゲームをずっと遊ぶことができる。
Adobeさんへ質問!
Flashってデザイナーに支持されてきたツールだと思うんですが、昨今のActionScriptって、さすがにもうデザイナーには厳しいんですけど…?
この記事の筆者(西村)は、プランナーでありデザイナーでありプログラマーではない。幸いにしてゲーム制作仕事の中でスクリプトを扱っていたため、Flash 4の当時もActionScript 2.0になっても活用してゲームを組むことができた。しかしそれは、デザイナーとしてであってプログラマーとして組めるわけではない。Flashは、デザイナーでもインタラクティブなコンテンツやゲームを組める画期的なツールであり、Flashがデザイナーに強く支持されてきた理由がそこにもある。しかし、正直言えば、筆者はデザイナーであるのでプログラマーには勝てないし、プログラマーと決闘する気もない。ただ、Flashにおいては、デザイナーがそのセンスを活かしてゲームを作る意味があると考えている。前述したが、Flashはアーティスト性が高いからだ。‥が、最新のCS3に搭載されたActionScript 3.0にしても、さすがにもう厳しい~というか、餅は餅屋で、デザイナーがプログラマーになる限界も感じてしまう。この連載を読まれた方の中にはデザイナーさんも多いと思うが、筆者同様なジレンマを感じている方は少なくないのではないだろうか。そこで、Adobeさんにスバリと質問してみた。
Adobe:
「Flashは使われ方が多様化してきており、全てを丸く収めるのは中々に難しいでしょう。これは研究課題とも考えています。FlashにおいてAdobeが目指しているものは、デザイナーとデベロッパーが共同して制作していくにはどんなツールが望ましいかです。また、クリエイターさんには様々な表現があるわけで、画一的にこれでやってくださいはナンセンスと考えています。クリエイターさんが使いやすいツールをどう提供していくか。Adobeとしてもクリエイター方々から学びつつ製品作りに活かしています」
そしてさらに、「デザイナーとプログラマーが上手くタッグを組んで制作できるFlashの形、それに期待するのですが?」という質問に、次のようなコメントも頂いた。
Adobe:
「まだ詳しいことは言えませんが、期待していてください!」
とても意味深だが、一人でもアーティスティックな作品が制作できるFlash。デザイナーとプログラマーがタッグで制作するコンテンツ。様々なものが制作できるようになったFlashが抱えたジレンマ。今後、Flash一つで全ては解決できないかもしれないが、Flashがユーザーを選ぶことのないよう、Flash元来の良さは無くして欲しくない。
以上!
この他、Adobeさんが力を入れておられる「AIR」の話題や、とてもフレンドリーに色々なお話をお聞きすることができた。
以前、技術評論社さんから出版頂いた「本格ケータイFlash制作本」を制作していた当時、Macromediaさんに取材したところ、Flashへの熱い想いを語って頂き、Flashクリエイターとして嬉しく思った記憶があるが、今回のAdobeさんは、さすが世界トップなアプリケーションメーカーだけあり、クリエイター方々の要望に応えていきますよ~といった堂々とした印象を受けた。
さーて、今後のFlash進化は!?FlashLiteの未来は!?デザイナーとプログラマー両者が活きるFlashの形は!?まるで連載最終回のようなテーマだが、ひとまず今は、Flashを愛するクリエイターとして見守りつつ期待していきたい。
「Adobeさん、頼みましたよ!!」