ゲームデザイン・遊びを作る
ゲームのアイデアを考える
ひとくちにオリジナルのパズルと言っても、まったくの0から新しい遊びを考え出すのは、そう簡単に出来ることではないので、今回は、15パズルをベースにして、そこにワンアイデアをプラス(もしくはマイナス)して、新しいゲームを作ってみようと思う。
15パズルは、筆者自身小学生の頃に夢中になって遊んだゲームのひとつだ。もちろん、それはビデオゲームではなく、プラスチックのおもちゃだったけれど・・・。ただ遊んでいて、ある日ふと思ったんだけど、おもちゃの「15パズル」って、持ち運んだりした時に、他のピースが動いてしまわないように、"押さえ"のピースが必ずひとつ入っているよね。で、当然遊ぶ時にはこのピースを外す事から始める。これって、そのピースを"仲間はずれ"にしているようで、なんとなく嫌だなって感じていたんだ。
じゃぁ、4×4のピースを1枚もあまらせないでゲームが作れないかなぁと、それが今回の"ワンアイデア"だ。
今、あたかもピースを"仲間はずれ"などと擬人化して書いたのだけれど、人間同士の遊びではこんな時どうしているだろう?
例えば「鬼ごっこ」。これも"オニ"という"仲間はずれ"を作っている遊びだ。でも、「鬼ごっこ」の場合は、誰かに"タッチ"すれば"オニ"は交替できるよね。「だったら、ピースも"オニ"を交替させよう!」、「"オニ"を作るんなら、わかりやすいようにピースを増やして4×4+1にしよう。」、「作って遊んでみると中々難しいぞ!縦横一行ずつ減らして3×3+1の10枚ならどうだ?」・・・と、こんな感じでアイデアを膨らませていくと、自然とゲームのイメージが固まってくる。
紙を使ってテストプレイしてみる
パズルのイメージがまとまってきたら、試しに紙で作ってプレイしてみる。頭の中ではよく出来たパズルと思えていたものが、実際にやってみると意外に簡単だったり、逆に全然解けなかったりという事がよくあるからだ。また実際に作ることによって、他の人にテストプレイをお願いすることもできる。たくさんの人にプレイしてもらうと、自分では考えてもいなかった別の正解や解き方が発見されたり、逆にそのパズルの遊び方が理解してもらえなかったり、いろいろな問題が出てくる。それらを踏まえて、パズルの難易度の調整やヒントの出し方、時間制限などの制約を設けた方が良いかどうか等検討を加えていき、だんだんとそのパズルがゲームとして完成していくんだ。
ケータイ上での動作イメージを固める
またそのパズルのケータイ上での表示や操作の方法など動作イメージを考えるのも、テストプレイでの大切な仕事のひとつだ。
以下、テストプレイ時に思いついた動作イメージの留意点と検討内容を挙げてみよう。
(1)カードをシャッフルする
① ケータイ上で、どうやって、ピースをばらばらにしようか?
② ばらばらになっていく過程をプレイヤーに見せるか?
などが、検討課題として挙げられる。
①については、すぐにランダムという言葉が思い浮かぶと思うが、以前(第15回)にも書いたように、15パズルは14と15のカードだけを入れ替えると絶対に解けない。そのために今回作成した15パズルでは、ピースの移動を適当な回数繰り返してピースをシャッフルしたわけだ。これから作ろうとするパズルにも、そのような解けないパターンがあるかどうかはわからないが、万一に備えて今回もピース移動を繰り返すシャッフルを採用することにした。
②については、プレイヤーに「解けるはずなのに解けない」というジレンマをより強く生じさせようとのねらいから、実際にピース移動の過程を見せることにした。
(2)カードをスライドさせてパズルを解いていく
① どんな操作が必要か?
② どのキーを使って行えばいいか。
など、具体的な操作方法をイメージし検討する。
まずカードを動かしながらどのような操作があるかを想起する。15パズルでは縦横4枚ずつ並んだ16ピースの内の1ピース分欠けた所があり、そこに隣接するピースを上下左右にスライドさせるため、2,4,6,8キーを十字キー(もしくは方向キー)に見たてた。
しかしこれから作るパズルでは、縦横3×3にの9枚のピースはすべて揃っており、その内の1枚を押し出すため、その列の反対側にあるピースの脇に、余っているピースを運んでいくという操作が必要となる。ちょうど、オニとなった子がぐるぐると他の子たちの周りを廻るような動きだ。右回りを1キーで左回りを2キーで操作することにする。そしてピースのスライド、これは3キーで行なう。こうして15パズルを元に生まれたゲームではあったが、結果的に操作性はまったく異なるものになった。
(3)出来上がり
① どうすれば完成の判定ができるか?
② 完成時にどんな演出をするか。
完成の判定については、15パズルと同様にオニ以外のすべてのピースが定位置に戻ったかどうかで判定可能となる。
完成時には、オニピースに他のピースの周りをぐるぐると廻らせることで、賑やかに演出したい。
このようにして、新たに作るパズルゲームのイメージが固まった所で、実際の制作に入る訳である。
パズルのタイトルを考える
ゲームのタイトルは、言わばそのゲームの顔と言ってもいい。昔から「名は体を表す」と言うように、そのゲームに相応しい名前をじっくり考えて付けよう。特にオリジナルパズルは、オーバーに言えばそれ自体がゲームの新しいジャンルであると言っても過言ではない(まぁ、人気が出て「遊びとして定着すれば・・・」だけれど・・・。)。ともかく、そんな意味からもタイトルには大いに拘ろう!!
さて、では今回のパズルのタイトルはと言うと、「パズルQ」という名前にした。えっ、単純だって?そう思えるかもしれないけれど、もちろん筆者なりに十分に考えて名付けている。
まず、ピースの並んだ形が”Q”に似ている事。そして、"キュー"には、問題(=クェスチョン)、9(=3×3)、の意味もある。さらにコンピュータの世界では”キュー”と言う言葉に、「入り口から1個入れると反対の出口から1個出てくる構造」という意味あるんだ。どうだい?このゲームのピースのスライドの動きと同じだろう。
それから、もうひとつ。これが大事な事なんだけど、テレビなんかで番組やコーナーが始まる時に、ディレクターさんが「キュー」って声を掛けるよね。この時の”キュー”は、「何かのきっかけとかヒント」とかって意味らしいんだけど、これにも引っ掛けて「パズルQ」って名前に決めたんだ。このゲームが、連載を読んでいただけた皆さんのパズル制作の"きっかけ"になるようにとの願いを込めてね・・・。
オリジナルパズルゲーム「パズルQ」
こうして生まれたパズルが以下のゲームだ。一見して15パズルとあまり変わらないように見えるけれど、実際にプレイしてもらうと、解き方も難易度もまったく異なるパズルとなっていることに気付いていただけることと思う。
また、このパズルのflaは、15パズルの構成とほとんど変わらない。具体的な作りの詳細は、flaおよびそこに仕込んだActionScriptを、15パズルのそれと比較研究していただければと思う。
パズルゲームの制作レクチャーは以上です!
パズルQ、楽しんでね!