Imagine Cupの3日目です。今日は、ソフトウェアデザイン部門の日本代表NISLabのプレゼンを聞きに行ってきましたので、その様子をお伝えしたいと思います。
壮行会に出られなかったので、僕が彼らのプレゼンを見るのは日本大会以来になります。
実際に見てみて驚きました!日本大会時のECOGRIDと比べて、まったくの別物になっていたのです!
新生ECOGRID!!
日本大会時のECOGRIDは、家電製品をネットワークにつなげて遠隔操作できるようにし、さらに電力の状況などをグローバルに共有するというものでした。
でも、作りこみが甘かったり説明不足なところがあったりして、審査員や観客からつっこまれた点が多かったのも事実でした。そこで彼らは、日本大会から世界大会までの2ヵ月間にコンセプトやインタフェース、プレゼンテーションをほとんど1から考え直し、新生ECOGRIDを完成させたのです。
ECOGRIDの大きな改善点は、「機能の変更」と「優れたインタフェース」の2点です。
機能の変更
ECOGRIDは、遠隔操作に重点を置いたソフトウェアから、家電製品を自動で制御するソフトウェアに生まれ変わりました。
新生ECOGRIDでは、あらゆるセンサーや家電の動作状況から部屋の状況を判断し、自律的に家電を操作できます。たとえば、家でプロジェクタを使ってパソコンで映画を観るとき、パソコンとプロジェクタ、部屋の照明を連携させておけば、「パソコンを起動する」だけで「プロジェクタの起動」と「部屋の照明を落とす」という一連の動作が行えます。具体的には、家電製品のリモコン受光部にECOGRIDが指示を与え、家電を操作するという方法です。最初、家電を自動制御すると聞いたときは、家電側が対応しなければならないのかと思いましたが、リモコンの受光部をインタフェースにするという発想に驚きました。
省エネ生活を始めようと思ったとき、「エコ」となる行動を日常的に意識することが必要になると思います。しかし、どれだけ気をつけてもやっぱり電気の消し忘れなどはやってしまうでしょう(特に僕のようなずぼらな人間は^^;)。もし、コンピュータが今の部屋の状況を理解して自律的に電力を制御してくれれば、消し忘れのような無駄な消費は劇的に削減できるのではないでしょうか。彼らはそれが実現可能だということを、新生ECOGRIDで証明したのです。
優れたインタフェース
続いて、新生ECOGRIDのインタフェースの改善点について紹介します。
新生ECOGRIDは起動後のトップ画面がとにかくカッコいいんです!そよ風が吹く草原にメニューが浮かんでいるんです!この草の動きがめっちゃカッコいいんです!
また、家電を登録する方法も非常にシンプルで、QRコードをカメラに映すだけです。登録するときにコントロールパネルを開かなくても登録できるのがいいですね。
そして、登録された家電はコントロールパネル上に家電アイコンとして表示され、それらをドラッグ&ドロップするだけで電力を制御することができます。文字も大きく、直感的で、お年寄りでも使えるインタフェースになっていると思いました。
世界レベルのプレゼンテーション
また、プレゼンテーションもこの世界大会で進化を遂げました。必要のない説明を一切省いたことで重要なところがクローズアップされ、さらに図表や背景イメージのセンスも洗練されて、日本大会のプレゼンを圧倒的に超えてきました!これらのプレゼンは、日本大会後に参加した前山君が担当しました。プレゼンの内容もかなり良くなっていたのですが、前山君の発表がさらに良かったと思います。
前山君は英語もネイティブスピーカー並みにこなします。途中、デモで機器のトラブルがありましたがそれをウマく笑いに変え、すぐにビデオに切り替えるなど、臨機応変な対応も完璧でした。そして、前山君のプレゼンには強弱があり、非常に人を惹き付けるなあと思いました。
プレゼン後の4人
発表後、待ち構えていた日本の記者に、プレゼン中のトラブルについて聞かれると「その点に関しては少し悔いが残りますが、次は必ず成功させます」と、前向きに答えてくれました。
きっと、一番悔しい思いをしているのは、彼らのはずです。でも、起こってしまったトラブルに対して言い訳するわけではなく、改善すべき点を素直にうけとめ、次をしっかりと見つめています。これは、優秀な人でも、なかなかできることではないと思います。
彼らは本当に凄い。そして、素直でカッコいいなと思いました。
そして、結果発表
プレゼンの直後に、セミファイナルへ進出するチームの発表がホテルの広間で行われました。各国の代表が集まり、国旗がひしめき、不安、期待が入り交じった独特の雰囲気に包まれた会場。日本代表も祈るように結果を待ちます。そんな中、進出チームが書かれた紙を手にJoe Wilson氏が登場。
1チーム1チーム発表されていく中、呼ばれたチームからは歓声が沸き、まわりからは大きな拍手が贈られました。
そして、残念ながらチームNISLabの名前は呼ばれることはありませんでした。
歓声に沸くチームと悔しさを滲ませるチーム。勝負というのは本当に厳しいものです。ただ、彼らはまだ若く、可能性に満ちています。また来年このステージを目指すこともできます。ここでの悔しさが後の人生の大きな糧になるのではないでしょうか。
Imagine Cup 2008は、これからファイナルへ向かいます。彼らのImagine Cupでの挑戦はここで一区切りを迎えますが、会期中彼らが得られるものはまだまだ多いはずです。そして、この大会を通じて始まった彼らの「本気」の挑戦は、今まさにスタートを迎えたばかりなのです。