組込み教育委員会

6-3 組込み技術者試験制度(ETEC) 第6回

組込み技術者の人材育成・教育支援への取り組み

今回は、ETEC(組込み技術者試験制度。イーテックと呼びます)発表から約2年を迎えた組込みソフトウェア技術者試験クラス2(クラス2試験と呼びます)の最新動向についてお話をさせていただきたいと思います。

当協会ではクラス2試験の利便性向上や品質向上のために、JASA試験委員会内に数々のワーキンググループを設置し、クラス2試験の普及啓蒙やイベント企画、試験問題作成・問題入れ替え、試験結果データ集計・分析や評価取りまとめなど、クラス2試験の改善のために活動をしています。

その活動から以下のご報告をします。

(1)受験データの公開

これまでクラス2試験を多くの方に受験していただき、量的に一定の評価が可能であると判断いたしましたので、業界の発展のために受験者全体に関わる情報の一部を公開します表1⁠。

表1 受験者データ(2006年11月から2008年5月まで)
項目内容
平均スコア483点
受験者のグレード割合A:19.9%
B:58.1%
C:22.0%
分野別平均正答率技術要素:58%
開発技術:63%
管理技術:67%

総合点の平均、分野別正答率平均値などを公開(四半期ごとに更新)します。ご自身の評価のご参考として、また企業の社内評価制度、社内研修の成果などにご利用いただけます。

ただし個人情報に関するものは公開することはありません。

(2)再受験率の向上

クラス2試験の再受験率は2008年5月現在で全体の約8%、複数回の受験者がいます。2回目ならず3回目を受験している人もいますので、組込み技術のスキルアップに余念がないと感じます。まとめると次のようになります。

  • 1回目の試験の結果、グレードがB・Cだった方は2回、3回と受験する率が高い図1
  • 再受験全体の平均スコア(新評価方式)が50点アップ
  • 初回グレードCの再受験は1/2がグレードBに、初回グレードBの再受験は1/3がグレードA
  • 初回受験後、半年以内の再受験が全体の75%を締める表2
図1 複数受験によるグレードの割合の変化
図1 複数受験によるグレードの割合の変化
表2 受験間隔
受験の間隔割合
31~60日11%
61~120日41%
121~180日23%
181日~1年未満22%
1年以上2%

(3)出題範囲の項目追加

クラス2試験の出題領域の定義に経済産業省が策定した組込みスキル標準(ETSS)を利用していますが、その中の「開発技術」「クロス開発技術」という項目を追加します表3⁠。

これは、組込みソフトウェア開発技術において、⁠プログラムの設計・開発環境⁠⁠デバッグテスト環境⁠が異なるという特性を集約させ、組込みソフトウェア技術者のための試験であるということをわかりやすくするためです。なお、出題範囲の一部表記が変更になりましたが、クロス開発は従来より「第3階層プログラミング」に定義されており、クラス2試験の出題範囲に変更はありません。

表3 出題範囲
第1階層第2階層第3階層スキル項目
ソフトウェア詳細設計ソフトウェアの詳細設計設計手法分割、モジュール化、隠蔽化、フローチャート、タイミングチート、UML、状態遷移図、設計ツール など
信頼性設計、実時間設計QoS、誤り検出 など
ソフトウェアの詳細設計のレビューレビューレビュー手法 など
ソフトウェアコード作成とテストプログラムの作成とプログラムテスト項目の抽出プログラミングC言語に関すること、コーディング規約、MISRA-C、プログラミング技術、チューニング技術、オブジェクトモジュール、静的解析ツール、カバレッジ、同値分割 など
コードレビューとプログラムテスト項目のデザインレビューレビューレビュー手法 など
プログラムテストの実施プログラムテストカバレッジ、同値分割、ホワイトボックステスト、ドライバ、スタブ、自動化テスト、テストツール など
ソフトウェアソフトウェア結合テスト環境設定/構築、テストツールの選定、直交表、カバレッジ、自動化テスト など
クロス開発技術オブジェクトファイルフォーマット、PIC、リロケータブルファイル、コードチューニング など

(4)定期的なセミナーと組込み教科書との連動

業界の底上げと組込みエンジニアの裾野を拡大したいという目的もあり、組込みソフトウェア技術者試験を開始しましたので、活用促進として、定期的にセミナーを開催しています。詳しくはWebサイトをご覧ください。

さらに組込みソフト技術者育成のための参考書籍や試験対策書籍も発売されましたが、最近発売になりました、次の書籍(技術評論社刊)にもクラス2試験のロゴ付きで連動しています。

『標準テキスト 組込みプログラミング』
≪ハードウェア基礎≫A5判、288ページ
≪ソフトウェア基礎≫A5判、224ページ

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