この連載では、OSSコンソーシアム データベース部会のメンバーが、さまざまなオープンソースデータベースの毎月の出来事をお伝えしています。MySQL Cluster 8.0.16 DMRがリリースされました。PostgreSQLでは、PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの年度成果が公開と、バージョンアップ情報をお伝えします。
前回の取り取り時報でも取り上げたOSSコンソーシアム主催の「第3回データベース比較セミナー」ですが、セミナーの講演スライドを調整がすんだものから順次公開しています。資料をご参照いただくだけでも、大変に参考になると思います。
[MySQL]2019年5月の主な出来事
2019年5月はMySQLの製品アップデートはありませんでした。MySQL 8.0.16がリリースされた4月下旬には、第45回の原稿締切後にも製品リリースのアナウンスが続き、特にMySQL Clusterは次期バージョン8.0のDMR(開発途上版)や製品版のMySQL Cluster 7.6.10、7.5.14、7.4.24、7.3.25の各マイナーバージョンがリリースされました。マイナーバージョンは基本的にバグ修正のみとなっていますが、それぞれ同梱されるMySQLサーバーに含まれるOpenSSLライブラリの脆弱性対策が含まれていますので、ご利用中の方はバージョンアップをご検討ください。
5月に開催された主なイベントでは、5月7日にMySQL Clusterの生みの親であるMikael RonstromとMySQL Cluster開発チームのマネージャーBernd Ocklinが新機能や今後のロードマップについて語りました。オープンソースのベンチマークツールYCSB(Yahoo! Cloud Serving Benchmark)でのキーバリュー型の参照更新処理性能は、MySQL Clusterが持つ高い性能拡張性や耐障害性を担保した上で、MongoDBやApache Cassandraなどと比べて遙かに高いスループットを少ないノード数でかつSQL経由でのアクセスで達成していることが紹介されていました。
またMySQL Clusterの内部スレッドの挙動の解説や、ペタバイトクラスのデータを管理するための機能改良、TPC-HやTPC-DSといったデータウェアハウス系のベンチマークのSQLをより高速に処理するための改良など、開発者ならではのディープなトピック満載のイベントでした。このイベントの資料はこちらのページにて公開されています。
また5月17日には、日本オラクルのDeveloper Marketingチーム主催のOracle Code Tokyo 2019が開催され、MySQL関連のセッションではヤフー株式会社の三谷氏によるMySQL 8.0の新機能を語る講演に多くの来場者が参加していました。日本MySQLユーザ会のセッションでは、初めてMySQL部門のOracle ACEのうち日本在住の5名が共演し「Oracle ACEが語る!ここがヘンだよMySQL」と題したライトニングトークを行い非常に盛り上がりました。
さらに日本オラクルのセールスコンサルタント 茂こと氏によるKubernetesのセッションでは、Kubernetes Operatorの1つでMySQL開発チームが開発中のMySQL OperatorによるMySQL InnoDB Clusterの構築についても解説されていました。このイベントの資料は「Oracle Code Tokyo 2019」のページにて公開されています。
[PostgreSQL]2019年5月の主な出来事
注目の出来事は、まずはPostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの年度成果の公開でしょう。また、PostgreSQL本体のマイナーバージョンアップもありました。
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム、2018年度活動成果の公開と成果発表会
PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)は、4月25日に東京、5月10日に大阪で2018年度の活動成果の発表会を開催しました。PGEConsは3つの部会、技術部会、広報・発信部会、CR(Community Relations)部会で活動しています。2018年度も高レベルな技術検証を行って、その成果が公開されました。4月25日の発表会には約100名が参加されており、PGEConsの活動成果への期待が大きいことを示しています。この記事では、技術部会の3つのワーキンググループ(WG)から発表された内容からピックアップして紹介します。
新技術検証WG (WG1)は、最新バージョンのPostgreSQL 11の、性能を中心にした検証を実施しています。前期まで稼働環境はLinuxを対象にしてきましたが、今回は同じ内容の検証をWindows版でも実施しています。LinuxかWindowsかの観点は気になる方も多いのではないでしょうか。また、その他に機能強化された点についても検証を実施しています。
移行WG (WG2)は、データベースをPostgreSQLに移行する際の、全体像を把握しやすくするガイドブックを作成しました。データベース移行はPGEConsが発足してから、ずっと一貫して取り組んでいるテーマです。これまでの活動の蓄積をベースとしていますので、実用的なガイドブックになっているものと思います。
課題検討WG (WG3)は、PostgreSQLに関する複数の課題に並行して取り組んでいます。
- Windows環境での運用課題について(リソース監視やバックアップ、Linux環境との違いなど)
- 性能課題への対処について(パラメータチューニングに使えるツールなど)
- パーティショニングについて(PostgreSQL 11の宣言的パーティショニングなど)
成果報告書は、これまでの成果と合わせてPGEConsのWebサイトで一般公開されています。国内でPostgreSQLを推進している代表企業が結集して実施した成果報告です。レベルもボリュームも重量級ですが、もちろんそれだけの価値がある内容になっています。
PostgreSQL 11.3、10.8、9.6.13、9.5.17、9.4.22がリリース
2019年5月9日に、PostgreSQLのマイナーバージョンアップである、11.3、10.8、9.6.13、9.5.17、9.4.22 がリリースされました。バグやセキュリティの問題の修正が含まれています。新バージョンの変更点(技術情報)は、SRA OSSのWebサイトに、それぞれのバージョンごとに日本語で詳しくまとまっています。
2019年6月以降開催予定のセミナーやイベント、ユーザ会の活動
日程 |
大阪:2019年5月30日(木)14:00~17:00(13:30受付開始)
東京:2019年6月6日(木)【申込受付終了】
名古屋:2019年6月6日(木)14:00~17:00(13:30受付開始)
福岡:2019年6月13日(木) 14:00~17:00 (13:30受付開始)
東京追加開催:2019年6月14日(金) 14:00~17:00 (13:30受付開始) |
場所 |
日本オラクル株式会社 西日本支社 関西オフィス
大阪市北区堂島2-4-27 新藤田ビル 9F
日本オラクル株式会社 本社
港区北青山2-5-8 13Fセミナールーム
日本オラクル株式会社 中日本支社 東海オフィス
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパークビジネスセンタービル 10F
日本オラクル株式会社 西日本支社 九州オフィス 福岡市中央区天神1-12-7 福岡ダイヤモンドビル 8F |
内容 |
大好評のMySQL入門セミナーをMySQL 8.0 対応版で開催します!! 今回のセミナーでは、初心者向けに、MySQL 8.0 のインストール方法、基礎的なアーキテクチャ、基本的な使い方等を解説します。最新バージョンのMySQL 8.0 をベースに解説します。これからMySQLを触る方や、今までMySQLに触れているけどMySQLについてきちんと勉強したことが無いといった方はぜひご参加ください。 |
主催 |
日本オラクル MySQL GBU |
日程 |
2019年7月13日(土) 10:00~18:00 (展示は16:00まで) |
場所 |
名古屋市中小企業振興会館
OSC受付:2F 第1ファッション展示場) |
内容 |
今年の名古屋でのオープンソースカンファレンスは7月の開催になっています。OSSデータベース関連では、MySQLの最新バージョンであるMySQL 8.0や、PostgreSQL等の導入支援サービスなどの出展があります。また、OSSコンソーシアムも参加します(セミナー発表は教育ICT部会)。 |
主催 |
オープンソースカンファレンス実行委員会 |
日程 |
2019年7月2日(火)15:00~17:00(13:30からの総会も傍聴可能です) |
場所 |
ゲートシティ大崎 |
内容 |
データベース関連ではありませんが、私たちOSSコンソーシアムの10周年を記念してセミナーを開催します。
【基調講演】総務省 大臣官房企画課 課長補佐 鈴木智晴 様、OpenIDファウンデーション・ジャパン 理事 富士榮尚寛 様
詳細はOSSコンソーシアムのWebサイトをご参照ください。恒例の交流会(懇親会)にも申し込みできます。 |
主催 |
OSSコンソーシアム |