前回はオンライン活動がメインなコミュニティとオフライン活動がメインなコミュニティの比較、そして、オンライン活動を活発に行うためには? という内容をご紹介しました。今回は、コミュニティ活動を行うためのチームには何が必要かというテーマにフォーカスしたいと思います。
部会内でチームに必要なものについて考えたとき、2つの観点が思い浮かびました。それは、チーム力と個人力です。まずは、チーム内で役割分担し、チームワークを形成する。チームの力を発揮していこうという観点。もう一方は、個人が楽しく、触発しあいながら活動する、個人の力を発揮していこうという観点です。そこで今回は、この2つの観点をもとにコミュニティ活動でのチームビルディングや、自己成長などについて考えていきます。
第1の観点: チーム力
――こんなんできました判谷パパ、川西ママ、東隊長――
この記事を読まれている皆様は、おそらく何かしらのチームやプロジェクトに所属されていると思います。まずは、TestLink日本語化部会の事例を元に、コミュニティのチーム力について考えてみたいと思います。
一定以上の人数が集まる集団では、必ずといってよいほど、役割が存在します。舞台であれば、脚本家、演出家、照明、小道具、大道具、会計……など。会社であれば、経営陣、経理、庶務、営業……など。TestLink日本語化部会にも、いろいろな役割があります。
それぞれの役割、働きぶりについて、簡単に見ていきましょう。
プロジェクトマネージャ
我が部会には個性溢れるプロジェクトマネージャが3名います。
- 判谷パパ
第3回で紹介したツール導入は、いつも判谷さんが行ってくれています。ツール愛好家であり、同時に活用名人。また広報活動の活発さは部会No.1でしょう。その行動力から、部会内では親しみをこめて「判谷パパ」の愛称で呼ばれています。
- 川西ママ
合言葉は「即レスジョウトウ!」川西さんの即レスがあるからこそ、メールの投げやすいメーリングリストになっていると言っても過言ではないでしょう。JaSSTの前夜には、よなべでTシャツにアイロンプリントをしてくれるところから、いつしか「川西ママ」と呼ばれるようになりました。
※川西さんは男性です。
- 東隊長
我が部会の起爆剤、オフ会は彼がいないと始まりません。もちろん、MLに率先して笑いを投下してくれるのも「東隊長」。仕事も楽しいけど、たまには息抜きしたいよ!と言うメンバの悩みに、にこやかに答えてくれます。
会計
会計担当は、西原さん&東隊長の2名です(東隊長は兼任です)。主に、部会内で発生する入出金の管理をしてくれています。お金が発生する時期になると、MLに「申請してくださいねー」のメールを投げてくれます。そして、部会内で決定したフローに従い、お金の処理がなされます。
入出金の例:
- 入金される原稿料
- サーバ管理費などの部会運用費
- JaSST'08Kansaiで配布したCDの費用
- JaSSTで着用しているTシャツなどの費用
各種奉行
第2回でも書きましたが、部会内では、原稿の執筆や翻訳レビューのモデレータやイベントのメイン担当者など、タスクを仕切る人を「奉行」と呼んでいます。担当者はとくに決まっておらず、手の空いている人、やりたい人が行います。
各種侍
侍についても第2回で少し触れています。翻訳や原稿のレビューアを部会内では、「侍」と呼んでいます。こちらも奉行同様特に担当者は決まっていません。手の空いている人、やりたい人が行います。
重要なのは、各自が「やらされている」のではなく「やりたいと思ってやっている」ところにあります。コミュニティに参加したら、何か役割を担ってみると良いでしょう。そこで、いつもの仕事とはちょっと違うことを経験してみるのも良いですし、自分の得意分野で活躍するのも良いでしょう。活動の中で、思いもよらぬ発見もあります。
「役割分担し、組織を形成していく」─職務での役割分担がないぶん、コミュニティでのチーム作りでは、まずそこから始めなければなりません。各人が自発的に役割を見つけていくなど、役割分担が自然にできてくることで、コミュニティ活動におけるチームが形作られ、チームとして成長していくのではないでしょうか。
第2の観点: 個人力
――ついでに成長しちゃおう――
第1の観点では、チームビルディング、チームとしての成長をテーマとしました。第2の観点では、個人としての成長(自己成長)をテーマとします。
コミュニティというからには、不特定多数の人が集まっています。それは大きな集団かもしれませんし、小さな集団かもしれません。私たち日本語化部会のように、1つの成果物を作り上げる集団かもしれませんし、そうではない集団かもしれません。ただ、コミュニティがどのような形態であっても個人の成長につながる場所があるはずです。
たとえば、以下のような場面があるでしょう。
- 知識習得
- 本や講習会などでは知ることのできない個人の生の知識や経験、ノウハウを聞くことができます。共通の興味があり、異なる経験を持つ人同士が出会うことによって「共創」が生まれていくものです。
- やる気
人がやっているのを知って、自分もやらなければ、という気持ちになれます。受け身でいるより、積極的に関わっていった方が楽しいことが「わかる」でしょう。
- 気づき
それぞれ異なった経験、知識を持つ人達が集まるので、異なった視点や観点に「気づく」ことができます。自分の中の「常識」は、今までの経験が影響していることを「実感」できるのではないでしょうか。
また、イベントに参加することも成長のきっかけになるでしょう。
- ワークショップ
たとえば、ソフトウェアテストのワークショップとしてはWACATEがあります。泊りがけで演習に取り組み、参加者同士で話をすることにより、普段とは異なった経験ができます。会社の人間関係では得ることのできない種類の「やる気」のアップ。帰りには成長を実感することができます。
- 勉強会
勉強会は、「自分も貢献する」という気持ちで臨んだほうがよりよく身につくと思います。貢献のしかたはいろいろあるでしょう。自身の経験を話したり、よい質問をすることも貢献。また、自分が何を学べたかをアウトプットすることも貢献です。TETの中だけでも、東京近郊で開催されるTEF勉強会だけでなく、TEF札幌勉強会、てふかん(TEF関西勉強会)、TEF東海勉強会、TEF九州メーリングリストなど、勉強会に参加するチャンスは数多くあります。
このように個人個人が自己成長し、モチベーションを高めていくことも、コミュニティでのチームではとても重要なことです。
まとめ: チーム力 × 個人力 = ∞
――「自己確立」と「自他共楽」の実践――
「自己確立」と「自他共楽」というのは少林寺拳法で使われる言葉です。この言葉は、自分自身を拠り所とできる人になること、そして、そんな人たちが互いに協力していくことによって、世の中を良いものにしていくことができる、という考え方を表しています。これはコミュニティ活動において、個々人の力(個人力)をチーム力として生かしていくこと、また、チーム力が個人力をさらに高めていくことと「同じ」です。
自分から積極的に動いて、他の人たちと協力しあうことで、1+1が2ではなく3にも4にも成果が上がっていきます。協力しあえる関係だと、物事が速く、かつ質の高いことができる、ということを実感できます。やる気の高い人達と触れ合うことで自分自身のモチベーションが高くなります。「踊るアホウに見るアホウ、同じアホなら、踊らなにゃ、ソンソン」。受身でいるより、自分自身がアクティブに関わっていくほうが楽しいものです。
最後に、先哲の言葉を引用して、まとめとしたいと思います。
人間関係の能力を持つことによって、よい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他の関係において、貢献を重視することによって、よい人間関係が持てる。こうして人間関係が生産的となる。生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。
――by P.F.Drucker
以上が第4回になります。コミュニティ活動について、チームの成長という観点と個人の成長という観点から見てみました。一見、両者は矛盾するようですが、深く関わりあっているものだと、私たちもあらためて気づくことができました。この「気づき」が、コミュニティに参加してみようという方や、これから中心的にコミュニティを引っ張っていこうという方の助力になればと思います。