うまくいくチーム開発のツール戦略

第24回SalesforceとJiraを連携してみよう!(後編)

前編では,業務プロセス管理にSalesforceを利用している場合,作業効率や費用対効果をあげるために開発側のプロジェクト管理をJiraと連携させることを考え,それぞれが持つ機能の特徴をまとめました。ここからは,お互いのツールの良さを活かす連携の具体例を検討してみましょう。

アドオンによるJiraの機能拡張

Jiraの標準機能では業務要件が満たせなくても,アドオンを使って機能を拡張すれば要件を満たせる場合があります。2017年12月現在,Atlassian Marketplaceでは,有償/無償合わせて1,500種類ほどJiraのアドオンが提供されています。

よく利用されているアドオンの一例を次に紹介します。

予実管理

Jiraには標準で作業の見積もりと実績を入力する予実管理機能がありますが,予実を入力するためのインターフェースは非常にシンプルです図1⁠。簡単に予実情報を入力/集計できるアドオンとして,TEMPO Timesheet,TEMPO Plannerがあります。

図1 予実管理のインターフェース
図1 予実管理のインターフェース
WBSガントチャート

課題に開始予定と終了予定を設定することによりガントバーを表示し,作業に先行/後続の依存関係を付けて,ガントチャートの形式で表示できます図2⁠。作業担当者が課題に進捗状況を入力すると自動的にガントチャートに反映されるので,ガントチャート側を細々と修正するような手間が省けます。

図2 WBSガントチャート
図2 WBSガントチャート

SalesforceとJiraの連携

社内でSalesforceとJiraの両方を利用している場合,双方のデータに同じキー項目を持たせてデータの紐付けや分析に利用したい,といったことが多々あると思います。たいていは,Salesforceは営業部門,JiraはIT部門で利用しているので,まず営業部門で払い出した案件番号と取引先IDをメールなどを使って開発部門の担当に連携し,開発部門でJiraに案件管理用のプロジェクトを作成します。その後,課題に取引先などの情報を設定するという流れが一般的です。

しかし,手作業での処理では,対応漏れや誤入力が発生しやすく,後続処理やレポートの正確性に影響が出るリスクが高くなります。このようなケースにおいて,Jiraの標準機能やアドオンを利用すれば,Salesforce-Jira間の連携を自動化できます。

続いて,SalesforceとJiraの連携でどのようなデータ連携が可能か,いくつか例を挙げて紹介します。

Jiraのメールハンドリングを使ったデータ連携

Jiraにメールサーバ(POP/IMAP)情報を設定しておくと,該当メールサーバに届いたメールを定期的に取得し,メールハンドリングルールに従って課題を作成したり,課題にコメントを追加したりといったことができます。

たとえば,Salesforceで業務委託の契約が締結したタイミングで,Jiraに案件管理用のプロジェクト作成の依頼メールを自動送信し,Jiraではメールの内容をもとに課題を新規作成することができます。

メールハンドリングを使ったデータ連携はとても簡単に設定できますが,利用できる項目が「送信元」⁠件名」⁠本文」くらいしかないので,詳細なデータ設定には不向きです。

Webhook/Apex/REST APIを使ったデータ連携

Webhook/Apex[1]⁠/REST APIを使うと,追加/更新対象の項目を細かく制御できます。Salesforceでは,Apexを使って,ボタンクリックやレコード更新をトリガとしてデータをJiraのREST APIにPOSTできます。

たとえば,顧客からの製品の修理依頼をSalesforceで管理し,製品の改修対応の進捗をJiraで管理している場合,Salesforceで修理依頼のレコードを登録したタイミングで,Jiraに修理対応の課題を作成できます。

Jiraでは,Webhookを使って,課題の更新などをトリガとしてデータをSalesforceのREST APIにPOSTできるので,Jiraで管理している修理の進捗状況をリアルタイムでSalesforceの修理依頼情報に反映できます。

Salesforceで管理しているすべての取引先や問い合わせ情報をJiraユーザに照会させたい場合は,Salesforceの取引先や問い合わせ情報をバッチ処理で定期的に取得して,Jiraに課題を作成するようなしくみを作っておくとよいと思います。

アドオンを使ったデータ連携

Webhook/Apex/REST APIを利用するとたいていのデータ連携のしくみは実現できると思いますが,オブジェクトや課題の項目に変更があった場合,プログラムの修正や設定の変更に手間がかかってしまいます。

Jiraにアドオン「Salesforce & Jira Server Connector」を追加すると,アドオン側で次のような機能を提供するので,とても簡単にSalesforce-Jiraの連携が設定でき,運用後のメンテナンスも簡単になります。

  • Salesforce-Jira連携用の認証設定
  • Jira(課題)とSalesforce(オブジェクト)の項目のマッピング
  • Jiraの課題とSalesforceオブジェクトのリンク設定
  • Jiraの課題からSalesforceオブジェクトのデータをPull
  • Jiraの課題のデータをSalesforceオブジェクトにPush
Salesforce & Jira Server Connector
https://marketplace.atlassian.com/plugins/net.customware.plugins.connector.salesforce.salesforce-connector-plugin/server/overview

今回は,Jiraの基本機能,SalesforceとJiraのデータ連携手段について紹介しました。メールハンドリング,Webhook/Apex/REST APIは各ツールの標準機能なので,Salesforce-Jiraの連携に限らずさまざまなシステムとデータを連携して利用でき,アイデア次第で業務の効率化が図れます。IT部門に送られてくる問い合わせメールをもとにJiraの課題を自動で作成するようにしておくだけでも,問い合わせの対応漏れを防ぎ,過去の問い合わせも素早く見つけ出すことが可能になります。

まずは,簡単にできそうなところから試してみてはいかがでしょうか。

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