読者の皆さんこんにちは、TISの鈴木と日立情報通信エンジニアリングの池田です。
第一話(第1、2回)では「テスト計画」を取り上げました。一口にテスト計画と言っても検討しなければならないことが多くあります。単純に体制図と線表を作成すれば計画は終了と考えていた中山君は、結果として大塚先輩にたくさん指摘されることになりました。「テスト計画=テストスケジュール」ではありません。これは基本的なことですが、正しく理解しておく必要があります。
さて、今回から始まる第二話は「テスト分析」について取り上げます。果たして中山君は順調にリーダとしての役割を全うすることができるでしょうか…。
【今回の登場人物】
- 大塚先輩:
- 入社10年目。5年前に柏田マネジャーと一緒にソフトウェアテスト事業を立ち上げた。カメラが趣味で、暇さえあれば写真を撮りに出かける。
- 中山君:
- 入社5年目。本連載の主人公。入社以来ソフトウェアテスト一筋で経験を積んできた。そろそろ大きい仕事をしたいと考えている。
テスト分析
中山君は、前回はじめてのテスト計画で、今まで経験したことのない作業と失敗をしました。リーダは実に沢山のことを考える必要があります。
下の立場からリーダの姿をみると、リーダの仕事はメンバに仕事を振っているだけの簡単な作業だと思っていました。ですから、数年間経験を積んできたのだからすんなりできるだろうと軽く考えていました。ところが、いざリーダという立場になり、その大変さがわかってきた今日この頃です。
大塚先輩から指摘をもらった後改めて計画書を作成し、何度か大塚先輩から指導を受け、ようやく再提出することができました。その再提出された計画書に目を通していた大塚先輩は、視線を上げて…。
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大塚先輩:
- お疲れさま。これなら初めてのテスト計画書としてはなんとか及第点だろう。
中山君は「お疲れさま」という大塚先輩のねぎらいの言葉に、ほっとすると同時に今までの苦労も吹き飛ぶ気分です。
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中山君:
- ありがとうございます! 本当にご迷惑をおかけしっぱなしだったんですが、おかげさまで良い物ができて良かったです!
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大塚先輩:
- …さて、次はテスト分析だが、これは大丈夫かい?
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中山君:
- はっ、…はい! 以前にテスト分析を手伝ったことがあるので、今度は大丈夫だと思います!
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大塚先輩:
- そうか、それは頼もしい言葉だね。俺は別のチームが佳境だから、そっちの面倒を見る必要がある。中山君の方で作業を進めておいてくれないかな。
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中山君:
- はい、わかりました!
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大塚先輩:
- もし何か問題があったら、すぐに連絡すること。えぇと、どれくらいでできるかな?
中山君は少し考えてこう答えました。
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中山君:
- 前回、結構時間がかかってしまったので、リスクを考えて5日間ください。
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- ……
中山君の言葉に大塚先輩は一瞬何か言いたげな表情を見せましたが、了解すると、別のチームの面倒を見に行ってしまいました。
中山君はこのとき、ようやく次の「テスト分析」工程に入ることができる喜びで舞い上がっており、その一瞬の表情は見逃してしまいました。
さて、ようやくテスト計画書にOKをもらい、自席に戻ってきた中山君。嬉々としてテスト分析の作業に取りかかっているかというと、そうではなく腕組みをして考え込んでいます。表情も優れない様子でため息ばかりをついています。
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中山君:
- はぁ、つい調子の良いこと言っちゃったよ。どうしようかなぁ…。
中山君はテスト計画書にOKをもらったのが嬉しく、大塚先輩の質問につい調子のいいことを言ってしまいました。読者の皆さんはうすうす気が付いたと思いますが、中山君はテスト分析の経験がありません。ですから、どんな作業なのか、見当がつきません。
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中山君:
- そうだ、こういうときはネットで調べてみよう!
さっそく中山君はブラウザを開き、キーワード「テスト分析」で検索してみました。そうすると、次の説明がヒットしました。
TestPedia
- テスト分析
- 仕様書を入手し、テスト設計を行うために仕様を理解すること。
このとき、テスト分析結果を文書としてまとめる。
※ TestPediaはこの連載中の架空のもので、実際は存在しません(2009年4月時点)。
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中山君:
- なるほど、まず仕様書を入手して、中身をチェックするんだな。そのチェック結果をドキュメントとして作成すればよさそうだな。
中山君は先輩達がテスト分析らしき作業を行っていたときの様子を思い出しました。
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中山君:
- そういえば、Q&Aみたいな感じのものをまとめていたような気がするなぁ。
中山君は、仕様書に書かれていることについての疑問点や間違いといったものをQ&Aドキュメントとしてまとめることにしました。そして、早速、読むべき仕様書を入手するために、自席の書類入れをひっくり返し始めたのでした……
5日後
時間はあっという間に経って、5日後になりました。テスト計画と同様、今まで担当したことがない作業です。しかし、前回の失敗を繰り返さないために、どういった作業であるのかをネットで調べました。自分なりに仕様書を読み、Q&Aシートも作成しました。今回こそはちゃんとやれたはずだと自信を持ちながら、大塚先輩のもとに作業報告に出かけました。
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中山君:
- 大塚先輩、テスト分析ができました。見ていただけますか。
そう言って、中山君は大塚先輩に、自分の作業結果であるドキュメントを資料を手渡しました。大塚先輩は一通り目を通すと、口を開きました。
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大塚先輩:
- 君は以前テスト分析をしたことがあると言っていたけど、本当にやったことがあるのかい? 作業も内容も不十分だ。
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中山君:
- 「!!!」
中山君が大塚先輩に見せたテスト分析の成果物は図1です。
さて、皆さん。
この成果物には、いったいどのような問題点が考えられるでしょうか?
また、作業に入る前にも大きなミスを犯しています。皆さんも大塚先輩の立場になって、何を指摘すれば良いか考えてみてください。
[後編(第4回)に続く…]
(イラスト:ひのみえ)