新春特別企画

クラウド元年のライフハック

年末、僕は新しく職場で仕事のために購入したMacBook Proのセットアップを行っていました。ふだん利用するブラウザの整備、ブックマークの移行、アプリケーションのインストール、そしてデータのコピー。

これらの作業の基本的なところが終了するまでに、以前ならCD/DVDメディアをとりかえながら数時間がかかったことでしょう。しかし今回かかった時間は、たったの20分でした。

というのも、すべてのブックマーク・パスワード・必要なファイルがオンラインストレージに置いてあるだけでなく、アプリケーションの多くがネット上のもので置き換えられたからです。

2009年を振り返り、2010年に目を向けたとき、僕は来る年に「クラウド」がバズワードを脱却して、⁠皆の生活の不可欠な一部分」になるのではないかと期待しています。

クラウドはもはや仕事や生活の一部を置き換えつつある

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「クラウド」にもさまざまな定義がありますが、簡単にいうならデータが手元ではなく、インターネット上においてあることでメリットを享受できるサービスのことを指していると考えてください。

MacBook Proのセットアップを始めたとき、そもそもメールはすべてGMailに、RSS記事はGoogle Readerに、写真はすべてFlickrにおいてありますから、そもそも移行する必要がありませんでした。これらは、みなさんが馴染みのあるクラウドサービスではないでしょうか。

これに加えて、⁠データが手元とネット上の両方にある」という新しい種類のサービスも大きく僕の生活を変えました。たとえば僕の書きかけのブログ記事や参考資料、メモなどはすべてEvernoteに入っていたため、Evernoteをインストールしてアカウント情報を入力するだけで、膨大な情報がすぐに手元にやってきました。また、私はWindowsならばMy Documents、Macならホームにあたるフォルダの内容すべてをDropboxの中に入れていますので、インストールするだけで仕事とプライベートのファイルがすべてアクセス可能になりました。

同じことはXmarksに格納したFirefox/Safariのブックマーク、iDiskで共有されているTextExpanderの短縮スニペット、またはDropbox を介して複数マシン間で共有されている1Passwordのパスワードファイルにも当てはまります。これらのサービスは、なんらかの形でデータをネット上に置くことが可能です。つまりネット上に存在することで、⁠ファイルはどこにあるのか」という疑問が意味を成さなくなったのです。

それらはいつでも手に入る、クラウドのなかにあります。そしてクラウドは思った以上に僕らの生活を変えつつあるのです。

クラウド的生活へのポータル、iPhone

2009年は、iPhoneやAndroidといったスマートフォンの受容が一段と進んだ年でもありました。これは特定の機種の機能が良いか悪いかという話ではなく、スマートフォンがクラウドへのポータル(扉)として不可欠になってきたということの証なのだろうと僕は思っています。

たとえば2009年にブレイクしたTwitterを使っている人の多くがiPhoneユーザーであるのは多くのことを語っていると思います。ウェブから利用することが自然なサービスに対して、iPhoneは手のひらの中でそれを利用するための道筋を与えてくれるのです。

このあたりは、佐々木正悟さんとの共著iPhone情報仕事術の中でも詳しく書かせていただきました。

クラウド的思考にシフトしよう

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これまでもGMailのように、ひとつのクラウドサービスを便利に利用することは多くありました。しかし、仕事と生活のすべてを便利にするクラウドサービスのピースがそろったのが2009年で、それが一段と受容されるのが2010年だと僕はみています。

この大きなパラダイムシフトをどうやって受け止めればいいのでしょうか?

僕はまず「クラウドを信じろ」ということを挙げたいと思います。データをすべてネット上のサービスにとりあえずアップしてみると、⁠あのパソコンにあのファイルが...」といった「場所」の問題が解決されて、あとは「この仕事をしている時間はあるのか」⁠それだけの気力が残っているか」という「時間」「アテンション」の問題に帰着します。ネットが生み出す、新しい近道の世界なのです。これを勇気をもって受け入れてみましょう。

もうひとつは、iPhoneであれ、Evernoteの便利な検索技であれ、必要なときに、必要な情報に、最低ステップでアクセスすることができる「道筋づくりを意識しよう」ということだと思います。

場所にしばられていたために本質的に空間との戦いとなって、手間がかかっていたのがクラウド以前の情報整理でした。これがクラウド時代を迎え、自分の利用する情報のすべてが検索の先にあるようになりました。今度はその情報を引き出すための「ただしいキーワード」を思い出せるかが、これまで以上に重要になるのです。つまりは「ファイリング術」「パソコンのフォルダ整理術」といったことから開放された、より本質的で知的な思考方法が要求されるのです。

2010年はそんな意味での、⁠みんなのためのクラウド元年」になるのではないでしょうか。そしてそのすべてのピースは、みなさんの手元にすでにあるのです。

そんな期待のあふれる2010年。今年もよろしくお願いします。

Happy Lifehacking!

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