キャプチャーという習慣とからめて語ってみます。
ユビキタス・キャプチャーという習慣
前回 紹介しましたZTD の、10個の習慣の第一番目に、ユビキタス・キャプチャーがあります。それだけ重要でZTDの基本となる習慣です。( ※2 ) 。
簡単に説明しますと、ユビキタス・キャプチャーとは、いつでもどこでも小さなノートを携帯し、頭に浮かんだあらゆること(タスク、アイデアなど)を書いていく習慣です。これはGTDでの「収集」のプロセスにあたりますが、まとまった時間を「収集」にあてることはありません。眠っている時間以外、常に収集をしているのがユビキタス・キャプチャーだと言えます。
やはり「いつでもどこも」というのが重要で、キーワードだけでも書いておくことで、後から見ても記憶がよみがえります。日記のように一日の終わりにまとめて書こうとしても、何も思い出せないということになりがちです。
このように、いつでもどこでもメモをする習慣を身に付けることで、全てがここにある、という感覚を持つことができます。それによってある種の安心感が得られるでしょう。
また前回も書きましたが、筆者は保険として「忘却力 」( 小飼弾氏)をユビキタス・キャプチャーにもプラスしています。どういうことかと言いますと、
ユビキタス・キャプチャーでなんでも記録しよう
万一メモやノートがないなら、忘れてもいいや、大事なことなら忘れないだろう
という心持ちの2段構えをとることで、どちらにしろストレスフリーとなる状態を取ることを目的としています。
自分でもいささかいい加減だなあと思いますが、こういったゆるい姿勢が結局長続きすることを助け、ユビキタス・キャプチャーという習慣を定着させることができたのです。
モレスキンというノート
Zen Habits では、ユビキタス・キャプチャーを実践するにあたってのツールは、シンプルで、携帯しやすく、使いやすいノートもしくはカードを薦めています。具体例としてモレスキンとHipster PDAが挙げられていますが、Hipster PDAでのユビキタス・キャプチャーは、保存や読み返すのにやや難点があると思い筆者は実践していません。ですから、ここではモレスキンによるユビキタス・キャプチャーについて扱っていきます。
モレスキンと無印良品プラマン
モレスキンとは、堅い表紙、ノートが開かないように留めるゴムバンド、何かと便利な巻末ポケットなどの特徴をもつ手帳です。多くの愛用者がいて、それぞれ一家言あるかと思います。
モレスキンの大きさは、14cm×9cmのポケットサイズが、いつでもどこでも持ち歩くユビキタス・キャプチャーには向いているでしょう。
また無地や罫線、方眼などのタイプがありますが、これは各自の好みでいいかと思います。筆者は方眼を使っています。
さらにノートの開き方にも、横開きのクラシックと縦開きレポーターがあり、筆者はクラシックを使っています。
モレスキンに書き込むペンについても、好みはそれぞれです。
一つ紹介すると、筆者は主にぺんてるのプラマン という水性ペンを使っています。色は黒・青・赤があります。モレスキンの紙質に合っているように感じることと、価格が手頃なのが気にいっています。特に無印良品から出ているプラマン[3] は、ぺんてるのプラマンより50円ほど安いのがありがたいところです。筆者はどちらも使っていますが、製品としてはほぼ変わりはないと感じています。
なお、「 何かと便利な」と書きました、モレスキンの最後についているポケットですが、実は筆者はほとんど使っていません。このポケットを開くという習慣がなかなか定着せず、結局ブラックボックス化してしまいました。何かよい活用法がないか考えているところです。
モレスキンでユビキタス・キャプチャーの実践
モレスキンでのユビキタス・キャプチャーのやり方はシンプルです。モレスキンを常に持ち歩いて、思いついたアイデアやタスクなどをすぐに記録するだけです。繰り返しになりますが、これはできるかぎり、その時その場で書いた方がいいと思います。単語程度の走り書きでも、後で読み返した際に結構思い出せるものです。そして、その時に詳しい情報をつけ加えるといいでしょう。
問題になるのがペンをどう携帯するかということです。モレスキンと一緒にペンを携帯するのは各方面で話題になっていますが、なかなか決定的な解決法はなく、ユーザーがそれぞれ工夫しているようです[4] 。
また夏場のクールビズ期などはモレスキン自体を携帯するのも苦労します。ヒップポケットに入れるのも、いくら丈夫なモレスキンとはいえちょっと躊躇します。
その時は胸ポケットのHipster PDAに書いておき、必要があれば後でモレスキンに転記すればいいでしょう。この転記する作業の手間を私はあまり苦にしていません。むしろ転記作業の過程でアイデアがふくらんでいくことが、ユビキタス・キャプチャーの醍醐味だと思うくらいです。
さて筆者がモレスキンに書き込む時のコツとして、タスクについてはチェックボックスを、アイデアなどについては通し番号をつけるようにしています。
タスクは完了させるか、GTD用のHipster PDAに転記して赤の「レ」点などで消します。またアイデアなどについては、通し番号をつけておくことによって、参照したりリンクをするのに便利になります。たとえば下記のように書きます。
562- 4-hours writing □b
1日4時間書く→i-417
書けなくても他のことはしない
from チャンドラー=村上春樹
「562」が通し番号[5] 、「 □b」はブログに書く予定ということで、書いたら□に「レ」点を入れてチェックします。また「i-417」はリンクを示していて、「 417」を見れば「562」と関連したことが書いてあるという表示です。
ちなみにユビキタス・キャプチャーの書き込みは単語中心であまり長い文章は書きません。その方が後から読み返す時にアイデアが広がる余地があるように思います。
[4] 筆者は最近、ほぼ日手帳 のカバーをモレスキンにかけています。モレスキンのサイズが一回り小さいため、ややぶかぶかではありますが、ペンはカバーに差すことでモレスキンと一緒に携帯できています。この際のペンはプラマンだとクリップ部がひっかかって抜きにくいのでハイテックCコレト を差しています。
「私の本」としてのモレスキン
モレスキンでユビキタス・キャプチャーをやっていると一冊の本のようになり、後から読み返すのが楽しい気分になれます。筆者はこの読み返すという作業のためにユビキタス・キャプチャーをやっているようなものです。
筆者は最初、高価なモレスキンがもったいなく感じ、A7サイズのリングメモでユビキタス・キャプチャーをやっていましたが、こちらはあまり読み返す気になれませんでした。ユビキタス・キャプチャーでは、後で読み返すという習慣がおそらく重要で、項目にリンクを張ったり、情報を足しながら読み返すことで、そこから新しいアイデアが生まれることがあります。そういう意味でも、少々値は張りますがモレスキンをおすすめしたいところです。
書き終えたモレスキンは「私の本」として世界に一つだけの価値をもつでしょう。そして後から活用することで、それはいわゆる日記に止まらない資産となってくれることと思います。
モレスキンに、様々な写真や雑誌の切り抜きなどを貼り合わせてコラージュを作る人もいます。ゴムバンドのおかげて多少分厚くなっても閉じることができます。それも「私の本」に彩りを与えてくれるでしょう。
さて次回は、モレスキン・メモポケッツという、独特の形状をもつモレスキンを使ってGTDを実践してみます。これは今までの連載の流れからちょっと外れますが、アイデアとしては非常におもしろいのでぜひお付き合いください。