前回モレスキンを使ってユビキタス・キャプチャーを実践するということをお話しました。ユビキタス・キャプチャーはZTDの習慣のひとつですが、ここでは、モレスキンでGTDそのものを実践することを考えてみます。
ここで使うのがモレスキン・メモポケッツという、数あるモレスキンのラインアップの中でも、一風変わったツールです。
モレスキン・メモポケッツとロディア
モレスキン・メモポケッツは閉じた状態だと、モレスキンのノートと見た目は変わりませんが、ゴムバンドを開くと中は6つのポケットに分かれています。モレスキンのノートの最後についている、ポケットだけで構成されていると言えば分かりやすいでしょう。ノート部分は一切ありません。そのためノートタイプと比べて本体は非常に軽く感じます。
大きさはノートと同じくラージサイズ、ポケットサイズの2種類ありますが、筆者はモバイル性を考えてポケットサイズ(14cm×9cm)を使ってます。
このモレスキン・メモポケッツに、タスクを書いた紙片をそれぞれのポケットに振り分けて入れることで、GTDを実践しようというわけです。
タスクを書き出すメモ帳には、ブロックロディア(以下、ロディア)を使っています。
ロディアは1枚ずつ切り取ることができるメモ帳です。大きさは、胸ポケットにすんなり入る、カバーなどの種類も多いNo.11が、モレスキン・メモポケッツにちょうどいい大きさと思われます(10.5cm×7.4cm)(※1)。
モレスキン・メモポケッツがGTDツールとして機能するかは、ロディアを大人使いできるかどうかによると思います。1冊あたり80枚のロディアNo.11を、1週間と言わず2、3日で使い切ってしまうくらいであればいいでしょう。もったいないような気もしますが、コスト的には缶コーヒーを2本我慢すればお釣りが出る程度です。
思いついたことをどんどん書いてどんどん切り取っていく。だからこそ、切れ味のいいロディアが有効です。
ではモレスキン・メモポケッツと、ロディアNo.11というポケットメモ帳を組み合わせた、GTDの実践方法を見ていきましょう。
モレスキン・メモポケッツでGTDを実践する
モレスキン・メモポケッツでGTDを実践するにあたって、私は6つのポケットを次のように分けています。
- In-box 白紙
- NextAction
- Project
- Someday
- Hold
- 資料その他
あとはGTDのフローに従うだけです。
胸ポケットにロディアNo.11を入れておき、思いついたタスクなどをその場で記入し、切り取ります。この場合、ロディア1枚に1タスクが原則です。
次に、切り取ったロディアの紙片は、まとめて保管しておくか「In-box」に入れておきます。そして、あるタイミングでGTDのフローに従い、それぞれのポケットに振り分けていきます。この切り取ったロディアを一時的に保管するには、様々なロディアカバーを使うのもいいかもしれません。ロディアカバーの中には、ペンホルダーがついているものもあり、ペンを一緒に携帯できて便利です。
また、A4サイズの資料など、モレスキン・メモポケッツに入らない大きさについては、ロディアに参照先を記入して入れておけばいいでしょう。「プロジェクトA→書類棚一番上に」という具合です。
完了したタスク=ロディアは、モレスキン・メモポケッツから取り出して丸めて捨てます。表面だけ使って捨てるのがもったいないと思うのであれば、裏面を再利用するために、表面のタスクを赤ペンなどで消して「In-box」へ入れておけばいいでしょう。
しかし、ロディア→モレスキン・メモポケッツ→完了という流れを重視すれば、ロディアは表面だけを使った方がスムースのように思えます。
GTD+Rをモレスキン・メモポケッツで実践する~GTD+R+M
モレスキン・メモポケッツとロディアでのGTDは、同じくロディアを使うGTD+Rとの相性がいいようです。GTD+Rのやり方は、本家GTDと若干異なっていますので連載「GTDでお仕事カイゼン!」を見てもらうといいでしょう。
この場合、モレスキン・メモポケッツについては、6つのポケットをたとえば次のように配置します。
- Today/In-box
- Week
- Month
- Someday
- Hold
- 資料その他
GTD+Rでは、毎日朝一番に「Today/In-box」と「Week」をレビューします。その日にやるタスクがあれば「Week」から「Today/In-box」へ移します。そしてその日はもっぱら、「Today/In-box」からタスクを無くすことに集中すればいいわけです。もちろん新しく発生したタスクは、ロディアに記入して「Today/In-box」に入れておきます。
毎週1回「Month」までをレビューする、毎月1回「Someday」までをレビューするというやり方になります。
この一連のGTD+Rのフローが、モレスキン・メモポケッツ1冊で済むところがポイントです。
またモレスキン・メモポケッツは、コンパクトで持ち運びしやすいので、常に持ち歩いておくと、ちょっとした時間にGTDのレビューができて便利です。
このやり方を筆者は、GTD+Rに敬意を表して「GTD+R+M」と呼んでいます。この「M」はモレスキン=Moleskineの「M」です。
このように自分なりにGTD+Rを実践して感じたのは、本家GTDでの最重要習慣であり、かつ、つまずきの石でもある週次レビューが、毎朝、週1、月1とうまく分散されて、あまり負担にならず気楽にレビューできるということでした。たとえば、もっとも多くのロディアで膨らむであろう「Someday」は、GTDの週次レビューでは毎週確認することになりますが、GTD+Rのやり方だと、月1回確認すればよいことになります。
また、GTD+Rはカードゲームのように行えるので、GTDのレビューがより楽しいものとなるでしょう。
モレスキン・メモポケッツとロディアで実践するGTDでは、ワンアクションで完了するタスクと、複数のアクションで成り立つプロジェクトの区別はありません。そのためプロジェクトメモと、そのプロジェクトに関する細かいタスクメモ(ワンアクションタスク)が、バラバラになってしまうということがあります。
そこで筆者のコツとして、プロジェクトは、プロジェクト名をロディア上部に大きく書き、その下へワンアクションタスクを並べていくということをしています。
たとえばこのようになります。
(プロ)というのは「プロジェクト」であることを示してします。こうすれば1枚のロディアでプロジェクトを管理することが可能です。
モレスキン2冊でスッキリ~一つの理想形
モレスキンはその手触りがよく、使うこと自体の楽しみが得られます。英語でtextureという語がありますが、まさにそのtextureがすぐれているのがモレスキンです。常に触っていたいと思わせることは、毎日使うアナログツールとしては重要な条件でしょう。
またロディアに関しても、よく似た商品が100円ショップなどにありますが、メモを切り取る際の心地よさはロディアが圧倒的にすぐれています。ここは安い方を選ぶか、心地よさを選ぶかという判断になるでしょう。しかし、ここは心地よさを選んだ方が習慣が続くように思います。
前回と今回紹介しましたモレスキン2冊それぞれで、ユビキタス・キャプチャーとGTDを実践するシステムは、シンプルで使い勝手がよく、これで一つの理想形ではないかと思います。
モレスキンのポケットノートでユビキタス・キャプチャーを実践し、アイデアなどを収集します。あるいはロディアにメモをしておきます。そして、オフィスやカフェ、書斎などでちょっと時間を作り、今度はモレスキン・メモポケッツを使って、ユビキタス・キャプチャーで収集したアイデアやタスク、ロディアのメモなどをGTD+R+Mで処理していく……。
このやり方はGTDのシステムとしては理想に近い気がします[2]。
しかし、筆者は現在、また別のアナログツールを愛用しています。それがトラベラーズノートです。堅いtextureのモレスキンに対して、仕組みも含め柔らかいtextureが特徴のトラベラーズノートについては次回紹介します。