ゼリーフライを知っていますか?
自転車にまたがってあちこち出かけると、地元ならではの食べ物や地元ならではの食べ方に出会う。
ネーミングが意外だったり、おもわず引いてしまうような食材だったり、「美味しいですか」と聞かれて、口の中でもごもごするしかない食べ方だったりする。
ゼリーフライは旨い。
そしてもう一品、フライも旨い。
和田竜著『のぼうの城』を読んで、はじめて忍城の存在を知った。豊臣秀吉の関東攻めの時に唯一落城しなかった城だということもさることながら、沼沢地を埋め立てず、そのまま沼の中に城を築いていたということにぐっと心を惹かれた。
更に更に、この城を攻略したのが石田三成で、湖面に浮いた城に対して大将秀吉張りの水攻めを仕掛けたというのだから面白い。
忍城址は水城公園として残っているし、天守閣(は、本来は無かったようだけど)も郷土資料館として再建されている。三成の築いた石田堤も一部保存されているという。
歴史ごとは大好きなので、同好の士を誘って出かけた。
そこで出会ったのが、ゼリーフライとフライである。
行田市をあげて売り出し中のアイドルらしく、市内のあちこちに点在するフライ・ゼリーフライ取扱店を載せたフライマップも配布されている。
まずは車を停めた駐車場に隣接する、食べ物屋……ではないお土産物屋の一画で受注生産してくれるゼリーフライを食した。
まあ、なんというか、ソースにどっぷりと浸した柔らかいコロッケ。
生地に豆腐が練り込んであり、ふわっとしていて、なんとなくゼリーを思わせるからゼリーフライ。
という説と、形が昔の銭に似ているので、銭フライと言っていたのが、ゼニーフライ、ゼリーフライとなった、という説があるそうな。
漢字で書くと「銭富来」。ほんとかね。
まあ、由来はともかく、一個数十円だし、味が濃いので少量で口が満足するから、ちょっと小腹が空いたときやおやつに丁度いい。お土産に買って帰ったけど、やっぱり揚げたての方が旨い。こういうものは出かけていって食べなくてはいかんのだ。
では、フライとは何か。
もったいつけずにいこう。
薄いクレープ状の生地の間に、ドロッとしたソース味の豚肉やキャベツを炒めた具を挟んで半月状に折り畳んだもの、だ。
こちらは味が濃い上、ボリュームたっぷり。プレーンなタイプでも大きな皿からはみ出さんばかりに広がっている。その存在感は圧巻だ。自転車で行動中だから平らげることが出来たのだと思う。
同行者は数百円というワンコイン以下の値段から分量を甘く見つもり、焼きそば入りなぞという無謀な選択をして、目を白黒、腹を丸々させていた。
地元の高校生達は、一人で2枚くらい放課後のおやつとしてぺろりと平らげていくとのこと。この値段でこのボリューム。こんな素敵な食べ物があるというのは、ぺろりと平らげる胃袋と共にうらやましい限りだ。
ゼリーフライとフライ。
続けて食べれば一日中体からソースのにおいが立ち上る。
ああ、ソースのにおいが思い出されて、また食べたくなってきたなあ。
古墳時代から戦国時代へ・忍城址フライポタリング
地図:Pro Atlas(Yahoo JAPAN!)
さて、今回も車での現地入り。最近、列車輪行していないなあ。
さきたま風土記の丘・さきたま古墳公園の駐車場に車をデポジット。
でこぼこはあるけど、こんな立派な駐車場が無料で使えるのは嬉しい限りです。
駐車場の入口に屋台が一軒。
到着したときは閉まっていたのですが、自転車を組み立ている内にソースのにおい(行田のにおいはソース味)が漂ってきました。
のぞいてみると元気なおばあちゃんがせっせと太麺の焼きそばを焼いています。
「東京からきたんかい・あたしも昔は東京にいたんだよ」と、きさくに話しながら、ペラペラパックにてんこ盛りにして、フタでぐいっと押しつけて渡してくれました。紅ショウガを多めに入れてもらったのだけれど、これがとてつもなくしょっぱい。紅ショウガは普通盛りがおすすめです。
まずは古墳公園内を散策します。
古墳公園と言うだけあって、園内は古墳だらけ。緑が萌え始めた古墳たちは、芝生や堀に浮かぶひょうたん島のようで、どれも愛らしい感じを漂わせています。
ちょうど発掘調査中の古墳もあり、時間が合えばガイド付きで見学をさせてくれるとのこと。
古墳から出土した埴輪などを多数展示してあるさいたま史跡博物館には、後で立ち寄ることにして、先に古墳たちを見てしまうことに。
公園に隣接している前玉(さきたま)神社は"さいたま"の由来になった場所なのだそうです。
本殿はこんもりとした小山の上に建っていて、古墳の上に立っているように見えます。本殿に覆い被さるようにのびた大きな椿の木が、ポタポタとトキ色の花を散らしていました。
将軍山古墳の一部は展示館になっており、古墳内部をのぞくことが出来ます。小さな展示館なのに「200円もとるのお」などと渋っていたら、みすかされたのか窓口の方が、史跡博物館と共通のチケットになっていますよ、と声をかけてくれました。うん、それなら納得。もちろん、史跡博物館にも立ち寄りました。
最後はメーンイベント。丸墓山古墳。
日本最大規模の円墳だとのこと。
石田三成や上杉謙信が忍城を攻めたときは、この古墳が本陣に使われました。
なるほど、頂上からは忍城下が一望できます。
ちなみに公園内の古墳で上に登ることが出来るのは、ここと稲荷山古墳だけです。
右手の田んぼの畦道のように見えているのが、石田三成が水攻めで築いた石田堤の跡です。
丸墓山古墳を最後にしたのは、古墳時代から戦国時代まで重要な歴史の舞台になってきた場所だからです。
さあ、いざ戦の場へ!
の前に、駐車場の脇にある野菜も売っていれば、埴輪も売っている不思議なお店『さかもと』で、謎のゼリーフライを頂きました。
注文してから揚げるから時間がかかるけど、揚げたてが旨いし、宝箱のような宝蔵のような雑然とした店内を見ていればすぐに時間がたってしまいます。
そうこうしているうちに、新聞紙にくるまれた熱々があがってきますから、
話し好きなお店の主人にゼリーフライやフライの謂われをじっくりと聞きつつほおばってください。1個80円です。
小腹も落ち着いたところで、もう一度公園内に戻り、埴輪の馬が門番を務めている"さきたま緑道"を北鴻巣駅方面へ向かいます。
石田堤が一番状態よく保存されている石田堤記念公園を目指して、水を満々とたたえた水路沿いを南下。
17号線バイパスを地下通路でくぐり抜け、さあ、もうこの辺りのはずのなのに何の案内もありません。比較的新しい施設なので博物館でもらった観光マップにも出ていない。
地元の方に聞くと、「この道をずっとまっすぐ行くと左側にフライの店…えっと、食べのもの屋があるから、その前を右に入ればすぐですよ」とのこと。
この一瞬言いよどんだ「フライの店」を聞き逃すはずもなく、堤の前のフライにすることにした。
フライはクレープのような、お好み焼きのようなもので、値段が、フライ330円、(玉子入り)380円、(大)450円、ミックス(焼きそば入り)450円、これはさほど大きなものではないだろうと判断して、フライと1個70円のゼリーフライを注文。同行者は玉子入りやミックスを。
いや、そのボリュームに驚いた。これで(大)とか頼んでいたらどうなっていたのだろう。
ビールが飲めなかったのが残念。あの味はビールだよなあ。
サービスにセロリの醤油漬けを出したくれたおかみさん。ごちそうさまでした。ご自身で作陶されたという器も素敵でした。
お店を出ると目の前から石田堤が始まっている。
それもそのはずでお店の名前が"えんまん堤"というのでした。
行田で配布しているフライマップにも載っていないけど、日替わり定食も650円とリーズナブルなこのお店。ごひいきのほどを。
石田堤沿いを走り、石造りのちょっとしゃれた堀切橋を渡ると堤の跡地を生かして造園された石田堤記念公園があります。
新幹線高架の向こう側は、堤が一番状態よく保存されているところ。アクリル板を使って断面が見られる工夫がしてあるのですが、なんだかよく見えないのが残念。
高架下には櫓が組んであり、この下に入るとセンサーが反応して、忍城水攻め合戦の様子をドラマ仕立てで聞くことが出来ます。
石田三成役は時代劇やお餅のCMでおなじみのあの方。お楽しみに。
さきほどの堀切橋を渡り返して行田市街地に戻ります。
この堀切橋の場所で堤が決壊したため三成は忍城攻略に失敗したのです。
それで堀切橋という名前がついているのかもしれません。
ぐおうぐおうと吹き付けてくる風に逆らって忍城址へ。
これが有名な上州のカラっ風ってやつでしょうか。自転車が横に持っていかれそう。
彼方の日光の山々にかかる夏のような雲も、風で引きちぎられそうになっています。
市街地に入ると遮蔽物が多いためか風も一段落しました。
浮城の名残、水城公園は市街の中心地にあります。全体にゆったりとした作りの中、たくさんの人がのんびりと釣り糸を垂れていました。魚釣り禁止!なんて無粋な看板だらけの都内の公園とは一線を画しています。
もうここは忍城の敷地内。
住所もずばり本丸。
公園に隣接する中学校は二の丸だったところで、本丸に建造物の無かった忍城では城主は二の丸に館を構えていたのだとか。
その本丸には天守閣が建てられ、内部はお約束の郷土資料館になっています。行田は足袋の生産で有名だったのですね。お袋さまが着物好きなので見覚えのあるラベルが展示されていました。
新しく作られた天守閣や冠木門に感心した後は、市内に残っている昔のにおいをかぎ取るために大通りを避けて、路地をくねくねと走ってみるのも一興です。
路地をくねくねと走っていたのには、もう一つ理由があります。
『浮城』という銘柄を醸造している横田酒造を探し回っていたのでした。
煙突を頼りにやっとたどり着いては見たもの。しっかり閉まっておりました。観光客相手ではない造り酒屋は大抵日曜日はお休みなんですよね。
でもまあ、この店構えだけでも一見の価値はあります。
走行距離は20kmそこそこでも、あっちにより、こっちで食べ、そっちで見学していたら、もはや日が傾いてきました。
酒造のすぐ近くを流れる忍川に沿って古墳公園へと戻ります。
新設中の新しい駐車場の向こうに円墳のような雲が盛り上がっていました。
近況報告
4月は毎年恒例のお花見ラン。山梨の御坂峠に行ってきました(前にコース紹介をしております『第十二回「倶楽部走-クラブラン-」』)。
久々の列車輪行。
すっかり手順を忘れてしまっていてあたふたあたふた。
久々の峠越えで翌日もくたくた。
だけどやっぱり輪行はいいなあ。峠はいいなあ。
・・・花はといえば、平地ではすでに終了。峠はまだまだ堅いつぼみ。峠への林道にすこおし咲いておりました。