枕で「原稿に草が生えた裏側」を暴露します
先週の本連載で、私は「採用担当者たちの理解力www」と原稿を書いたことになっていました。いままでいろんなメディアへ連載や寄稿してきましたが、ネットスラングでいうところの「草を生やした」のは初めての経験。じつは、私が生やしたわけではなくて、担当編集者の傳智之さんの仕業です。
プレビューをみて「うわ、草が生えていますね」と私がコメントしたところ「ネット連載らしくしてみました」との回答。なるほど、事実、この部分を抜き出してシェアされているのをたくさん見かけましたから、担当編集者の面目躍如ということころでしょうか。ただし、傳さんは自分のフェイスブックのウォールでは「草は生えても萌えはせず」と、ツンはあってもデレはなしなところも見せつけてくれました。
私の愚痴はこのくらいにして。
エンジニアの気持ちは「わかる」「けれども」「会社としては」という思考フローが当然
先週「エンジニア出身の罠」という予告をしました。じつはこれ、エンジニアがいともかんたんにだまされてしまうマジックワードのひとつなのです。以下に使用例を挙げてみましたので、どうぞご確認ください。
- 役員の中では傳さんだけがエンジニア出身だから、話は傳さんに通しておくとうまくいくはず
- エンジニア出身者でないと、エンジニアの気持ちはわかってもらえない
- さすが、エンジニア出身だけありますよね、御社の社長は
これを読んでいるエンジニアの皆さんには、心当たりがある用例ばかりではないでしょうか。
そう、皆さんの多くは「エンジニア出身であるか否か」で、気がついたら相手を選別しているケースがよくあるのです。裏を返せば、企業の採用担当者たちも「私たちはエンジニア出身ではないので」という言葉を使って、いろいろと責任を回避し(以下略)。
ただ、エンジニアの皆さんの勘違いによって、不幸が生まれているケースをよく見かけます。それは用例の2番目に挙げた、「エンジニア出身である=エンジニアの気持ちがわかる」という勘違いです。
たしかに、エンジニア出身ではない人は、エンジニアの気持ちの細かいところまでは理解できません。逆に、「エンジニア出身なので、エンジニアの気持ちが理解できる」という構図も納得のいくところです。
しかし、「エンジニア出身であること」と「いまの立場」との関係性に目が行き届く人は、それほど多くありません。
たとえば、エンジニア出身の役員は、エンジニアであると同時に「役員」なのです。むしろ、役員としての業務や、それに伴って行う判断が多くなるはず。エンジニアの気持ちは「わかる」「けれども」「会社としては」という思考フローになっていないと、当然ながら困るのです。
「共通言語を持っている」というだけで、安心してしまっていませんか?
実際、採用の現場で「うちの役員はエンジニア出身なので」という言葉を耳にして、「だったら、エンジニアに対して理解があるのかな」と思って当の役員に話を聞いてみると、意外にそうでもない印象を受けます。そう、やはりエンジニアではなくて「役員」なのですから、当然のことです。そして、そういう企業に限って「エンジニアオリエンテッド」な施策がなかなか通らない(あくまで個人的な)印象があります。
印象はあくまで個人の感想にすぎないので、その原因も推測の域を出ませんが、おそらく「エンジニア出身なので」という言葉の罠にはまっているのでしょう。
- エンジニアの立場を、絶対理解してくれる
- 当然わかってくれている
- きっと僕たちの味方である
そんな感じでしょうか。「共通言語を持っている」というだけで安心してしまって、いや、逆に安心させられているのでしょう。しかし、本当は経営者であり(何度も書きますが、それが正解です)エンジニアにとっての後ろ盾にはまったくなっていない人を、言葉は悪いのですが「信用してしまっている」可能性もあるのです。
採用したいなら「エンジニア出身」という言葉を積極活用せよ!
この連載は「エンジニア採用の技術」を紹介するものなので、企業採用担当者は、「エンジニアは『エンジニア出身』という言葉に弱い」という特徴をフル活用すべきでしょう。
まずは、採用担当者そのものにエンジニアを据える。これで、応募してくるエンジニアとのコミュニケーションはバッチリです。そうすれば、求人広告も「エンジニアからみたら失笑モノの、恥ずかしい内容」にはならないでしょう。もしかしたら、「エンジニアだからこそ考えられる採用の仕組み」も提案してくれるかもしれません(この話は、いずれ機会を見て解説します)。
続いて、最終的な採用をジャッジする役員クラスにも、エンジニア出身者を配置しておきたいものです。最終面接で「君はウチに来たら、どんなことがやりたいのかね」などという、それこそ「それを聞いてどうするのだ」という質問をされてしまって、転職希望者であるエンジニアをガッカリさせないためにも、自社の技術に精通していて、応募してきたエンジニアと話が充分に盛り上がる役員がいることが大切なのです。応募した企業の偉い人がエンジニア出身者、しかも技術について興味も理解もあるとなれば、面接を受けた人のハートを鷲づかみすること請け合いです。
エンジニアの採用に苦戦している企業は、「エンジニア出身」というフレーズをドンドン活用すべきです(私がプロデュースを担当しているCodeIQでの転職プロセスの中でも、エンジニア出身という言葉の威力をまざまざと見せつけられています)。当然、フレーズだけを踊らせては、いま流行の“偽装”になってしまいますから、実際に積極的に採用に関与できるような仕組みを作ることも忘れずに。
さて、来週は「エンジニアを引き寄せるツボのようなもの」について、サラッと解説してみたいと思います。「撒き餌のような話をするのか!」とお叱りの声が聞こえてきそうですが、どうやらそうなりそうです(汗)。
このコラムの言い訳のようなものは、私のブログで綴っています。そちらもあわせてぜひ。