「エンジニア出身」の人は、すでにエンジニアではないので、そもそも胡散臭い?
先週の記事で、「エンジニアは『エンジニア出身』という言葉にだまされやすい」と書いたところ、ソーシャルメディアでは賛否両論でした。
もちろん、いつもそうなるように、意識して書いているつもりなのですが、今回は「ありすぎて涙」という人もいれば「エンジニア出身はすでにエンジニアではないので、胡散臭いと判断している」というものまで、その反応の振れ幅の大きさに少し驚いてしまいました。
今週は、予告したとおり「エンジニアを引き寄せるツボのようなもの」、平たくいうと“撒き餌”のようなものをどう仕込めばいいのかを伝授します。
方法はかんたん。ポイントは「学ぶ」という言葉の語源にあります。
「他社のジーニアスなエンジニアはだれか?」とヒアリングしてみる
エンジニアを引き寄せる企業になることは、それほど難しくはありません。まずは「エンジニアを引き寄せている企業をよく観察すること」です。
エンジニアが採れなくて困っている企業が多いというのに、エンジニアをドンドン吸い寄せている企業も少なくありません。ここではあえて具体例は挙げませんが、これを読んでいるエンジニアの中には「ああ、あそこの会社のことを話しているのだな」と、ピーンときている人も少なくないでしょう。
それらの企業の多くは、エンジニアを引き寄せる共通点を持っています。たとえば、「ジーニアスなエンジニアがいる」というのも、その特徴でしょう。スキルを磨きたい、上昇志向のあるエンジニアにとって、目標となるエンジニアが働いている環境はとても魅力的です。勉強会などで知り合うことでお近づきになるのもアリなのですが、実際にいっしょに働くことがかなうなら、それはとても魅力的なこと。充分な撒き餌の1つになります。
とは言え、世の中に“ジーニアスなエンジニア”はそんなにたくさん存在しません。また、能力が備わっていたとしても、なかなか目立たない存在で埋もれてしまっているケースもたくさんあります。採用担当者には、その目利きがきくとも思えませんので、自社のエンジニアにヒアリングをして、
と、聞いてみるといいでしょう。そうすることで、採用担当者目線では見つけられなかった「エンジニアにとって魅力的な企業」が見つかる可能性が高いのです。
エンジニアに「注目している企業や、評判のいい企業はどこ?」と訪ねてみる
そのついでと言ったら語弊がありますが、エンジニアに「注目している企業や、評判のいい企業はどこ?」と訪ねてみるのもひとつの手です。
ただし、いままで交流のないエンジニアに対して、いきなり人事部の人間がその手の話を聞かせてくれといっても、まったく相手にされないか、尋常ならざる警戒をされるはずです。だって、「下手なことを言って、リストラの対象になったらどうしよう」とエンジニアは思ってしまいますからね。普段からさりげなくリレーションをつくっておいて、そのうえで怪しまれないようにして聞くようにしてください。
エンジニアにとって評判のいい企業がヒアリングできれば、その企業の採用情報などを徹底的に分析してみてください。いくつかの傾向が見えてくるはずです。それが先に書いた、「エンジニアを引き寄せる共通点」なのです。
「働く環境」という言葉にはいくつもの意味がある
「エンジニアを引き寄せる共通点」というのは、採用担当者にはなかなか見えないものです。
たとえば、ある求人広告を見ていると「高い椅子を使っている」という項目がありました。ごく普通に考えてみると、高い椅子を使っていることはたしかにうれしくはあるのですが、企業を選ぶ基準として「とても重要」であるとまでは言えない気がします。
しかし、エンジニアに聞くと以下の返事が。
- 「以前勤めていた会社では、チープな椅子だったので、腰痛になりました。他の条件が同じなら、椅子にまで気配りしてくれている会社は、やはり好印象が持てますよ。」
座りっぱなしで、パソコンの画面とにらめっこしながら仕事をしている彼らにとって、ごくありふれた「気になるポイント」だったのです。
また、どんなプログラミング言語で仕事をしているのか。採用担当者はまさかそんなところが重要だとは思っていないようなのですが、エンジニアによっては「自分が好きで勉強している言語が使えるから、その会社に移る。仕事内容や待遇は重要だけれども、技術力を高めるほうが先」と言ってはばからない人も少なくありません。
そのツボがわかっている企業は、そこを前面に押し出しています。エンジニアの気持ちがよくわかっていない採用担当者であったとしても、評判の企業のデータを「ズラッと並べて見てみると」そのツボがわかるはず。
企業の採用担当者は、応募者が働く環境を重要視していることは理解できているはずです。しかし、それはあくまで一般的な話で、「エンジニアにとっての働く環境」ではありません。彼らのツボが自分たちのそれとまったく違っていることを理解していないと、必要のないポイントばかりを押し付けることになりかねないのです。
いいやり方はマネしたらいい。なかなかできないけれど。
そうならないためには、「エンジニアにとって」評判のいい企業の、いろいろなことを「学んで」「マネる」ことから始めましょう。
ということで、「学ぶと真似るは同じ語源」という話から、「いいやり方はマネしたらいい」という、パクリ礼賛のようなオチになってしまいました。いいやり方はドンドンマネされて、それがスタンダードになれば、世の中もっとよくなるという、ちょっとスイートな発想です(とは言え、私がプロデュースしているCodeIQのやり方をマネされると困るな、というジレンマも抱えていたり……(汗)。
ただ、いいやり方だと言って、即真似ができないのも、企業という枠組みの難しいところではないでしょうか。と言うことで、次回は
- 「エンジニアにとって『良い企業』だと思われる方法はわかった、でも、実践できない」
という採用担当者に、その壁を打ち破る技術をお届けします。
このコラムに対する言い訳のようなブログも用意しています。そちらも併せてご覧くださいませー。
あと、企業の採用担当者といっしょに、この連載のような話をする機会を作ろうと思い立ったので、1週間後に勉強会を開催することにしました。
https://www.facebook.com/events/1438317916381391/
「ヒマだから、書いているヤツの顔でも拝んでやろう」と思った方は、ぜひ遊びにきてください。