※本稿では
六道家は先日、
同じ学校の友人数人とテントを張って練炭自殺をしようと準備をしていたところ、
父親と数人には秘密にしておこうと母親と鳳晏は決めていたが、
- 「日頃の鳳晏の不安定な精神状態から察するに、
これは自殺の準備ですね。してみると、 自殺未遂で保護されたのでしょう」
数人は一発で真相を見抜いた。
- 「ウソだ! そんなことあるはずない」
父親の様也はひどく取り乱し、
- 「キモいから、
血の涙出すのやめてよ」
鳳晏はハードルを越えた人間特有のけだるさで吐き出すようにつぶやいた。愕然とする様也に、
- 「あたしだって、
お兄ちゃんみたいにイケメンで頭のいい人の精子から生まれてたら美人で天才だったよ」
捨て鉢になった鳳晏が言い放つ。仮面家族の秘密が白日のもとにさらされた。バンギャだった美希が、
- 「君は気が立っている。今日は休みなさい」
数人が珍しく優しい声音で鳳晏に話しかけた。妹は無言でうなずき、
様也はうろたえたままだったが、
それ以後、
数日後の夜の食卓にはハンバーグがならんでいた。会社から帰ってきた様也が席に着くと、
様也は、
鳳晏は一口食べてはため息をつく。見かねた様也が、
- 「お父さん、
これは意図してやったことですか?」
そう言って白魚のような人差し指を、
- 「そ、
そ、 それは私が昨晩徹夜して書いたレポート……ど、 ど、 どういう意味かな?」
A社のサイトの会員になる際に登録するデータを集計分析したものだ。年齢や職業といった基本的なもの以外に、
- 「会員登録の際の質問に問題があります。ただ訊けばいいというものではありません。正しい質問をしなければ正しい答えは得られません」
- 「え?」
数人の言葉に、
- 「仕方がありません。お父さんに誤った回答を誘導してしまう4つのパターンを教えましょう」
- 「この会員制サイトの入会登録時のいくつか項目がこの悪いパターンに当てはまっています。とくにひどいのは、
この質問です」
プリンタのインクカートリッジについておうかがいします。一般的に、
- プリンタのインクカートリッジについてうかがいます。価格のことは考えずに品質のイメージのみについて、
あなたの考えにもっとも近い選択肢をひとつ選んでください。 - プリンタのインクカートリッジはメーカーの純正品が安全である
- プリンタのインクカートリッジはメーカー以外の製品で互換性のあるものでも品質上問題ない
- プリンタのインクカートリッジに自分でインクを継ぎ足しても品質上問題ない
- 「この選択肢で、
“1” 以外を答える人間などごくごくわずかでしょう」
数人は、
- 「実際の集計結果を見てもそれは明らかですよね? これほど露骨な
『威光暗示効果』 を含む文章は滅多に見れません」