こんにちは。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこです。
前回触れたとおり、まずは一人一人の「ネガティブな気持ち」を吐き出させること。一人で抱えていた愚痴や不満や違和感をみんなで共有してしまうこと。それがじつは結果的に速くチームの心を一つにします。一人一人を本当の意味でポジティブに立ち上がらせます。未来に向かってチーム本来の力を発揮させることができます。
しかし、多くの会議でネガティブな発言というのは聞き流されるか、否定されるか、そもそも発言すらさせてもらえないといった扱いをされています。そうした扱いがじつは堂々巡りの話し合いを引き起こしていました。
本当に"効率のいい"会議をしたくて「ネガティブな気持ち」を吐き出してもらっても、「何の準備も無いまま」吐き出させさると、ネガティブな状態から抜け出せなくなる。そんな"非効率な"会議と紙一重なのもまたネガティブな発言の特徴なのです。
そこで今回は、「ネガティブな気持ち」を吐き出してもらうときにぜひ実践してほしい「事前の安全設計」についてご紹介します。ネガをポジに変えられるか、ネガのままか。みんなの気持ちを1つにできるか、できないか。その違いは、事前にある2つの視点で準備したかどうかの差で決まっていました。
1)話し合いがうまくいかない2つの理由
そもそも「何の準備も無いまま」会議にのぞむと、ネガがネガから抜け出せなくなることに気づいたのは、ある共通の絵が描けてきたことです。それが下の絵。
[二本の線]とそれに挟まれた[モヤモヤ]。右上には[太陽]という絵です。「事前設計」が甘い(ネガティブな発言に対して何の準備もされていない)対話の現場に何度か立ち合ったとき、必ず描けてきた絵。このモヤモヤは次のような発言を聴いて描けてきます。
- 「そうはいってもねえ…」
- 「それでなくても人が足りないのに、今以上に業務が増えると…」
- 「理想はそうだが、実際、社内や現場を巻き込むとなると…」
モヤモヤは、会議の参加者たちの「吐き出し切れていない気持ち」の固まりです。普段の会議では、わざわざホワイトボードに書き留めるほどの発言ではないでしょうが、絵筆では拾ってしまう、思わずつぶやかれた、ちょっと後ろ向きで、否定的な、心の声です。
右上の[太陽]はこれから進みたい未来を表しているのですが、話し手たちの目線はそちらに向くことなく、目の前の課題や問題を見つめたまま、モヤモヤと議論を繰り返しているという状態を表しています。
話し合いが、行き詰まり、堂々巡りをしている理由は、この絵から明らかでした。それは次の2つ。
- [1]参加者が未来を見るより、目の前(または過去)のことを議論するのが大好きだから。
- [2]参加者がネガティブな気持ちを吐き出し切っていないから。
つまり裏を返せばこの2つの視点に気をつけて準備さえすればネガティブループには陥らず、もっと速く一人一人に未来行動を引き起こせるのです。しかし多くの会議では、この2つが原因で、会議がうまくいってないという認識はまずありません。そこでこの2つの原因が、いかに非効率な会議を引き起こしているかについて掘り下げてみます。
2)[未来]のことより[目の前]のことが大好き
まず「未来に目を向ける」ということは、ほとんどの会議が苦手としているということです。[未来]の議論をしているつもりでも、できあがった絵を見比べてみると、[今、目の前]の課題や[過去]の問題について描いた分量のほうが圧倒的に多いのです。
いや、苦手というよりも、どこか[目の前]の問題や課題を議論しているほうが皆さん居心地よさそうと言ったほうがいいかもしれません。
その証拠に先ほどの絵の[二本の線]に注目してください。まずは上の線。これは「そうはいっても無理だよ。できないよ…」という声からできました。
- 「実際、採算性を考えるとムズカシイ」
- 「事業化するのは、そうはいってもムリ」
何か見えない壁がそこにあるかのようで、その壁に跳ね返され、次第にモヤモヤが吹き溜まっていく。議論を重ねているけれど、じつは"ある一線"を越えようとしていない、一向に未来に近づいてない状態。そんな上の線を「can'tの壁」と名付けました。
一方、モヤモヤが吹き溜まる下の線を「can できるライン」=「現状維持ライン」と呼んでいます。この「現状維持ライン」の上では、自分自身のモヤモヤで、どんどん視界不良になっています。 会議室からも実際、こんな声が聴こえてきます。
- 「話の方向性が見えない」
- 「みんながどうしたいのか、はっきりしない」
そして、そう言いながらも、その状態から抜け出そうとはしてこない。どこか目の前の課題や問題点を議論しているほうが居心地がよさそうなのです。
3)モヤモヤしているから「見えてない」
ただそう、居心地良くしてはいられない現実があります。みなさんの居座る「現状維持ライン」の先は(これもまたどの会議でも共通して描ける絵なのですが)「下降線」に描けてくるのです。「下降線」の先には予測不可能な未来「得体の知れないオバケ」が待ち構えているという絵。
ほとんどの経営者や長たる役職に居る人たちは、高い目線でこのことが見えています。だから現場に発破もかけています。「現状のままでは先があぶない」「新しいマーケットの創造だ」「イノベーションだ」そして「現場に危機感がない!」と嘆いています。
しかし、現場から聴こえてくるのはこうした声です。
- 「日々目の前の仕事に追われているのに、長期的目線を持てといわれても」
- 「半年後もどうなるかわからないのに、5年後、10年後を描けなんて無理」
- 「ビジョンを描くのは、上司や経営側の仕事でしょ」
現場は絵のとおり、モヤモヤ視界不良の状態ですから、どちらへ進めばいいのかわからない。経営トップの思いとはウラハラに、 モヤモヤは確実に彼らにまとわりつき、動きを鈍らせています。
4)吐き出してほしいのは、「意見」ではなく「気持ち」
「どこかメンバーが腹落ちしてない」「どこか他人事のよう」「何度も同じ議論をしている」…と感じたら、「can'tの壁」とその下に吹き溜まっているモヤモヤの存在を疑ってみてください。
モヤモヤが組織本来の力を止めているのは明らかです。「現状維持ライン」から一刻も速く抜け出すには、このモヤモヤを抱えたままではムリ。未来を見据えて、一人一人が自らの気持ちで立ち上がるには、このモヤモヤを吐き出させ、晴らせることが必要です。しかも特にモヤモヤの大半を占める「ネガティブな気持ち」を吐き出させることが急務です。
すると、会議やプロジェクトの主催者からは、こう言われたりもします。
- 「みんな結構、ネガティブな意見は言ってるよ」
- 「役職や年次に関係なく言える雰囲気だよ」
けれどそれでも「ネガティブループから抜け出せていない」「方法論をいくつも挙げてみた」けど「これだというものが決まらない」「決まったはずなのに、どこかスピード感がない」…。だとしたら「吐き出し切っていない」証拠です。「本来、吐き出して欲しいネガティブなモヤモヤ」を、まだ「吐き出し切っていない」証拠です。
「ネガ」といっても本当に吐き出してほしいのは未来行動を止めている「気持ち」の部分です。ネガティブな「意見」ではありません。心の中に抱えている本当の「気持ち」をあえて音声にして発言してほしいのです。たとえば次のような「気持ち」をです。
- 「今の議論って一体、何のためにやってるの?」といった不信感とか
- 「先が見えない、方向性が見えない」といった不安とか
- 「実はよくわかってないけれど今さら聞けない」といった不明点とか
- 「上が決めてくれないから先に進まないんですよ」といった不満とか
もしかすると「言っていること(意見)」とは全く正反対にあるかもしれない本当の「気持ち」です。
- 「ホンネのところはどう感じてますか?」
- 「ひとりひとりの思いは共有してますか?」
そう聞くと多くが
- 「そういうことまではきちんと会議で話し合ったことはない」
という返事です。
5)まず共有すべきは「情報」より先に「感情」
ほとんどの会議では、ネガティブな「意見」は交わされますが、ネガティブな「気持ち」までは共有されていません。
ネガティブな「気持ち」は実際、多くの会議でつぶやかれています。ただ、会議では聞き流されたり、否定されたり、あえて板書もされることもありません。よって、なかったことにされてしまいます。
一方、GFでは、ちょっとしたつぶやきも拾って絵にしてしまうため、そうした発言がじつは何度も繰り返されているのがよくわかります。
多くの会議で、みんなの「気持ち」がおいてきぼりにされていました。
話し合いが、うまくまとまらない。みんなバラバラ。一体感が感じられない。強いアウトプットが出ない。…そう感じたら、まず先に共有してほしいのは「情報」よりも、モヤモヤとした「感情」です。
モヤモヤの吐き出し方や、それにかける時間は、会議によって様々です。
あるプロジェクトは「仕切り直そう」と丸一日会議室をおさえて、メバー一人一人が「プロジェクトに感じている不満や不安」を吐き出すことから始めました。
ある組織では「あえて場所を変えよう」と1泊2日の合宿形式で、「このまま何もしないと起こりうる組織の最悪な状態」を想像することから、漠然と抱えていた不信感や不安を語り出してもらいました。
ある会社ではビジョン浸透を目的に「全社員が、会社に対する気持ち、いいことも悪いことも吐き出せるように」と、毎回メンバーを変えて、少人数の対話を4時間ずつ、半年間かけて開催しました。
6)「ネガティブな気持ち」を吐き出させてあげてほしい
「そんな時間は取れないよ」ともし、ためらわれたら、まずは4時間を目安に、お互いのモヤモヤした「気持ち」を吐露しあう時間をつくってみてください。これまでモヤモヤを吐き出さないまま重ねてきた話し合いの時間の合計に比べたら、短いはずです。そしてたった4時間でも、これまでにない新しい関係性、みんなが1つになれる体験は味わえるはずです。
ただ、そのときに吐き出されてくるであろう「気持ち」の大半が、これまで共有してこなかった負の感情「ネガティブな気持ち」です。「準備のないまま」ではネガティブループから抜け出せなくなると言いました。そこで「事前の安全設計」を忘れずに、というわけです。
ネガティブループから抜け出せない理由は次の2つでした。
- [1]参加者が未来を見るより、目の前(または過去)のことを議論するのが大好きだから。
- [2]参加者がネガティブな気持ちを吐き出し切っていないから。
つまり、この2つの裏を返せば、「ネガティブな気持ち」を吐き出してもらうときの「事前の安全設計」となります。
- [1]参加者の目線は常に未来に向けさせること(見失いやすいので話し合いの間に何度も)
- [2]参加者のネガティブな気持ちを吐き出し切らせてあげること(言わなくなるまで)
具体的に何をどう準備すればいいかは次回お伝えします。実際、対話の現場で主催者の皆さんが、どのように事前に会議を設計し準備しているか。実例をふまえつつ、最低限「これさえおさえておけば大丈夫」というポイントに絞ってご紹介します。どうぞお楽しみに。
ということで今回はここまで。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこでした(^^)/