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第43回ネガティブを[吐き出し切って]チームを一気に未来志向へ(安全設計2)

前々回第41回からお伝えしている「ネガティブな気持ち」を吐き出すための「事前の安全設計」とは次の2つでした。

  • [1]参加者の目線は常に未来に向けさせること(見失いやすいので話し合いの最中、何度も)
  • [2]参加者の抱えているネガティブな気持ちを吐き出し切らせてあげること

前回[1]参加者が常に「未来目線になれる問い」を掲げることで、安全安心な土台をつくりました。今回はいよいよ思い切り[2]ネガティブな気持ちを「吐き出し切る」方法について紹介します。

1)吐き出し切るまで「待てない」:主催者心理

前々回から、ネガティブな気持ちは「吐き出し切れると止まるんです」⁠吐き出し切れると速いんです」と言いました。⁠吐き出し切れる」まで「待てる」なら、結果的に会議全体の時間を「短縮」できることは確かです。

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しかし、多くの会議では吐き出し切れるまで「待てない」で、結果ネガティブループにハマっていました。せっかく吐き出されてきたのに途中で遮ってしまったり、結論を急いでまとめに入ってしまったり。4時間もあるのに「吐き出し」には1時間しか割かず、残り3時間はアクションプランを考える時間に当ててしまったり。

確かに「吐き出し切れたら止まる」と言われても、⁠待てない」気持ちはよくわかります。そもそも「止まる」なんて思ってもなかったところで、吐き出し切るまで一体どのぐらい時間がかかるのか。愚痴や不満ばかりで収拾つかなくなるのではないか。主催者なら不安にもなるでしょう。でも安心してほしいのは、まず「ネガ」とは実はそれほど種類がないのです。吐き出せば吐き出すほど集約されてくるのです。

例えば、ある会社では「人事制度の不満」ばかりを絵にしていました。⁠評価方法に納得がいかない」とか「頑張っても正当に評価されえていない」という内容です。一方、別の会社では「親会社に対する不満」の絵ばかり描いました。⁠親会社にお伺いを立てないといけない」とか「親会社がしない小さい仕事を回されている」とか。

日々いろんな不満を描いているわたしとしては「他にも違った不満の絵が描けてもよさそうだけど…」と思うわけですが、でもこれが「ネガのいいところ」です。愚痴や不満の絵は、実はそれほど種類がないのです。それどころか、その会社や組織にしか描けない絵なので、その会社らしさ、個性を教えてくれます。

ネガを吐き出さず、表面的にポジティブな会話から描ける絵は、たいてい他の会社でも描いたことのある、ありきたりな絵です。個性はなかなか見えてきません。それに比べたら、その会社にしか描けないネガな絵は、裏を返せば「本当はこうしたいの!」というその会社らしさを確認できる、本当にポジティブな「ハート」が見つかる(描けてくる)チャンスでもあるのです。

ネガが止まるまでに「どのくらい時間がかかるか」は正直読めません。けれど、じつは吐き出し切るまでにはどの会議も「ある2つのステージで時間がかかる」ことが見えてきました。そしてそこに事前に手を打つと時間を短縮できることがわかってきました。主催者の方にそのことを伝えると、ほとんどの方が「待てる」ようになるため、それについてもう少し詳しく紹介します。

2)なかなか「吐き出しきれない」:参加者心理

「吐き出し切る」までには、参加者が次の「2つのステージ」で時間がかかることが見えてきました。

  • ①「ネガティブな気持ち」を吐き出し始めるまでに時間がかかる
  • ②「ネガティブな気持ち」を一旦吐き出せると、今度は止まらなくなる

この①と②は、主催者が時間が読めず「待てなくなる」2つのステージとも言えます。 絵にすると次のようなイメージです。名付けて「モヤモヤ吐き出し曲線⁠⁠。

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グラフの中の絵は「ナベブタ」です。だれもが本当の気持ちを抑え込む「ナベブタ」というものを持っていて、特に「モヤモヤしたネガティブな気持ち」を重たいナベブタで閉じ込めているというのが①です。そして、フタがやっと開いたと思ったら、今度は溜めこんでいたモヤモヤした気持ちがあふれだして、フタが閉まらなくなってるのが②です。②の先に「吐き出し切ったら止まる」が待っているのですが、多くの主催者はそんな体験をしたことがないのでまず待てません。

3)①吐き出せない、②止まらない、2つの参加者心理

なぜ時間がかかるのか。それは①②の背景にある、それぞれの「参加者心理」まで知るとよくわかります。参加者の「気持ち」まで思いを馳せられるようになると、かなり「楽に待てる」ようになりますし、⁠先手を打つ」こともできるようになります。

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まず、ネガティブな気持ちを[①吐き出せない]心理の背景とは、 過去の絵を整理してみると、 次のいずれかからくるものと思われます。

  • (a)警戒して言えない
  • (b)会議では言うべきではないと思っている
  • (c)自分にネガティブな気持ちは無いと思っている

(a)⁠b)は、その会社の長年染み付いた企業文化によるものもあれば、参加者の顔ぶれ次第で「言える」人も簡単に「あの人がいると言えない」⁠言うべきではない」とナベブタを閉じます。

(c)は、一見ポジティブに見えるだけに、じつは一番やっかいなタイプです。例えば、⁠私はいいんです。でも、みんなを見てると…」とか「私がもっとやれたらいいんですけどね…」と、一見前向きなことを言ってきます。けれど、じつは自分のことは棚に上げて、周りを評価目線で見ている、物事をどこか他人事で捉えているのが本性です。また、⁠特に不満はありません」⁠とにかくまずは黙ってやるだけでしょう」と実行に前向きな発言。けれど、じつは感情スイッチを切っていて、本質的な課題や話題は、無意識のうちにシャットアウトしている。本来の未来行動に挑戦していない。不感症な状態です。いずれも、じぶんの「本当の気持ち」に重いフタをしていることに自覚がないので、周りも見逃しやすいのですが、抱えているものを吐き出させてあげたいヒトたちです。

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吐き出したら②「止まらなくなる」のほとんどは、 これまで聞き流されていたもの、溜め込んでいたものを吐き出せるうれしさから「止まらなく」なっています。そして前々回から述べていますが、多くのヒトが「未来」へ目線を向けるより、⁠過去」「今、目の前」の課題に居続けるのが大好きなので、なかなかそこから動こうとません。

4)モヤモヤ吐き出しシミュレーション、で安全設計

①吐き出せない、②止まらない、2つの参加者心理をある程度知ったところで改めて下の図を見てみるとどうでしょう?

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これまで「漠然と」時間が読めない中で、会議を組み立てていたときに比べると、この図に沿って参加者の「気持ち」を汲んでいけば、何かいい作戦が立てられそうな感じ、してきませんか。

これはもはや「心理戦」です。⁠会議に『気持ち』なんて…」と思われるかもしれませんが、⁠吐き出せない・止まらない」参加者 VS ⁠待てない」主催者 の「気持ち」「気持ち」の戦いです。

実際、打ち合せでも、この「モヤモヤ吐き出し曲線」に沿って、参加者の「気持ち」を汲み取りながら、会議の流れをシミュレーションしています。

参加者の顔を思い浮かべて、改めてこの図を見てみると「どこで時間がかかるのか」が見通しがついてきます。⁠あのメンバーだとここで時間がかかりそう」とイメージがついてくる。当日も「今どの辺りまで進んでいるのか」進捗状況がつかめるようになってくる。主催者のみなさんも「待てる」感覚がつかめてきてきます。

この2つのやっかいな「参加者心理」に焦点を当てて、参加者の「気持ち」を気づかうこと、⁠気持ち」を汲みながら準備することこそ、安全設計なのです。

5)①いかに速く吐き出させ、②いかに速く止めるか。

つまり「吐き出せない・止まらない」参加者の「気持ち」に焦点を当てさえすれば、待つだけでなく、先手を打って時間を短縮すること(=①速く吐き出させて、②速く止めること)も可能ということです。では、どうやって①いかに速く吐き出させ、②いかに速く止めるか。その方法は、基本的には自由です。⁠気持ち」を汲み取れる方法であれば、みなさんあの手この手で作戦を練っています。

ただ、過去いくつもの会議を描いてきた中で、絵筆を通して「これだけは外せない」と実感している共通項も見えてきました。それは具体的には7つのポイントにさえ注意するだけなのですが、今回はここまで。それらはまた次回に紹介します。これぞ「安全設計」としてすぐに使える方法なのでお楽しみに。ということでグラフィックファシリテーターやまざきゆにこでした(^^)/。

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