Lifelog~毎日保存したログから見えてくる個性

第12回自動と手動のバックアップ

いかにバックアップするか/メールだ/シンクロだ

年月日の日付方式は、1日という単位で情報を扱うことができるため、バックアップがきわめて容易だ、ということも運用上のメリットとしてあげられます。

筆者はこの年月日方式を使って、毎日「昨日」の情報をさまざまな方式でバックアップをとっています。複数のハードディスクでシンクロしたり、メールしたりしています。

1日に手動で扱うファイル数は平均して100前後です。この程度の規模のファイル数や容量であれば、メールするのもバックアップするのも、きわめて短時間に行うことができます。情報にはすべて時刻が入っているので、いつの情報がほしいのか、というのを探すのも容易です。

「違う」こと

バックアップは、WindowsをLinuxやメールにシンクロしたりメールしたりアップロードする方式で、複数の完全に異なる方法を選んでいます。どれかひとつだけにしないのがポイントです。

完全に異なるものであれば、ウィルスや物理的な問題に対して耐性を期待できます。WindowsとLinuxに同時に感染するウィルス、というのは考えにくいですし、ローカルとWebが同時にアクセス不能になる、ということもないとはいいませんが、あまり多くはないでしょう。

複数のマシンに昨日までの(あるいは今日のでもかまいませんけど)おなじ情報があれば、1台に依存してなにかするという不安定さは解消されます。バックアップには、⁠違う」ことが重要なのです。

blogを見ようとしたら、サービスしてませんでした。

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外部の資源に依存すると、外部のスケジュールに左右されます。

差分を補足する

1日という単位、今日や昨日を単位とすることで、ひとにもコンピュータにもバランスのよいバックアップが可能になるわけです。

すこし補足すると、毎日バックアップしたあとに、昨日の情報を編集することもあり、バックアップとの差分は当然生まれてきます。その場合も、1カ月ごとにまとめてバックアップすることで差分を解消したり、不定期に全体をシンクロして差分を解消したりはしています。メインのコンピュータはわずかに20GBしかハードディスクをもたないVAIO-Uなので、せいぜい手元に置けるのは今月と先月くらいの情報でしかなく、3カ月前以前の情報は、外部のハードディスクやNASに移動しています。不定期に行っている差分の吸収は、この移動時に行うことが多いです。

自動処理エンジン『PileSecretary』

ほとんどすべての作業は、できるかぎり自動化しています。この連載で、何度か『PileDesktop』をご覧いただいてます。⁠PileDesktop』はもろにアナログな手作業のソフトなので、それと自動化と、どう関係するのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

筆者は、手作業をこよなく愛していると思います。手作業と、手作業にともなう「道具」を偏愛しているところがあります。その究極をつきつめようとしているのが『PileDesktop』です第1回等を参照⁠⁠。

そのいっぽうで、"手作業でできることには限界があるよな"とも強く感じています。すべてを手作業したいとは露ほども思っていません。それどころか、できるなら全部自動で、家事はメイドさんでと思っています。手作業をするということは、筆者自身の重要な資源である時間を使うので、手作業でなにかをすることは、その対象へのある種の投資があるわけです。

手作業への可処分時間

対象が3つある状況を想定しましょう。ひとつには強い関心を抱いている、もういっぽうへの興味は現在のところはほとんどない、最後のものはまず無関係。このような場合、それぞれにかける処理時間をどのように配分するのがよいでしょうか。

手作業で行う場合には、ある種の判断を下す必要があるので、ゼロというわけにはいきません。可処分時間を100としたときに、どのくらいどうなるのか。

関心の度合い
手動の場合の可処分時間
強い興味関心70%、弱い関心25%、無関係5%
自動の場合の可処分時間
強い興味関心100%、弱い関心0%、無関係0%

割合の数値はてきとうですが、処理を自動化してしまえば、現在関心をもっているものだけに100%資源を集中できます。。だいたい自動化によって、強い関心事への集中力は30%くらい向上すると期待できます。

いつか役にたつかもメール

たとえばメールの処理です。DMは別として、とっておく必要はあるけれど、いつか必要になって読めばよいようなメールを「弱い関心」のメールとすると、そのメールを視野に入れてしまえば、人間というのは、刺激から逃れるのを不得手とするので、つい読んでしまうことになりがちです。

読んでしまうと内容に心を奪われてしまうので、もしそういう将来必要になるかもしれないメールを、必要になるまで一時的に視野から排除することを自動化できれば、必要なことに集中するエネルギーは格段に高まることでしょう。

『PileSecretary』

『PilePaperFile』プロジェクト全体では、手動の作業を『PileDesktop』に、自動の作業を『PileSecretary』にと、大きくわけて開発を進めています。⁠PileDesktop』で扱う情報は、⁠PileSecretary』でフィルタリングした結果の情報だけなので、手作業で扱える規模に収まるわけです。

『PileSecretary』はシステム全体の総称で、モジュール構造を取り、複数のプログラムやスクリプトからなります。全自動なので、パターンを書くスクリプト(エディタです)以外のインターフェースはもちません。

インターフェースをもてば自動化できなくなるので、インターフェースをもたないのはある意味当然ともいえます。

起動時に/暇な時に、自動処理する

『PileSecretary』は、コンピュータが動いている限り、朝から晩まで、処理をし続けています。

主な処理としては、起動時/終了時/アイドル時/定時などがあり、設定したタイミングで、メールを送受信したり、メールやファイルを振り分けをして整理したり、ファイルをバックアップしたり、さまざまな情報をゲットしたり、ファイルを開いたり、買い物をコントロールしたりと、通常のコンピュータ的な用途からはだいぶ外れたところまで、LifeLogに踏み込んだ処理を行っています。

『PileSecretary』による自動化処理
『PileSecretary』による自動化処理
外部の環境とのやりとりを『PileSecretary』に任せ、出てきたものを『PileDesktop』で観察することで、新たなパターンやタグ記述を行い、フィードバックループを回すことでシステム全体を洗練させて運用しています。画像は、blogの祭典『シュッポロ』の資料。

定時のパターン

定時のパターンは、短いものでは1日に1回から、長いものでは、1年に数回までさまざまです。1年に数回というパターンは、検証が困難なので、完全に動作するまでには数年は必要かと思います。それに較べると、1日に1回とかは楽ですね。

朝に実行する、夜に実行する、店の開店時刻の内に実行するなど、パターンはさまざまです。

『PileSecretary』の動いているコンピュータで筆者自身が操作を行うことはごくまれです。ほぼ自動処理しかしないのです。自動処理できる量は、開発にともなって増え続けています。生活の中のパターンを見つけ出すことが次第にうまくなってきたので、それをルール化して『PileSecretary』のなかで処理するようになっているためです。

買い物を『PileSecretary』

たとえば買い物です。日常生活用の食材や消耗品(シャンプーや洗剤とか)を、どういう風にして買うと効率的か、というパターンは、それぞれさまざまだと思います。なくなったら買うとか、ある程度買いだめしておくとか、気づいたら買うとか、いろいろあると思いますが、筆者はLifeLogの情報と、⁠PileSecretary』の処理を加えることで、必要最小限の買い物の手間とコストと在庫で買い物をすませられるようになりつつあります。

こういう自動化によって、LifeLogのための自動記述は、かなり充実してきました。手動で行うには、ちょっとめんどうすぎることも、自動で行う分には、当然ですがまったく苦痛を感じません。シャンプーを買うかどうかをわざわざ手動で記録するのは、スーパーの在庫管理にも似て単調で苦痛な作業ですが、必要になったときに自動的にシャンプーを購入してくれるように整えてくれるシステムは、作って使ってみると、なかなかここちよいです。

ログと自動化のフィルタリングの残りを手動で

iPhone 3Gは標準で位置情報を記録するGeoTagがオンになっていると聞きます。位置情報の記録が自動でなかったら、よほど粘り強い人以外には、位置情報を記録し続けることは困難だろうと思います。

自動処理をすることで、可処分時間が増え、手動でできることに耽溺できるわけです。

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