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第45回デジタル書籍と筮竹背表紙システム

デジタル背表紙システム稼働中

「本は背表紙だ!」と思い、既存の背表紙(と表紙)のシステムを紹介しているうちに、自分のシステムの紹介が遅れました。まずは、次の図をご覧ください。

図1 デジタル背表紙システムで構築した背表紙群
図1 デジタル背表紙システムで構築した背表紙群
知人にメールして見ていただいたところ、⁠はじめ、メール本文を読む前に添付の画像を開いて、ふつうに本棚の写真だと思ってしまいました。これはスゴいです」と感想をいただきました。というか、普通に本棚に見えますよね。わたしにもそう見えます。
図2 リアルな本棚で表示した背表紙システム
図2 リアルな本棚で表示した背表紙システム
サイズの微調整は必要ですが、リアルな本とかなり似ていると感じます。
図3 リアルな本棚なので、リアルな本を並べてみました
図3 リアルな本棚なので、リアルな本を並べてみました。左端にリアルな本を並べてみました。
左端にリアルな本を並べてみました。

なぜにこうも背表紙なのかとふと書棚を見ていたら、⁠書物の宇宙誌』が目に飛び込んできました第3回参照⁠⁠。これは澁澤龍彦の蔵書目録ですが、本棚のイメージもたくさん紹介されています。そう考えてみれば、昔から本棚の本を好きだったことを思い出しました。

本棚の本。たくさんもっています。

図4 本棚2(アスペクト)
図4 本棚2(アスペクト)
本棚の写真の本です。写真がピンボケ&背表紙が光っていてタイトルを読めないのがいまいちですが。

本物の背表紙を使うには手間がかかる

すべてを調べたわけではありませんが、リアルに背表紙をデジタル化した例が第44回の九州大学と『新書マップ』の2例のみなのには、背表紙のデジタル化には大きな問題があることを予感させます。

大きな問題とはすなわち、背表紙のデジタル化にはたいへんな手間がかかる、ということです。本の表紙であれば、平面なのでスキャナにかけやすいのですが、背表紙は立体的な造形物であり、特に本の厚みが薄い場合には扱いにくいために、デジタル化の作業は容易ではありません。

スキャンの場合は、表紙なら自動切り抜きができますが、背表紙では光を考えないとむずかしいのです。九州大学のシステムでは、カメラで撮影する背景に無地のバック紙を使用しています。スキャナを使う場合には、光を回避しなければ、手などが映ってしまいます。

自らデジタル化しない場合には、背表紙が提供されない限りは背表紙を扱うことはできないわけですから、この手間をどう回避するかがたいへんなポイントになります。

宮川拓也氏らの論文でも、⁠仮想書架を実現するためには、⁠大量」の背表紙画像をどのように収集・更新するかが問題となる』と、この問題を指摘しています。宮川拓也氏らのシステムでは、カメラを中心に構成し、背表紙画像を生成するために必要な次の作業の手順を満たす仕様になっているといいます。

  1. 背表紙を撮影する。
  2. 撮影した写真から背表紙部分を切り取る。
  3. 切り取った画像のサイズ調整を行なう。
  4. ファイル名を書誌IDにして保存する。
  5. 生成した背表紙画像をサーバにアップロードする。
  6. データベースに登録する。

この手順はたしかにそのとおりなのですが、この手順を追う限りは、1冊ごとにかかる手間を軽減することはほとんど困難です。例によって「大量」は何冊かが問題ですが、宮川拓也氏らのシステムが、2006年の時点で約1,500冊で、その後どうなっているのか興味深いところです。

以上の作業を行い、宮川拓也氏らのシステムでは、10冊の背表紙画像の生成に11分かかるそうです。

総数は推定ですが、⁠新書マップ』が9,000冊の背表紙をデジタル化しているとすれば、もっとも規模としては大きいと考えられます。

背表紙システム

書籍をデジタル化する筆者も、背表紙をどうデジタル化するかについて、長年検討や試作をつづけてきました。

すでに触れたとおり、背表紙は立体物に近くスキャンが困難であること、したがって作業性をどう向上させるかが問題であるため、検討段階でとどまっていたのですが、この度ようやく背表紙システムが動き出しました。

このシステムを使うと、スキャンした画像から自動的に表紙を切り出すことができます。したがって、スキャンのためにわざわざ手間をかける必要がありません。すでに統合した日付への移動保管システムと完全に一体化しており、書籍をスキャンして日付に(自動振り分け)移動すれば、その時点で背表紙画像を自動的に生成します。ユーザーの作業時間は振り分けボタンを押すだけなので、ほぼゼロです。これは九州大学の方式と較べて圧倒的に優れている点です。

試作テストした限りでは、微調整が必要なところが複数ありますが、解決できる可能性もあるので、自動化は進むと思われます。データベースへの登録も自動なので、特別な手間がありません。とりあえず1年分約70ファイルを自動化して作成しました。

PictureViewを使って画面上に仮想的に並べるシステムも作り、背表紙をダブルクリックすると、デジタル化した本の表紙や本文を表示できます。背表紙-表紙-本文を完全にシームレスに連続して動かすことができています。

この背表紙システムは、宮川拓也氏らのシステムに較べてほぼ全自動化できている点で手間がなく継続しやすく、⁠新書マップ』と較べて、並べ換えの自由度の高さで優っています。

図5 デジタル背表紙システムは、自由に配置できます
図5 デジタル背表紙システムは、自由に配置できます
任意の位置に配置できます。ソートなども検討準備中です。

今後は、冊数ベースと現在把握できている問題を解決して、過去の30年分の全データの背表紙作成と、それを表示するシステムへと、拡張したいと思います。過去30年に拡張した時点で、規模で『新書マップ』に追いつけるかどうかは、まだよくわかりません。

図6 背表紙をダブルクリックすると、該当する本の表紙を開きます
図6 背表紙をダブルクリックすると、該当する本の表紙を開きます
背表紙-本という流れは自然だと感じます。
図7 表紙の次は本文を表示します
図7 表紙の次は本文を表示します
本文は、すでに構築ずみの2ページビューアー第42回参照)での表示です。これで、背表紙-表紙-本文をシームレスに連動して扱うことができるようになりました。

背表紙を使う背表紙筮竹電子書籍システム

スキャンをして断裁をすると、背表紙が残ります。この背表紙は、易占いに使う筮竹(ぜいちく)を彷彿とさせるところがあります。断裁した背表紙は本に較べて場所を取らないわりに、本そのものを彷彿とさせインスパイアするなにかをもっています。

そこで、この背表紙筮竹を、本を呼び出すための物理的なインターフェースとして使うことを考えました。

たとえばこの背表紙筮竹に、本のカバーの裏にあるISBNを貼りつければ、背表紙をバーコードリーダーにかざすだけでデジタルの本を呼び出す機能を実現できます。リアルな背表紙とデジタルのものがつながるわけです。

図8 本をデジタル化するために断裁すると、背表紙が残ります
図8 本をデジタル化するために断裁すると、背表紙が残ります
この背表紙をなにかに使えないかとずっと考えていました。
図9 背表紙
図9 背表紙
なんか、易占いに使う筮竹(ぜいちく)みたいです。
図10 裏側は断裁した紙で、カット面の手触りは本そのものです
図10 裏側は断裁した紙で、カット面の手触りは本そのものです
なかなかおもしろいオブジェなのです。マジックで購入日を書いたりしてます。
図11 この筮竹背表紙にバーコードを貼りつけてみることにしました
図11 この筮竹背表紙にバーコードを貼りつけてみることにしました
図12 バーコードを張りつけた背表紙
図12 バーコードを張りつけた背表紙。これをバーコードリーダーにかざすと、デジタルの本を呼び出すこともできるわけです。
これをバーコードリーダーにかざすと、デジタルの本を呼び出すこともできるわけです。

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