会社で「ポエム」を綴ろう! ~ポエム駆動で理想を語ると社内の風が変わる!~

第2回「ポエム」持ち寄りを支える開発組織と運営

ピクシブでは「ポエム」によって開発が駆動しています。しかし「ポエム」は自然に書けるものではありません。書き手を支援する仕組みと、書かれた「ポエム」を扱う仕組みが必要です。今回は「ポエム」を扱う仕組みとしてのツール選びと、⁠ポエム」が書かれるための要因について説明します。

ポエムの例
ポエムの例

「ポエム」のきっかけは一人の社員の悩みから

まず、どういう事をきっかけに「ポエム」が書かれるようになったのかを説明します。

前回の記事で、筆者たちの環境について下記の様に述べました。

その現れとして例えば、担当プロジェクトやチームにとらわれず、興味のあるテーマのミーティングに自分から飛び入り参加したり、仕事が終わった後もオフィスでドリンクを飲みながら自分たちのサービスのあり方を議論していたり、休日に同人誌即売会などの事業領域に縁のあるイベントで同僚と度々出くわしたりと、公私ともに熱く活動しているメンバーがたくさんいます。

このような熱を持つメンバーが揃っていて、みなそれぞれの意見を傾聴し、尊重してくれます。しかしその中で筆者は密かな悩みを抱えていました。

実は筆者自身は、引っ込み思案でコミュニケーションがあまり得意ではなく、何か意見を出すときには頭の中で何度も練習しないと切り出せない性格です。安心して口を開けばいい事が頭ではわかっていても、発言する事に自分の中の恐怖と戦うための勇気が必要でした。

発言しやすい場を作る

この悩みを、自分の意見を発言しやすい場を作ることで解決しようとしました。

場作りとしては、下記の2つのアプローチを考えました。

  1. メンバー間で顔を突き合わせる機会を作る事
  2. 発言をまとめるツールを用意する事

最終的に、後者を選択しました。

すでにメンバー間で顔を突き合わせる機会は日常的に充分あり、本来確保すべきユーザに届ける価値を作る時間を削りたくなかったためです。

また、顔を突き合わせる機会を作ろうとなると、飲み会というアクティビティが定番ですが、話が散らかってしまい後に残りにくいという事を懸念したためです。

ツールで実現したいこと

ツールの用意としては、前回の記事でも引用した、ppworks氏によるポエム駆動開発によるWEBサービスの作り方 pplog誕生ものがたりというエントリーでの、

私達はサービスを開発する前にポエムを書くことを大事にしています。それをポエム駆動開発と呼んでいます。 サービスに対する熱い思いがパートナー(もしくはチーム)で共有させれていて、それをいつでも振り返り立ち返る、ソレが一番大事です。

という事を実現したいと考ました。

そのため、適切に振り返り立ち返るための発言をまとめる事ができ、皆に広めることを促進できるようツールを探しました。

ツール選び

発言をまとめるツール選びでは、その候補としてはWikiやIssue管理システム、グループチャットを使う事を考えました。

候補に挙げた理由は、すでに運用しているものがあり特段の準備が不要な事と、他の会社の事例での利用事例を聞いた事があったためです。

ただ、結論としてはいずれも選びませんでした。

Wikiの場合

Wikiは一度ページを作ったら消されずにずっと残ってしまいがちです。Wikiの使い方としてそれは正しくない事ですが、経験上そのようなWikiを多くみてきました。意見をまとめるツールとしては申し分ないですが、ずっと残ってしまうと感じてしまっては発言の敷居が上がってしまうことを懸念しました。

Issue管理システムの場合

Issue管理システムは、オープン状態とクローズ状態が存在し、クローズすることにはそれ自体に別の意味がこもりがちです。例えば、何の回答もなくクローズする事には、そのIssueを問題と扱わないメッセージがでてしまい、あまりいい体験ではありません。

グループチャットの場合

グループチャットで意見を発信する場を作る事は、発言が時系列で流れていくため発言のハードルを下げる事ができるため有力な方法となり得ます。 このときすでにピクシブではidobataというグループチャットツールを使っており、個人間に閉じないオープンなやり取りや、システム通知、情報共有にと使っていました。

ただチャットというツールでは、端的な短い表現が使われがちなため、意見を出す場所として使うには切れ味が良すぎる発言が飛び交う事を懸念しました。

適材適所として、グループチャットは新しい意見が挙がった事を通知するために使い、まとまった意見を述べるには別の道具を用意しようと思いました。

選択したツール

最終的には、前回も紹介したesa.ioという「情報を育てる」という視点で作られたドキュメント共有サービスを選択しました。

esa.ioとの出会い

esa.ioというサービス利用のきっかけは、2014年に開催されたピクシブのオフィスを開場提供したハッカソンイベントでした。

ハッカソンの様子http://obun.typepad.jp/blog/2014/07/2014_07_22.htmlより)
ハッカソンの様子(http://obun.typepad.jp/blog/2014/07/2014_07_22.htmlより)

このイベントにesa.io開発陣が参加しており、その折にesa.ioのかわいいアイコンを知ったのが最初の出会いでした。

その後、クローズドβ中だったため直接コンタクトを取り、試用を開始しました。

元々、esa.ioとは不完全な状態でも公開し、何度も更新しながら情報を育て、育ったら整理して保管するという情報管理ツールです。

esa.io
esa.io

見た目のフレンドリーさと使いやすさからさから、社内で考えを発信するツールとしてesa.ioの利用をスタートしました。そして、esa.ioにはポエムを綴るWebサービスであるpplogと似た良い雰囲気があることと、考えを発信することに名前付けして扱いやすくするために、自らの考えを表現することを「ポエム」と呼び、esa.ioをその「ポエム」を発信するための社内ツールとして位置づけました。

pplog
pplog

esa.ioの導入

新しいツールを組織に導入する事は困難を伴います。多くのメンバーが興味を持ってくれればいいのですが、上からの押しつけと思われてしまっては、せっかく良い道具でも興味を持ってもらえません。仮に興味を持ってくれても、最初に少し試したのち興味が失われて閑古鳥が鳴く状態になることも避けたいです。

当初はアナウンスだけ社内に広く流して希望者にアカウントを発行して少しずつ広める事を考えました。しかし中途半端にせず全員のアカウント作ってしまったほうがいいとのアドバイスを受けて、一気に導入を進めました。

導入にあたっては、アカウント作成の他、下記を行いました。

公開版のプレゼンテーション資料

「ポエム」が書かれるようになった要因

単にツールを導入するだけでは使われるようになりません。

結果として、導入したesa.ioが使われて「ポエム」が書かれるようになった要因として、前回述べた下記の事は大きな比重を占めていると考えています。

「ポエム」という言葉を使いだす前から、元々自社のサービスに凄い熱意とオーナーシップを持っているメンバーが揃っていました。

これに加えて、下記によるフィードバックが生まれる事で、⁠ポエム」の発信しがいを高めることができた事が、今の活発な利用状況に繋がっていると推測しています。

  • 「ポエム」更新がグループチャットによってリアルタイムに通知される
  • 通知をきっかけに「ポエム」が読まれて、コメントやスターによる反応が得られる
  • 得られた反応はリアルタイムに通知される
  • 反応をきっかけに更に考えが深まる
  • 具体的なアクションが生まれる

リアルタイムな通知による活動の可視化がインセンティブになり、ピクシブのメンバーに備わっていたサービスとユーザに関する熱い想いが刺激され、少しずつ「ポエム」を書いてみる人が増え、いつしか「ポエム」を書き始める前はどのように仕事していたか思い出せなくなる位に定着していきました。

更新通知の様子
更新通知の様子

まとめ

「ポエム」を書くといった新しい事をはじめるには、そのための場作りと告知活動が必要です。このような工夫があってはじめて、皆が新しい取り組みに興味を持ってくれます。

次回は、esa.ioの導入以後、⁠ポエム」が書かれるようになった詳細な経緯を解説します。

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