前回は、処理ステップのうち、当面あなたが注目することではない『物』を取り除く質問について、説明してきました。
繰り返しになりますが、Somedayリスト行きを決定する判断基準は、あなたが注目するかしないかです。競馬でも競走馬がよそ見をしないように、目を覆うブリンカーのような役目です。
次の質問からは、ブリンカーをつけていても視野に入った、注目すべき『物』について、分類する質問になります。
(5)それって面倒?
この質問は、『物』について、どういう状況になっているのか見張る必要があるのかを判断します。
GTDのワークフローのうち、Projectリストに行き先が決まった時だけ、他のリストと行動が異なります。他のリストに行き先が決まったら『物』は行き先が決まったのでOKですが、Projectリストに行き先が決まっても、引き続き次の質問へ向かう必要があります。ここはよく間違いやすいところなので、気をつけて下さい。
この質問で、行き先が決まるリストは、Projectリストです。GTDでは、ゴールに向かうために、一つ以上の行動を必要とするものを、プロジェクトと定義しています。Projectリストは、それがちゃんと進んでいるかどうか確認するために、端的に項目を思い出すためのリストです。いろいろ行動しないと完了しないもの、だからこそ定期的に進んでいるか見張る必要が出てくるわけです。
例えば、『物』が「GTDコミュニティのオフ会を実施する」でした。私は、この『物』を見て、(1)の質問で、次のように思いました――「コミュニティで相談したんだよね。面白そうだな、っていう話があったから、オフ会やろうって決めたんだった。これは注目することだけど、いろいろやることもあるし考えることも必要、ちゃんと進んでいるか確認する必要があるよね、ならProjectリスト行きに決定だ。」――このように、「GTDコミュニティのオフ会を実施する」は、Projectリスト行きになります。複数作業があったり、一筋縄ではいかないな、そもそも面倒だな、と思ったりする場合、ここでの質問はYesになります。
(6)次の行動は何?
この質問は、『物』について、それを手につけるにはどういう行動が必要なのかを準備するための質問です。
GTDが常々言っているのは、「次の行動は何?」と答えるだけで、随分仕事が進むことです。ちょっとした見通しがあるだけで、私たちは簡単に前に進むことができます。そしてこの行動が、具体的であればある程、実行に移しやすいです。
家に出るまでは会社に行くのが面倒だけど、家から出たらそうでもない、ということはよくあることです。大きな作業で言えば「会社に行く」ということになりますが、「家を出る」という次のアクションを起こしただけで、速やかに最後まで実行できる、典型的な例です。
Projectリストの例から引き続いて、例えば『物』が「GTDコミュニティのオフ会を実施する」でした。私は、この『物』を見て、次のように思いました――「オフ会をすることは決めたけれども、日時も場所も曖昧だし、中身自体もまだまだ決まっていないなぁ。これはもうちょっとイメージを膨らませてどんなことをしようか考える必要があるよね。ブレストブレスト~! 今回はマインドマップでブレストしてみよう! となると、次のアクションは、紙にセントラルイメージを書くにしよう。」――このように、「GTDコミュニティのオフ会を実施する」の次のアクションは、「GTDオフ会のMindMap用に、セントラルイメージを書く」になります。
次のアクションの特徴は、全ての作業を表すのではなく、その作業のとっかかりの部分だけで、十分機能します。次のアクションで行いたいのは、行動するように、意識を促すことです。マラソンをする時、ゴールを目指すのではなく、次の電柱まで向かうと設定するように、小さな一歩を設定しましょう。
次のアクションを考えることは重要だと、Lifehacking.jpでも以下の記事で紹介されていました。合わせてご覧下さい。
(7)この場で2分以内でできる?
この質問は、瑣末な『物』だったら、実行に移してしまうための質問です。
今、この場所ですぐにできる行動ならば、重要であれ何であれ、どうせいつかは実行しなければなりません。ならば、このタイミングで実行します。
2分という時間に疑問を感じる人もいるかもしれません。仮に、ここで『物』を実行しないと決めた場合、それはどこかにしまう必要があります。実際しまいこんで、それを再度取り出そうとすると、思いの他時間がかかる場合があります。2分以上かかることもあります。2分以内で終わることなのに、取り出して行動にかかるまでに2分かかるなんて、間抜けです。2分かけて探してから2分以内で行動を済ませるか、それとも今2分ロスすることなく2分以内で行動を済ませるか、この質問ではそういう選択を迫っています。探す苦労を考えたら、今やる方がマシだ、と思ったらすぐさま実行しましょう。
また、前回指定したように、GTDのリストを紙で行っている場合は、それだけであなたの行動を促します。紙は、すぐにへばってしまいますので、新しい紙に書き写すことが必要になることがあります。このタイミングで、2分以内でできそうなことを、書き写すことが面倒な気になってきます。そう思ったら、すぐさま実行しましょう。
実行する際には、時間を計って実行するのがいいかもしれません。というのも、2分がどれぐらいの時間か、正確に見積もることは難しいからです。それに、時間を計ることでプレッシャーとなり、いつもよりテキパキと動くことができます。2分が過ぎてしまったら、キリのいいところで終わらせてしまい、次の行動を決めて、次の質問へ向かいます。
(8)待ちで作業なし?
この質問は、『物』の次のアクションが、自分以外が行うことだったら、よけるための質問です。
自分が待ち状態であるというのは、自分以外の誰かがボールを握っている行動です。この質問でYesになる『物』で、自分できることと言えば、相手から回答が戻ってくるのを待ったり、催促したりするぐらいしか、行動ができなかったりします。「俺はやるぜ!」といって行動リストから受け取った項目が「待て」ではちょっと切ないですね。
なので、この質問を設けることで、自分ができる作業から、選り分けてしまいます。そして、待ち専門のWaitForリストに記憶を託します。
(9)期日が決まっている?
この質問は、『物』の次のアクションが、実行する期日が決まっているものを、よけるための質問です。
ワークフローの最後の質問になりました。
行動できることの中には、自分で自由に実行するタイミングを変えられないものがあります。一つは、他人が行動する場合、そしてもう一つが、今回の質問でYesになるような、他の人と期日を約束している場合です。例えば会社のミーティング、友人との飲み会などがそれに当たります。その予定の前に何も行うことがなければ、その日その時間になるまで待つ以外は、行うことは何もありません。
そこで、今回の質問で選り分け、予定専門のCalendarリストに記憶を託します。
ちなみに、自分がこの日にやろうと思っていること、つまり自分のみとで約束している項目は、この質問ではNoになります。なぜなら、自分と約束している場合は、簡単に実行期日を移動することができるからです。ほとんど予定が変わらないものが、ここでの質問でYesになります。しかし、必ずその日に実行する! と固く決意をしたならば、ここでの質問はYesになります。初めてGTDを実践する場合は、他の人と約束している項目にのみ、Calendarリスト行きにしましょう。
そして、最後まで残ったものがNextActionリスト行き、つまり、次にアクションできるものです。
ここに残ったものは、待ち状態でもなく、時間にも拘束されず、しかし、状況さえ合えば実行できる段階のものばかりです。言わばスタート地点で位置についた、走者達なのです。よーいドンと掛け声さえかければ、走ることができます。
(5)~(9)のまとめ:注目すべきことの中でも、じっくり腰を据えて実行することではないものも取り除いた。
(5)~(9)の質問は、実行すると頭をめぐらしたい項目を洗い出すための、質問でした。ワークフローの質問形式のうち、全てNoとなったものが、じっくり腰を据えて実行することに、なるのです。
ここで注目してほしいのは、ワークフローは、こんなものが取り組むべきものなのですよ、とは一言も言わずに、一番必要なものを抽出したことです。これは、じっくり取り組まなくてはならないことが、いかに捉えどころがないことの証明でもあります。ノー、ノー、ノー、と繰り返してようやく、それがじっくり取り組むことのものだと分かるのです。
処理ステップの終わりは、Inboxリストの『物』がなくなったら
処理ステップがどうやったら終了になるのか? それは、Inboxリストにある『物』がなくなったら終わりです。
初めてGTDを行う場合は、『物』の数がとても多いこともあり、この処理ステップはとても大変です。しかし、2回目以降は、収集する『物』も減ってきますのでだんだんと簡単になります。
処理ステップが終わって
さて、Inboxの中のすべての『物』についてワークフローに従って処理し、処理ステップが終わった方、お疲れ様でした! 初めてGTDの処理ステップをされた方、とっても大変だったことだと思います。
処理ステップをやって私が一番に思ったことは、決めるってなんてエネルギーのかかる作業なんだ、ってことです。そして、今まであまり自分のことを省みずに、物事を決めていたんだなとも、思いました。
(2)~(4)は注目しなくていいもの、(5)~(9)は注目する必要のあるものです。言わば、(2)~(4)は家においてある品々であり、(5)~(9)は出かける時に持っていく品々、いつでも気にかけられるよう、携帯しなければならないものです。その境目は、SomedayとProjectの間になります。そしてその境目をかたち作るのは、時間ではなく、あなたの心持ち次第であることを、忘れないでください。
そして、この処理ステップは、決めること・瑣末なことはすぐに実行することの訓練でもあります。何度も繰り返すことによって、以前よりも気負いなく、決められるようになります。これはすぐには気がつかないことですが、数ヶ月後いかに行動しやすくなっているかがわかります。数ヶ月先を楽しみに、処理ステップを実行して下さい。
決めたらリストに早変わり
処理ステップでどうするかを決めたものは、GTDの独特のリストになります。リスト先が決まった=あなたがどうするかを決めた、と同じになります。そのGTDのリストは6つのリストから構成されています。このリストについては、今後の連載で詳しく説明しますが、処理ステップを行った結果、どのようなリストが構成されるのか、もう一度箇条書きしておきたいと思います。
- Referenceリスト
作業が不要だけれど、後から確認したいもの
- Somedayリスト
いつかやろうリスト
- Projectリスト
見張りリスト。それ自体は作業を促すものではないけれども、逐一状況を確認しなければならないリスト
- WaitForリスト
返事待ちリスト。
- Calendarリスト
時間割りリスト。
- NextActionリスト
実行リスト
最後に:処理ステップのポイントのまとめ
GTDの処理ステップは、忙殺される生活の中で、あなたを浮かび上がらせる、大切なプロセスです。
処理ステップは不思議なもので、心意気一つで、機械的な作業にも、心の通った問いかけにもなります。時間がないなら機械的に判断するのもいいし、それなりに時間を掛けられるなら、緩やかに自分に問いかけながら『物』とどう関わっていくかを決めてみるのもいいかもしれません。
処理ステップのポイントを3つまとめて、今回を締めくくりたいと思います。
- 処理ステップですることは、「あなたが『物』について係わり合いを決める」ことです
- SomedayリストとProjectリストの狭間は、「あなたが注目するかしないか」です
- 繰り返し処理ステップを行うことで、「決めること・瑣末なことはすぐに実行すること」が訓練されます