著者が感じるTumblrの魅力/ふじかわまゆこ
こんにちは!これからこの連載を担当しますふじかわと申します。gihyo.jpでは、昨年4月より12月まで「Twitter使いへの道 AtoZ 」を書かせていただいていましたが、こちらの連載もどうぞよろしくお願いします。
Tumblrでは、ここ(mayunezu petit space )にいます。
Twitterと並んで「ミニブログ」と表現されることも多いTumblr。しかしこの2つのWebサービスの楽しみ方はまったく異なると言って良いでしょう。Twitter同様やること自体は非常にシンプルですが、できることは奥深いものがあります。この連載では、アークウェブの中野さんと一緒に、Tumblrの基本操作はもちろん、より深い楽しみ方もご紹介していけたらと思っています。
これまでいろいろとTumblrについての考察をブログに書かれていて(詳細後述) 、私から見て「Tumblrマニア」と呼ぶにふさわしい中野さんの視点を交えることで、Tumblrが初めてという方にも、Tumblrにすでにどっぷりハマっている方にも、Tumblrの魅力が伝わればと思います。
今回は最初ということで、用語解説も含めながら「私にとってのTumblr」をご紹介してみます。
Tumblrとの出会い
Tumblrは、Twitterが日本でブームになった少し後、2007年の4月~5月にかけて日本人の間に知られたサービスでした。当時Twitterが(一部では)爆発的なブームだったこともあり、2007年3月にTumblrがスタートした際は日本人ユーザはあまり多くはなかったのではないでしょうか。
Tumblrトップページ。 ユーザーのページの中でスタッフおすすめのものが表示されている
私自身は4月下旬あたりにTwitterを通じてTumblrの存在を知ってアカウントを取ったのですが、そのまま使わずにいました。トップページ を見ると、書かれていることはシンプルなのですが、そのときは何をしていいのかよくわからなかったのです。ログインをしてみても、最初に何をすればいいのか戸惑ってしまう感じでした。しばらくしてからいろいろな人がTumblrにハマっていくのを見て、彼らの真似をしてやってみたら、Tumblrのおもしろさに気づいて一瞬で夢中になり、今に至ります。
私が気づいた「Tumblrのおもしろさ」
まず1つには「シンプルだからこそ、楽しみ方を自分で開発できる」ということがあります。Tumblrは、通常のブログのように自分で文章を書いたり画像を載せたりすることもできますが、その最大の特徴はネット上で見つけた文章や画像や動画を手軽に「Tumblelog」として記録できることにあります。「 何をテーマに集めるか」だけでもそのTumblelogには特徴が生まれます。自分が気になるサイトの情報を集めたりすれば、自分用のメモとしても使えます。もちろん、自分が見たものを携帯で写真にとって送ったり…といった使い方もできます。
Tumblrには「Follow」機能があり、管理画面(Tumblrではこれを「Dashboard」と呼びます)から他の人のTumblelogを見ることができるので、人それぞれのTumblrの楽しみ方を見るのも面白いです。ずっと見ていると、知らない人なのになんだか精神的に近づいたような気持ちになることもあります。
Tumblrの管理画面「dashboard」 。 FollowerがTumblelogに記録したものがリストアップされる
もう1つは、「 言葉のないコミュニケーション」 。これが私にとって予想外のおもしろさがありました。誰かがなにかをTumblelogに記録して、それを誰かが見て反応すること自体がコミュニケーションになっているのです。これを実現してくれるのが「ReBlog」( 誰かがTumblelogに記録したものを、自分のTumblelogに記録する)という機能です。
たとえば、Aさんがネット上で誰かが書いた文章をQuote(引用)してTumblelogに記録するとします。その引用個所は、Aさんの興味のあることだったり、共感していることだったりします。
それに対して「ReBlog」することで、その人の行動に対する反応ができます。単に自分のTumblogに記録しているだけ[1] なのですが、その行動自体が「そうそう!私もそう思う!」という意思表示と解釈できるので、コミュニケーションが成立している感じがするのです。
[1] Tumblrでは、自分がTumblelogに記録したものはすべて公開されます。アカウントを取得すると、その時点で自分専用のURLができますので、正確には「記録」だけではなく「公開」もしていることになります。
私のTumblrの楽しみ方
私がTumblrにはまったのは、Twitterで見た発言がきっかけでした。「 自分のTumblr(のページ)を見ていると、好きなものばかりが集まっていてにやけちゃう」という発言を見て、私も好きなものを集めようと思い、Tumblrを楽しむきっかけをつかみました。それ以来、私はずっと好きなものを追いかけてはTumblelogに記録しているように思います。
しばらく自分の思いに任せてやっていると、自分が気になるものに特定の傾向があることがわかってきます。あとで自分のページを見てみると、自分の好きなものをまとめた1つの記録ができあがっているのがおもしろくて、私も時々自分のページを見てにやける日々です。
また、Followする人を増やしていくと、いろいろな人のTumblelogがDashboardに表示されます。自分が興味のないものも目に入ることになるのですが、その中に、自分が今まで「興味がない」とも判断したことのないような、新しい何かを発見できることもよくあるのです。自分が知らなかった自分を発見するのにも、Tumblrはとても役立っていると思います。普段はどうしても自分の興味のあるものばかりに目が行きがちですが、視野を広げるきっかけにもなっているように思います。
次回以降、Tumblrの操作も解説していけたらと思っています。最初の私のように何をしたらいいのか戸惑うことなく、みなさんにTumblrを楽しんでいただけるような内容にできればと思っています。これからどうぞよろしくお願いします。
著者が感じるTumblrの魅力/中野宗
ちょっと逆風が吹いているときにTumblrの魅力を語る意味
話題の「Tumblr」の紹介記事を、ふじかわさんと一緒にスタートさせていただくことになった中野 宗(なかの はじめ)です。年始に新春企画として「2007年のWebサービス:TwitterとTumblrがユーザーを虜にした理由 」という記事を書かせていただいたばかりですが、Tumblrについてさらに掘り下げていこうと思います。改めてよろしくお願いします。
Tumblrではここ(nakano.Tumblr.com )にいます。
さて連載第1回めのテーマは、「 筆者が感じるTumblrの魅力」 。このテーマは、Tumblrをより多くの人に使ってもらい、新しさを感じ取ってもらおうという連載の本旨からももちろん大切ですが、ぼくはもう一つ重要な意味があると思っています。
それは、日本のWeb界隈でのTumblrの評判をもう少しポジティブ側に傾けたい、という思いです。
2007年末から2008年の1月にかけて、TumblrユーザによるCG画像の無断転載に作者の方が強い不快感を自身のサイトで表明したことなどをきっかけに、Tumblrというサービスへの疑問やユーザ批判、メタなWebと著作権論議などが集中的に起こる、いわば「事件」がありました。いろんな人がブログやTwitterやTumblrで語ったので、この騒ぎでTumblrを知ったり、関心を持ちはじめた人なども多いようです。
こんな時期にTumblrの「魅力」を手放しで語るのはどうなの? という人もいるでしょう。著作権についてはもちろん、Tumblrを使う際のマナーの問題と絡めて後ほどこの連載でも扱うつもりです。
一方で、「 Tumblrはなんだか危ない」「 Tumblrは無法地帯」といった誤解も含むイメージが広がることで、Tumblrのエッジな魅力や、ソーシャルソフトウェアにもたらす可能性にまで目をふさいでしまう人が増えるような事態はなんとかしたい、とぼくは思います。
というわけで前置きが長くなりましたが、まず今回はTumblrのぼくにとっての魅力の話です。
Tumblrにハマりやすい人・ハマりにくい人
Tumblrにハマりやすい人・ハマりにくい人というタイプ分けは、ある程度できるかもしれません。
まず、ソーシャルブックマークなどの情報収集ツールを普段から使いこなしている、Webサービスへのリテラシが高い人、しかもそれをオープンな環境で行うことに抵抗が薄い人はTumblrにハマれる素養が十分あります。
ネットでは日々おもしろいニュースやコンテンツが生み出されていますが、ユーザはそれをメール、ブログやmixi日記、インスタントメッセンジャー、Twitterなどで「これおもしろいよ」「 これ見てみて」と話題にし、他のユーザとシェアしていますよね。このように、普段からネット上で「これいいよ」を頻繁にやっている人は、Tumblrとの親和性が高いはず。
ネット上であまり自発的には面白いものを探さない人(そういう人がこの記事を読んでいる可能性は低いと思いますが)はTumblrには向いていません。
ですが、Tumblrではテキスト、引用、リンク、写真、音声、動画など多様なタイプのコンテンツを収集し、また人が集めたコンテンツに接することができますから、自分の興味のある分野に限ってコンテンツを集めていくといったハマり方もできると思います。
シンプルな情報収集ツールとしてのTumblr
ぼくがTumblrを使いはじめたのは、2007年の7月ごろです。
最初は、自分のブログのRSSを読ませたり、Flickrの写真を表示してみたり、リンクを投稿したりということを試しました。
ハマりはじめたのは、日々自分がしている情報収集のクリップ先をTumblrにし、記事をquote(引用)付きで投げはじめたところ、それがとても腑に落ちたあたりから。それからはquoteを頻繁に行うようになりました。
情報収集のためのWebサービスは、2006年以降はソーシャルブックマーク(SBM)が一般的ですね。SBMのようにURLをクリップしTagを付けるという作業の代わりに、Tumblrでその記事の一番印象的なフレーズを引用するという行為は、引用する際はもちろんあとから読み返す際にも、自分の気づきや背景にある問題意識などの「文脈」をはっきりと意識することができ、その後何かを考える際にも活かしやすい。堅苦しくいえば、TumblrはSBMより知的生産性が高いんじゃないか、と思ったのです。
振り返ってみれば、これはTumblrに以下のような利点があったからだと言えます。
( バージョンアップでやや多機能になってきたとはいえ)非常にシンプルで、覚えるべきことが少ないツールであること。また、ブックマークレットは人気のコンテンツやサイトに対応した出来のいいツールであり、直感的にストレスなく使えたこと。
情報収集ツールとしての魅力については、2007年10月にブログ記事にまとめました。
Tumblrの魅力:かつてないほど「Webをやる」ことに惑溺できるツール http://nakanohajime.wordpress.com/2007/10/27/tumblr/
ここまでは、いわば「Tumblelogの最新型」としての魅力だと言えるでしょう。Tumblelogという概念をWebサービスに落とし込むにあたって、Webをよく知っている人たちが仕様を考えたという点が大きいはずです。
ソーシャルネットワークとしてのTumblr
情報収集ツールとしてTumblrを使っているだけでは、Dashboardを見ることはほとんどありませんでした。
今考えると笑えますが、最初は、Dashboard上をTumblrのカスタマイズTipsが流れてきてもReBlogせず、わざわざ別ファイルにURLをコピーしていました。でも多くのユーザのReBlogによって繰り返し同じコンテンツが流れてくるのを見て、場の流儀を学び、それからはTumblrを使う時間も増え、自ら「Tumblr中毒」と自覚するに至ります。
Tumblrのソーシャルな魅力についてなんとか言葉にしてみようと思い、書いたのが以下の2本です。
Tumblrの魅力:TumblrがブログやSBMはもちろん、いわゆるTumblelogとも違う理由(の序章) http://nakanohajime.wordpress.com/2007/11/01/tumblr1101/ Tumblrの魅力:「面倒くさい」を溶かし、ReBlogという反響装置を持ったTumblrはソーシャルメディアの最新型だ http://nakanohajime.wordpress.com/2007/11/08/tumblr1108/
Tumblrに登録していないユーザはDashboardを覗くことはできず、またReBlogすることもできません。そしてこの2つが、Tumblrを「Tumblelogの最新型」を超えたWebサービスにしている重要な要素です。同時にそれは、SNSやSBMを知っているからといってTumblrの魅力がわかったことにはならない理由なのです。
ビジネスパーソンとしてTumblrに注目している理由
ぼくの普段の仕事は、Webプロデューサーです。
Webの新しい動きを追うのは大好きで、2005年にはあのはてなブックマークより数日だけ早く「Snippy」というソーシャルブックマークをオープンさせたり(残念ながらもうすぐ閉鎖予定) 、2006年には『Web屋の本 Web 2.0,ビジネスサイト2.0,Web屋2.0 』という本で“Web 2.0時代のWeb屋論”を語ってみたりもしました。
普段から、Webのさまざまなトレンドを顧客サイトにどう持ち込むかということをテーマにしています。
Web屋はまずWebにどっぷりハマってみなければならないというのが信条ですが、Tumblrほどハマれるサービスの登場は、ぼくにとっては衝撃でした。ですので、TumblrというWebの前衛、辺境、周縁、まあなんと呼んでもいいのですが、ともかくミクロな領域で起きていることを徹底的に掘り下げることで、ソーシャルソフトウェアやネットコミュニケーションのマクロな層に持って帰れるものがきっとあると思っているのです。
というわけで、これからよろしくお願いします。