ゴスリングが帰ってきた!「Amazon Corretto」登場に全Javaユーザが歓喜する理由

AWSは11月14日(米国時間⁠⁠、OpenJDKの無償ディストリビューション「Amazon Corretto」のプレビュー版を公開しました。Amazon Linux 2、Windows、macOS、さらにはDockerイメージに対応したマルチプラットフォームなビルドとなっており、約5年間のLTS(長期サポート)も提供されます。現時点ではOpenJDK 8をベースにしたCorretto 8がプレビュー公開されており、2019年4月以降にはOpenJDK 11ベースのCorretto 11が登場する予定となっています。

Introducing Amazon Corretto, a No-Cost Distribution of OpenJDK with Long-Term Support | AWS Open Source Blog
AWS Open Source Blogより

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Amazon Corretto ダウンロードページ
URL:https://aws.amazon.com/jp/corretto/

14日の公開直後から全世界のJavaユーザの間で大きな衝撃が走ったCorrettoですが、他のOpenJDKディストリビューションとCorrettoは何が違うのでしょうか。以下、簡単にその理由を挙げてみます。

その1:マルチプラットフォーム、無償、LTS

CorrettoはAWSが提供するOpenJDKビルドですが、AWSクラウドに限らず、オンプレミスやローカルマシン、コンテナの上でも実行することができます。現在プレビュー公開中のCorretto 8でサポートするプラットフォームはAmazon Linux 2、Windows、macOSとなっていますが、GA(一般提供)を予定している2019年第1四半期(1月~3月)にはUbuntuおよびRed Hat Enterprise Linuxにも対応するとのこと。クライアント、サーバともにメジャーなOSはほぼカバーし、しかもすべて無償で提供されるとあれば、Javaユーザ、とくにエンタープライズなシステムでJavaを利用しているユーザにとっては、リプレースを検討したくなるのも当然でしょう。

さらにCorrettoは約5年間のLTSがすでに約束されていることもエンタープライズユーザにとっては大きな魅力であるといえます。AWSの発表によれば、Corretto 8は少なくとも2023年6月まで、Corretto 11は少なくとも2024年8月まで、それぞれセキュリティアップデートが無償で提供されます。それらのアップデートにはOpenJDKコミュニティによる拡張はもちろんのこと、AWSが同社の膨大なサービス提供で培ってきたノウハウも含まれるので、ユーザは非常に高い安定性と信頼性を得られることになります。

また、AWSはJavaSEの互換性についても「Correttoは他のJava SEプラットフォームを完全に置き換えられるように設計している(Java Flight RecorderなどOpenJDKにない機能を使っていない限り⁠⁠」としており、既存のJavaアプリケーションもすべて問題なく動くと強調しています。2018年9月にJava 11がリリースされた際、OracleがJava SEのサポート方針を大きく変更したことを受け、Java界隈ではいまも混乱が続いており、Javaの利用を止めることを検討している企業も少なくありません。そうした全世界のJavaユーザの間にもやもやとくすぶっていた不安を、AWSがCorrettoという絶対的な安心材料を数多く揃えたビルドでもってすべて払拭しようとしているかのような印象すら覚えます。

その2:ドッグフーディング

AWSが提供するサービスは、プレビュー版であってもあらかじめ内部(または先行ユーザの環境)で相当に作り込んでから公開されることがほとんどで、Correttoもそれにならったかたちとなっています。すでにAWSおよびAmazon社内では、何千もの本番環境でCorrettoが使われてきており、十分にミッションクリティカルなワークロードにも耐えうることが証明されたとのこと。現在、AWSでディスティングイッシュドエンジニアとして在籍するジェームス・ゴスリングは「もしAmazonのサービスを使ったことがあるなら、その人はCorrettoを使ったことがあると言ってもいい」とTwitterでコメントしていますが、Amazonという世界最大規模のECサイトで検証済みであることは、ミッションクリティカルなJavaプラットフォームとしての信頼性を強く裏付けています。

その3:Java Father

すでに名前を出しましたが、今回のCorrettoのリリースで、昔からのJavaユーザを驚かせたニュースは"Java Father"ことジェームス・ゴスリング(James Gosling)が表舞台に久々に登場したことではないでしょうか。Correttoのプレビューリリースに寄せて、ゴスリングは「Amazonは長く、深い歴史をJavaとともに歩んできた。我々内部のミッションクリティカルなJavaチームの作品(Corretto)が世の中の人々に使われるようになるかと思うと、本当にわくわくする(Amazon has a long and deep history with Java. I’m thrilled to see the work of our internal mission-critical Java team being made available to the rest of the world⁠⁠」とコメントしており、ゴスリングを含むJavaチームがCorrettoリリースに大きな役割を果たしたことがうかがえます。

ゴスリングは2017年5月にAWSにジョインしたことを発表し、⁠AWS re:Invent 2017」でもセッションを行ったりするなど、AWSのエンジニアとして活動を続けてきましたが、公の場に出ることはそれほど多くありませんでした。しかしCorrettoのアナウンスは、AWSのブログと同時に、ベルギーで開催された開発者向けのカンファレンス「Devoxx」でも行われ、そこではかつての「JavaOne」でよく見かけたTシャツ投げも行われたとのこと。CorrettoとともにゴスリングがJavaの世界にまた帰ってきた ―Javaユーザにとってこれほどうれしいことはないように思えます。

なお、今回を機にゴスリングはソーシャルメディアでの発信の方法を変更し、Twitterによる発信にもチャレンジしてみるとのこと。Correttoの情報とともに、Java Fatherからどんなメッセージが送られてくるのか、こちらも楽しみです。

AWSは11月末に同社最大の年次カンファレンス「AWS re:Invent 2018」を米ラスベガスで開催します。その際に、Correttoおよび同社のJavaに対するアプローチについてあらためて説明がある可能性は高く、その動向にも注目していきたいと思います。

「Java Father」ことJames Gosling(10年前の来日時の姿)
「Java Father」ことJames Gosling(10年前の来日時の姿)

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