2009年3月18日、技術評論社主催のイベント「戦略的Webマーケティングセミナー」が開催されました。今回から3回にわたり、その模様をお届けします。
2009年のWebマーケティングを占う一日
2009年3月18日(水) 、秋葉原UDXギャラリーにて「戦略的Webマーケティングセミナー 」( ( 株)技術評論社主催、( 株)インターウォーブン・ジャパン、( 株)ディバータ協賛)が開かれました。『 Web Site Expert 』を発行してきた経験とノウハウを活かし設定した5つのセッションから、Webをマーケティングへと活用するためのヒントを得ていただこうというものです。
参加者200名を超える中、秋葉原UDXギャラリーにて開催されました。
基調講演:マーケティングROI~最大化を約束するWebマーケティング最前線~国内事例からみる問題解決の糸口や、海外の最新Webマーケティング動向とは?~
基調講演をつとめた、( 株) アイ・エム・ジェイ 山本崇博氏。
13時頃からスタートしたセミナー。その最初を飾るのは、Webマーケティングコンサルタントの山本崇博氏(( 株) アイ・エム・ジェイ )による基調講演、「 マーケティングROI~最大化を約束するWebマーケティング最前線国内事例からみる問題解決の糸口や、海外の最新Webマーケティング動向とは?~」です。「 ミクロかつマクロな視点でお話したい」ということから、前半ではおもにWebマーケティングにおける国内の流れとアメリカの現状、後半がIMJが手がける実例に関しての内容になりました。
1.ここ5年間のwebマーケティングの流れとポイント
まずは『Web Site Expert』の特集記事とIMJの現場で頻出したキーワードからここ5年間のWebマーケティングを概観。創刊前後にIMJへ入社し、サイト制作からマーケティング関連の開発まで手がけてきた方ならではの視点でお話は進みます。
2004、5年のSEOやCMS導入、2006年のSNSやビジネスブログ増加や企業内Web担当者の出現がトピックに。この頃のIMJでは費用対効果を考えるべく「マーケティングROIの最大化」が着目され始めたそう。2007年にはGoogle Anlyticsなどのタグ貼付解析ツールが登場し、効果測定(KPI)の重要性が語られます。IMJでも「行動ターゲティング・メルマガマーケティング・バズマーケティング・エンゲージメントスコア・顧客データマイニング」をキーワードが重要視されたのだとか。2008年に入ると「PR活動にどうWebを使うか」という段階へ。この流れから、Webマーケティングの重要性が高まった理由を、顧客の商品リーチ方法の多様化にあると分析した山本氏。「 Webが持つ「メディア・店舗・ツール」という3側面を認識した上で、それらがどう効果をもたらすかを細かく見ていくこと、またその結果をどう生かすか考えることが重要」と語りました。また今後のマーケティングで重要になる顧客獲得の技術として、「 データベース」が欠かせなくなってきたとの指摘も……。
2.米国のWebマーケティングのトレンドとは
2007年頃から米国で増えてきた「テスト」意識と「データベースマーケティング」を紹介。テストは技術革新やユーザリテラシーの変化など外的要因や環境変化に対応させながら、Webサイトに課せられた長期目標を達成するための新たな手法です。「 自動化、DB設計とプラットフォーム作り」をきちんと行うことで、大きなリニューアルを繰り返さずともゴールが目指せるというのです。
この「テスト」意識で大事なのは「最適化されたページを作るだけでなく、なぜ最適かという理由を知識として社内に蓄積すること」と語る山本氏。「 キャンペーンをきちんとマネジメントできているか、測定ポイントとゴールの評価、プライオリティ、難易度などをつけられているか、を考えなければ意味がない」と力説します。今後の費用対効果が出せるサイト設計には、この詳細なテストが必須。「 成功の法則はない」状況下で、経験・知識の蓄積は重要なポイントになりつつあるのです。また「データベースマーケティング」で興味深いのは、データ内容が従来の住所や性別などのパーソナリティに加え、動画やブログ記事などもコンテンツとして認識されつつあるということ。「 自社にとって何がデータ資産になるのかを考えることが必要」と強調しつつ、Webマーケティングを行う意義は、Web上で収集したデータを活かして会社全体のビジネスをどう進めたいのかを体系化して考えて初めて意味がある、と主張しました。
3.事例紹介
2008年にリニューアルを行ったヴィレッジヴァンガード のWebサイトを元に、Webマーケティングの運用例をご紹介いただきました。ROI最大化を目指し仕入れシステムからコールセンターまでを手がけた本サイトで、主眼に置かれたポイントは「集客・購入率・客単価」 。「 売り上げ=訪問数×購買率×客単価」を達成するため、キーワード設定を絡めたSEOや商品リーチへの工夫、テストによるアップセルの自動化などさまざまな施策が取り入れられており、1で語られた理想が具体的に活かされている様子がわかりました。
4.まとめ
山本氏のプレゼンテーションでは、 手法の解説と事例をうまく織り交ぜ、 かなり実践的なノウハウが公開されました。
「Webマーケティングには成功の法則はない」からこそ、経験則を貯めたナレッジシート作りや「ユーザの行動」という新たな資産を活かしたユーザ像の把握などが大切。効果的な施策を施せば成功に近づく可能性も上がるはず、と語る山本氏。「 「 目標を決め、ターゲットを決め、サイトを作る」という考え方は2004年から変わりませんが、そこにSEO施策といった「点」をいかに結んで来年に使える「線」にしていくか。ツール導入も考慮しつつ、Webディレクターはその点を提案していくべきだと思います」と基調講演をまとめました。
セッション1:Webサイト構築基盤導入の意義とその投資対効果
14時からは本イベントの協賛企業、インターウォーブン・ジャパン( 株) 営業部部長の鈴木望氏によるセッション1「インターウォーブン・ジャパン セッション」が行われました。テーマは「Webサイト構築基盤導入の意義とその投資対効果」です。世界で4700社、日本では製造業や交通など130社の採用実績を持つ同社のソフトウェア。その導入の際に挙げられるという問題と原因、ツール導入による効果についてお話いただきました。
インターウォーブン・ジャパン( 株) 営業部部長の鈴木望氏。同社は本セミナーのスポンサーでもあります。
社内でCMS導入を説得するために
昨今の不況の中で増えているのが「CMS導入したいが説得できない」という問題。経営層に投資に対する理解がないことやROI計算するアイデアがないことなどがある中で、最大の問題は「経営層・管理職・現場で目的や利益に対する考え方が食い違っていること」と語る鈴木氏。過去、CMS導入の理由は管理面の強化などが中心でしたが、今やそれだけでは意義として通りづらくなっているのが現状だそう。その上で今押すべきポイントが「コンバージョンレートの改善やクリエイティブ最適化など、売り上げ向上のための課題」であることを主張。
その中でも「コンバージョン率を上げる」ために必要な「PV増大施策、訪問後・目的達成のための施策、優良顧客に育てるための施策」の3要素。実は、異なるニーズや細分化・変化する市場や消費者に対応しきれず、これらがうまく繋がっていない企業が多いそうです。この状況を改善するツールとして、複数のセグメントやターゲティングされた顧客に対して動的コンテンツ配信をCMSで行える「LiveSite」を紹介。サイト・コンテンツ内にある属性情報がセグメント定義を柔軟に進めるため重要なこと、またそのセグメント定義をいかに重要視しているかを自社ツールを例にご説明いただきました。
クリエイティブの最適化
一方「クリエイティブの最適化」に関してはMVT(multi-variable test:多変量テスト)ツールの「Optimost」を紹介。顧客をページへ導く上でのテストの重要性と、そこに「多変量テスト」がどのような効果をもたらすかの解説が行われました。トレンドや過去の分析結果など、仮説や過去実績を頼りにしがちだったクリエイティブの判断。またテストをしているとしても、代表的なABテストなどでは複数箇所を組み合わせると効果判断が難しくなる点や時間がかかりすぎる点など扱いづらさが問題となっていました。こうしたツールを導入することで、各モジュールの相互関連性も考慮したクリエイティブ制作を可能にすることがわかり、興味深く聞く参加者が多く見受けられました。こうしたテストツールは、EC企業でなくとも、自社サイトの価値を測定する指標にも応用できるという鈴木氏。販売製品をネットでチェックしているユーザ数、その中で自社サイトを参考に購買しているユーザ数を分析し各製品のネットプロモーションの価値を算出している企業の例は、自社サイトの影響力からKPIを決めることが購買行動モデルや導線も考えたWebサイトの制作に繋がることを明示してくれました。ECサイトのあるなしに関わらず、導入サイトにコンバージョン率の大きな変化が現れたことや結果を定量的な数値として提出できるという意見など、ベンダー側にとっても興味深い反響があるそうです。
鈴木氏は、戦略的なWebマーケティングを行う上で、基盤となるプラットフォームの必要性、その具体的なツールとして大規模CMSの実用性について説明しました。
今後の導入を検討している企業の参考に
顧客ニーズに柔軟に対応するためのターゲティング&ページ範囲の拡大を実現し、クリエイティブ最適化によりコンバージョン率を最大化する「LiveSite」や「Optimost」 。マーケティングを成功に導く3要素をスムーズ繋ぐツールの解説は、これから導入を検討している企業に大きな参考となったことでしょう。