2012年9月15日、大田区産業プラザPio(東京・蒲田)にてWordCamp Tokyo 2012が開催されました。ここでは、その模様をお届けします。
WordPressの今
オープニングセッションを務めたのは、米AutomatticでHappiness Engineerとして活躍するマクラケン直子氏。「WordPressの今」と題したセッションを行いました。
全世界のトップ100万サイトのうち、54.4%がWordPress
まず、現時点でのWordPressのシェアについて紹介されました。おもなCMSツールの中で、WordPressは54%のシェアを獲得しているとのこと(他、Joomla:9%、Drupal7%、vBulletin:4%、Blogger.com:3%、その他)。
さらに、サイト規模トップ100万サイトのうち54.4%、トップ1,000サイトのうち33.9%のシェアを獲得しており、エンタープライズ用途からコンシューマ向けまで幅広く利用されていることが紹介されました。
WordPressのエコシステム
ここ日本の状況に関しては、2011年から2012年で15.5→16.8%とシェアが増加した他、各種ホスティングサービスに加えて、Windows Azure、Amazon Web Services、ニフティクラウドサービス C4SAといったクラウドホスティングとの連携、10月発売の「ホームページビルダー17」での完全対応、各種書籍の刊行など、多くのユーザに浸透していることがアピールされました。
マクラケン直子氏は「今後は、開発者や企業ユースなどを含めて、WordPressを中心としたエコシステムの構築が重要になっていくと思います」と、単なるブログツール・CMSツールとしてのWordPressから、さらに一歩進んだプラットフォームとしてのWordPress、エコシステムとしてのWordPressに向かっていることがうかがえました。
3.5のリリースは2012年12月5日予定
この他、WordPressの未来というテーマにて、スマートフォンやスマートタブレットなどのモバイル対応強化、新テーマの開発などについても触れ、次バージョン3.5のリリースが2012年12月5日に予定されていることを発表し、セッションを締めくくりました。
マルチデバイス時代の WordPress 表示最適化
続いて、プライム・ストラテジー株式会社 大曲仁氏による「マルチデバイス時代の WordPress 表示最適化」と題したセッションが行われました。
さまざまな手法がある
大曲氏は、最近のデバイスの多様化に向けて作り手がどうすべきか?という課題に対し、いくつかの解決方法を提示しました。
- レスポンシブ・ウェブ・デザイン
- UA判別による表示切替
- デバイス専用サイト
最近注目を集めるレスポンシブ・ウェブ・デザインについては「制約は多いものの、CSSフレームワークなどを用いることで、比較的少ない予算で導入できる点」をメリットとし、WordPressでの導入方法について
- レスポンシブ対応テーマの利用(Twenty Eleven、Twenty Twelveなど)
- レスポンシブ対応CSSフレームワークの利用(Twitter Bootstrap、ingridなど)
といった方法を挙げ、テーマの場合は子テーマとして利用することで独自性が挙げられるといったTipsを紹介しました。
これら3つについては、デバイス専用サイトを作ることが最適化度が高い反面、コストがかさむ、レスポンシブ・ウェブ・デザインを心がけることでコストを抑え、ある程度の最適化が行える点などの比較をし、状況にあった方法を選ぶことが大切なことを伝えました。そして、WordPressという観点で観た場合は、前述のように、レスポンシブ対応テーマを使ったり、モバイル対応プラグインを使うことで導入コストを下げることができ、とくに有効とまとめました。
参加型ハンズオンも
メインのセッション以外にも、参加型のハンズオン(事前申込制)も開催されています。今回は、オープニングセッションでマクラケン直子氏も紹介していた、クラウドホスティングでのWordPress利用や、WordPress構築に関するものが行われています。
Windows Azure + WordPress ハンズオン
最初のハンズオンは、WordPressアジュール部の面々が講師となって行われた「Windows Azure + WordPress ハンズオン」。
「WordPressをクラウドに引越しスペシャル」というテーマで、共有サーバに見立てたローカル環境のWordPressを「Windows Azure」に移行して運用する方法をハンズオン形式で解説されました。
AWS + WordPress 高速化ハンズオン
2つ目は、Amazon Web Services(AWS)を利用したハンズオンです。AWSエバンジェリスト堀内康宏氏をはじめとしたメンバーが、AWSの利用方法から丁寧な解説を行いました。
AWSそのものやOSから下のミドルウェアレイヤでのチューニング、さらにフロントエンドのチューニングまで実践的な話題を扱いました。
午後も充実したWordCamp
画像のアップロード&アイキャッチ画像をしっかり理解しよう!
午後もたくさんのセッションが行われています。まず、福岡で活躍するWebデザイナー山口有由希氏からは「画像のアップロード&アイキャッチ画像をしっかり理解しよう!」と題したプレゼンテーションが行われました。
WordPressでサイトを運営するとき、最初につまずくポイントの1つが画像の扱いです。山口氏自身も、使い始めたころはいろいろと試行錯誤したそう。その経験を元に、
- 画像ファイル保存先の指定方法
- サイズの指定方法
- テンプレートからの呼び出し方
など、すぐに使えるノウハウを、実際のコードを交えながら紹介しました。
WordPressのテーマ編集時に覚えておきたいID名やClass名
午前のトラック1の司会も務めていたWeb制作集団「Mighty Works」代表 豊田有氏は「WordPressのテーマ編集時に覚えておきたいID名やClass名」というテーマで、新たにテーマを制作するときに役立つ情報を取り上げました。
WordPressで新たにテーマを制作する場合、テーマの記述方法はもちろん、WordPress本体が制御するスタイルに関する知識が求められます。このセッションでは、自身で制作したテーマを含め、それらをきちんと管理し、効果的に表示させるために必要なIDやClass名にフォーカスを当てた解説が行われました。
まさに文化祭の雰囲気――和気あいあいの展示ブース
1日限定ジュンク堂書店
ジュンク堂書店からは、1日の臨時店舗が出店されました。各出版社から刊行されているWordPress関連書籍、あるいはスピーカーの方たちの著書を中心とした販売が行われ、たくさんの来場者が足を止め、購入していました。また、午後には、著者陣がブースに立ち寄り、臨時サイン会も行われました。
クラウドソーシングを活かしたジョブマッチング「Job-Hub」
株式会社パソナテックのブースでは、クラウドソーシングを活かしたジョブマッチング「Job-Hub」を紹介。Job-Hubは、WordPressサイト構築・製作案件でのマッチングはもちろん、自分のスキルと仕事をマッチングさせ、働くことをつなげ広げられるサービスとして展開されているものです。
北海道から参戦!SaCSSブース
北は北海道・札幌から、 SaCSSのメンバーがブースを出展しました。
SaCSSは、札幌のWebデザイナー・コーダーのためのセミナー・勉強会を主催している団体で、今回は具体的な何かを展示するのではなく「気軽にお話しましょう」というコンセプトで、交流を楽しめるブースとして参加していました。これも、コンセプトである文化祭にマッチした内容と言えます。
畳の上でアンカンファレンス
セッションやハンズオンに加えて、アンカンファレンスも行われていました。今回は、
- 午前:交流を目的としたアンカンファレンス
- 午後:通常アンカンファレンス
という2つに分けて行われました。
WordCampでは懇親会も自発的に!
今回、イベント運営側からの公式な懇親会は用意されませんでした。代わりに、入口付近に掲示板が用意され、そこに食べたい場所・呑みたい場所・時間などを記入したメモを貼り、つながっていくという「自発的な懇親会」を生み出す工夫がなされていたのも、今回のWordCampならではの特徴でした。
最後はPHP Conference 2012と合同のLT大会
イベントの最後は、PHP Conference 2012との合同LT大会が行われました。
投票1位はpaperboy&co.の射的遊技場
LT前に出展ブースコンテストの表彰が行われました。参加者からの投票1位は、株式会社paperboy&co.が出店した射的遊技場。割り箸鉄砲を使った射的でたくさんの参加者が楽しみ、晴れて投票1位となりました。
その他、1日限定ジュンク堂書店やWordCampスタッフブースが受賞しました。
〆はLT、司会はおなじみ法林浩之氏
いよいよ〆のLT(Lightning Talks)です。司会を務めるのは、おなじみの日本UNIXユーザ会の法林浩之氏。
今回、WordCamp/PHP Conference、それぞれが交互にLTを行うスタイルで行われ、限られた時間の中、各々がアツいLTを行いました。