11月18日、
座談会のスピーカーは以下の6名です。
- モデレーター 林千晶氏
(ロフトワーク 取締役) - 日経ネットマーケティング 編集長 渡辺博則氏
(日経BP) - Web担当者forum 編集長 安田英久氏
(インプレスビジネスメディア) - ウェブエキスパート 諏訪光洋氏
(ロフトワーク 代表取締役) - Web Site Expert 編集長 馮富久
(技術評論社) - Web Designing 編集長 馬場静樹氏
(毎日コミュニケーションズ)
「2009年の注目!」を披露しつつ、自己紹介
- ロフトワーク 林千晶氏
今日の座談会は、
Web関連の主要なメディアの編集長に集まっていただいて、 「Web業界の2009年を大予測する」 というものです。最初は各メディアの皆さまに、 「今注目しているテーマ (サービス)」について自己紹介も兼ねて、 お話いただきたいと思います。 - 日経ネットマーケティング 渡辺博則氏
『日経ネットマーケティング』 は月刊誌で、 11月号で創刊1周年です。テーマは 「ネットと携帯で、 売れる仕組みをつくる」 というものです。今日はWebの話題ですが、 どちらかというと 「マーケティング全体の中のネットマーケティング」 という捉え方をしています。読者層は、 企業のマーケッターさんたち。 「昔からWebをやってました」 といった方、 事業部のマーケッター出身の人たちをターゲットとしています。そして 「紙・ イベント・ Webサイトの三つ巴で情報提供をすることで、 「広告にはあまり依存せずに、 会費的な枠組の中でやっていきたい」 というところからスタートしています。 さて、
「注目のテーマ」 ですが、 われわれが見ている 「企業のWebサイトの使い方はどうなっているか?」 という観点から言うと、 「2009年は、 よりメディア化が進んでいく」 というのが、 1つあります。その上で、 「おもてなし」 という言葉が去年あたりからすごく流行っていますが、 「サイトを訪れた人に、 いかに幸せになってもらうか?」 とか、 「いかに心の満足感を得てもらうか?」 といったことが焦点になっています。ですからWebサイトもだんだん、 目的にしても、 作り方にしても、 変わっていきそうだなと思っています。 - Web担当者forum 安田英久氏
『Web担当者forum』 (Web担) は、 以前は雑誌も発行していましたが、 現在は定期的な雑誌発行はいったん止めて、 Webサイトを中心に、 イベントやセミナーなどを組み合わせてメディアを展開しています。 「Webサイト」 と 「マーケティング」 という2つの軸があります。 今注目のテーマは……やっぱり
「ユーザ中心設計」 かな。一昔前には 「やっぱりユーザビリティって大切だね」 ということでしたが、 ユーザビリティだけじゃなく、 企画そのもの、 物事の考え方とかも、 一昔前のマスマーケティングの考え方ではたち行かなくなってきています。ユーザなり顧客なりを 「マス」 という固まりではなくて、 1人1人の人間に対して、 「その人がどういうニーズを持っているのか?」 「どういう背景があるのか?」、 さらには 「顕在化していないニーズは何か?」 みたいなところまで、 コンテンツや、 施策のプランニングをはじめ、 サポートの仕方も含めて設計していく必要がある。そこに、 ユーザビリティとか、 ペルソナとか、 そういう話が入ってきます。──媒体をやってて、 いちばん今気になっているのは、 そこですね。 - ウェブエキスパート 諏訪光洋氏
今日は
『ウェブエキスパート』 (※) の責任者として、 この座談会を開催させていただいています。そもそもどうして 『WebEXP』 を作ったか。ロフトワークという企業は制作を主体にしていますが、 「もはや1社で何かを作る時代ではない」 ということです。われわれは競合している会社と一緒に制作することが増えいてますし、 システム会社やマーケティングの会社など、 いろんな会社と一緒に作るケースがすごく増えている。そのあたりに関して、 「うまく、 リアルな形で結びつけられるメディアを作りたい」 というところからスタートしました。 そこで、
今注目のトピックスは……僕がこの間 「おっ!」 と思ったのが、 テレビ東京とテレビ朝日、 民放キー局2社が、 赤字決算を出したことです。相対的に言ってテレビの力が非常に落ちてきていると思います。 「Webが主流のメディアになりつつあるな」 というのを、 キー局2つが赤字決算を出したというニュースに感じました。ブランド構築というものに、 テレビが果たしている役割というのが、 極端に減ってきている。Webの果たしていく役割が、 今後ますます大きくなってくるでしょう。2009年は 「メディアの主流としてWebが出ていく年」 に、 不況だからこそなっていくのではないかと思っています。 - ※)
- 『ウェブエキスパート』:企業のWebエキスパートのための情報ポータルサイト。Web制作・
開発に欠かせないCMS、 SEO、 ECなどの製品やサービス情報、 イベント情報、 導入事例などを掲載。 - Web Site Expert 馮富久
『Web Site Expert』 は、 2004年9月に創刊、 5年目を迎えました。Webの制作・ デザインなどについて、 リファレンスやTipsというよりは、 「人」 に注目して、 読み物的な要素を多くもりこみながら掲載しています。概念的な部分ですとか、 人の持っている温度みたいなものをお伝えしていきたいと考えています。 今注目しているのはサイトよりはサービスで、
動画サービス、 とくに生中継、 ライブ系がすごく増えていると思うんです。これまでWebというものは、 ライブとは相反するというか 「いつでもどこでも見たいときに見られる」 ものでした。でも近ごろは、 ニコニコ動画がライブをやったり、 Ustream. tvとかStickamというのが出てきて、 セミッターやキッズプレートチャンネルのようにそれを活用した配信が行われています。その場を共有した人たちに対してユーザエクスペリエンスを高めていきつつ、 そこで配信した動画をアーカイブとして、 コンテンツの形で残していくという、 まさにクロスの展開が実現できてきていると思うんです。 このように、
Webが、 その場の臨場感を伝えられるメディアとしても認知されてきました。その1つの理由はインフラ。10年前のインターネットではありえなかった仕組みが、 今はもう普通に家庭に普及しているし、 それこそ携帯でも見られます。このあたりが2009年に、 またさらに強まっていくのではないかと思います。 もう1つ気になっているのが、
「日本産、 日本発のWebサービス」 です。mixiをはじめ、 徐々に出てきていますが、 たとえば楽天やYahoo! JAPANのような大規模サイトでも 「勝負できるものが増えてきた」 と思います。日本発の情報やテクノロジーが盛り上がっていくとおもしろいなと思っていて、 2009年はこのあたりに注目していきたいと思っています。 - Web Designing 馬場静樹氏
『Web Designing』 は、 2001年に創刊しました。主にWebの受託制作をしているクリエイターの方々に向けた雑誌で、 デザイン的要素を強くしていますが、 Web制作に関する全般的な部分を取り上げています。 皆さんがおっしゃっていたこととちょっと違う、
技術的な話をすると、 2009年はやっぱり2008年の延長上にしかないと思うのです。2008年、 明らかに盛り上がったのは、 ActionScript 3. 0を使った新しい開発コミュニティです。Flashを作るフローが変わってきているし、 それによって作られるものや、 参加できるクリエイターの種類や質も変わってきている。これが大きな影響を与えるのではないかと思っています。ActionScript Libraryの世界でも、 日本人のエンジニアの方で、 突出した技術力やアイデアを持ってる方がいらっしゃるので、 そのあたりに注目していきたいです。 たまたま先週、
広告業界の方と話していたのですが、 景気の後退が進む中で、 「これからどうしたらいいんだ?」 とみたいなところが、 Webの業界の人たちとぜんぜん違うと感じました。広告制作業界でも、 とくに紙媒体中心の方々と一緒だったんですけどね。 2003~2004年ぐらいまで、
Webは広告業界の中でも下に見られていた。 「好きなやつがやってればよくて…お金にならなくて…」 というような世界でしたが、 今は 「クリエイティブとしておもしろいのは、 やっぱりWebだよな!」 という空気になっている気がします。そういう意味でも、 「2009年は何が起るんだろう?」 という気持ちがすごくあります。大きなトレンドというより、 それをベースとしてクリエイターさんたちがどういうものを作ってくるかということに、 非常に興味があります。
残るサービス、残らないサービス
- ロフトワーク 林千晶氏
前のドットコムバブルがはじけたとき
(2000年ごろ)、 IT投資がすごく様変わりしたようです。そこで、 今回の不況においては、 「本当に役に立つサービスを、 Webを活用して提供しないと、 この不況は生き残れない。だから偽物のWebサービスは要らない。本当に成果の出るWebサービスだけが欲しい」 というふうになってきています。 「取捨選択がすごい厳しくなってきた」 という話をいろんなところで聞きます。少し前までは、 携帯もWebも 「どんどん投資する」 ということで、 かなりのお金が流れてきたと思いますが、 これからは 「本当に生き残っていくサービスというのはどんなサービスか?」 見極める必要があると思います。 そこで今日は、
「1~2年前とてももてはやされたけど、 たいしたインパクトにならないで終わったものは何?」 という話をできればと思っています。たとえば 「Second Lifeってどう思う?」 だったりとか (笑)、 「これってちょっと外れたよね」、 「こういうのはこれから厳しいのでは」 など何かありますか? - Web担当者forum 安田英久氏
一時期、
企業が積極的にSecond Lifeに関連した事業を発表していましたが、 あれは 「メディアが取り上げてくれるから」 に過ぎません。企業の担当者は、 「またニュースとして取り上げてくれるから」 やるわけです。 - Web Site Expert 馮富久
わかりやすい宣伝にはなりますからね。
- ロフトワーク 林千晶氏
でもそれを取り上げるのは、
皆さんのようなメディアでは? - Web担当者forum 安田英久氏
もっと一般紙です。われわれのような専門媒体ではなくて、
一般の人が読むような新聞で取り上げてくれるから。 - Web Site Expert 馮富久
朝のテレビ番組とかでも、
よく出てましたね。ただ、 結果として見るとユーザがついてこれなかったんだと思うんです。マシンスペックも高いものが必要だったりして。あと3Dの感覚が、 日本人にはあまり合わない気がしています。 「アメリカっぽい動き」 をしている印象があって、 中には酔っちゃう人もいて。ユーザエクスペリエンスでみても、 キーボード操作のようなところに使いづらい部分があったように思います。 - Web担当者forum 安田英久氏
Second Lifeみたいな
「なんでもできる」 のって、 日本人には合わないですよ。オンラインゲームにたとえていうと、 FFオンラインは日本で受けるけど、 Ultima Online (ウルティマオンライン) とかEverQuest (エバークエスト) は大ヒットしないのと同じなんですね。ファイナルファンタジーのオンラインゲーム 「FFオンライン」 は、 用意されたシナリオで進んでいきますので、 日本人によく受けましたよね。でも、 同じオンラインゲームでもUltima Onlineや、 EverQuestって、 その世界に放り込まれて、 「さあ好きなことをしてください!」 というスタイルなので、 日本人は、 何をやればいいかわからない。日本は五七五の文化。制約の中でこそ大きく実力を発揮できる。ある決まった枠の中で日本人はすごく活躍できるんですけど、 なんでもしてくださいと言われたら無理なんです。Second Lifeって、 「好きなことができますよ」 だったんですよね。 話題をポジティブなほうに変えましょう、
行動ネットワーキングとか、 行動マーケティングといった、 「行動情報をトラッキングするネットワーク」 というのは、 着実に広まっていますし、 そこの価値はどんどん上がっていくでしょうね。たとえばYahoo!のインタレストマッチマイクロアドとかもそうですし。 現在のアクセス解析などのトラッキングには限界があります。自分の把握できるデータしか把握できない。他のところで何をやっているか? どの媒体でどういう接触していたの? というのがわからない。そういうデータまで含めて、
今まで見えてなかったことが見えてくる行動ターゲティングネットワークって、 すごいなと思います。 - Web Site Expert 馮富久
ユーザの行動を見るという点で言うと、
OpenIDとかでも、 IDを統一してユーザの利便性を高めることに加えて、 今後はビジネス的・ マーケティング的な使い方というのも、 広まっていく可能性があるように思います。 - Web担当者forum 安田英久氏
OpenIDって、
流行るかな? - Web Site Expert 馮富久
まだOpenIDは、
技術的に実装が難しかったり……OpenID 2. 0になってようやくセキュリティの部分とかがきちんとしてきた思うんですけど、 大規模サイトで 「自分のところだけで通用する形」 ではなく、 他のサービスでもちゃんと使えるようにしていかないと、 意味がありません。でも現状は、 OpenIDプロバイダーになってるところって、 自分のサービスで閉じているところが多い。そこが 「他のサービスにも、 情報・ データを出して行きますよ」 というようになっていけば、 自然とみんな使うようになっていくのではないかなと思うんです。 その中で、
リクルートが作っている 「ATND」 や「shiori. cc」 というサービスは、 OpenIDを実装していますが、 リクルートのほうに持ってくるというよりは、 「他のサービスに入ってください」 というスタイルなので、 ああいう取組みが増えていくと、 おもしろくなっていくのではないかと思います。 「ユーザの囲い込み」 と 「ユーザを増やす」 というのは、 基本的には相反しますが、 ユーザが増えていかない限り、 頭打ちになってしまいます。このあたりは大規模サイトにぜひがんばってもらいたいし、 クリエイターもおもしろいサイトを作っていけばそこに流入してくると思うので、 ここもひとつ、 2009年には注目していたいと思います。 - Web担当者forum 安田英久氏
でも、
企業がアカウント登録してもらうのって、 「何らかの個人情報が欲しいから」 ですから、 今のOpenIDではダメですよね。 - Web Site Expert 馮富久
そうですね。最近、
LinkedInのようにネット上にプロフィールだけ溜めておくサービスも増えています。Yahoo! JAPANが (人脈管理・ 人脈拡大を行う) シーユー (CU) をはじめたり。あれは日本の文化にぴったりだと思います。名刺をネットに置いておけます。このぐらいのシンプルなID登録が普及すればいいと思うんです。ただ、先ほどの安田さんのお話にもありましたが、 「じゃあCUに入って、 その先どうすればいいか?」 というと、 たぶん考えにくいんですよね。 「何かをできます」 という機能がない限り、 人が増えないとところが、 けっこうジレンマで。たぶんあれって、 ただ登録しておいて、 つながればいい。きっかけ作りだけのはずなんですけど、 何か皆さん求めちゃう部分て、 やっぱ強いのかな、 と。 - ウェブエキスパート 諏訪光洋氏
OpenIDの中で、
「IDをキーにした、 シンクロ・ 同期性」 のような部分は、 少しおもしろいと思っています。Plaxoは、 サービスとして典型的だと思いますが、 IDがあって、 そこでつながっている。Facebookは、 そこにアプリケーションがあり、 コンテキストがあり、 コンテンツがあり、 それらがつながっているけれど、 Plaxoにはそれがなくて、 単にIDに紐が付いた同期性みたいなものを持たせているだけ。 携帯やネットブックなど端末が徐々に増えてきているときに、
「同期性をどう持たせるのか?」 というのは、 重要になってきます。SaaSが流行ってきている理由も、 そこらへんにあると思います。Gmailとか、 Google カレンダーをみんなが使うというのは、 「同期性が必要」 とあまり考えなくてすむからではないかと思います。ローカルアプリから外れていますから。 ちょっと話を変えますが、
僕が 「栄枯盛衰」 だと思うのは、 ガジェット・ ウィジェット。ガジェットみたいなものを、 プロモーションで配布するというようなことが、 一時期とても流行り、 「今後もどんどん高度化していくのでは?」 という話もありました。 - ロフトワーク 林千晶氏
ガジェットを作る人にはクリエイターさんが多いと思います。いろんなアートが含まれている中で……馬場さん、
何かご意見ありますか? - Web Designing 馬場静樹氏
このような技術が出てきて、
いろいろなものが作れるようになったのは、 作り手にとっては単純に楽しいでしょうね。たとえば 「JavaScriptだけでこういうのが作れる」 という発見や、 まだ誰も作ったことのないガジェットにいち早く手を着けて、 「こんなものを作ってみた!」 ということを示せる喜びはあるでしょうね。でもそれ以上のものでは……というものがすごく多いのも確かですよね。 - ウェブエキスパート 諏訪光洋氏
ポコポコっと出てきて、
「どこ行ったんだろうな?」 って思うのですが、 やはり出てきたものは、 必ず連続性があるといます。たとえば、 先ほど話に出てきたJavaScriptがどんどん高度化しているということや、 XMLのデータ保持。これがびっくりするぐらい汎用化されつつある。2~3年前までXMLを書ける技術者を見つけるのは難しかったけれど、 今は比較的見つけやすい。今後XMLを書ける人がもっと増えてくるだろうと思います。JavaScriptにしても、 かなり高度なことができるようになってきている。 たとえば、
あのときにガジェットを、 一生懸命作っていた技術者は、 きっとJavaScriptやXMLの限界に迫ろうとしていたところもあって、 それが違うところで生きているという意味で、 連続性はあると思いますね。 - ロフトワーク 林千晶氏
Second Lifeにしてもそうですね。iSummitの会議をクロアチアで開催した時に、
クロアチアに来られなかった人たちがSecondLife上で集まってきて、 Lawrence Lessigの講演をストリーミング配信しました。これは、 先ほど馮さんが 「インターネットはこれまでそのままアーカイブがメリットだったけれど、 実はライブで、 その時を共有することがネットでも体験できるようになってきている」 とおっしゃっていたことと同じだと思うのです。過去にSecond Lifeみたいなものもあったから、 そういう流れになってきているのではないかな、 という気もします。 (Second Lifeのアバターは違和感がありましたが) アバターにしても、 携帯ではものすごく流行っているわけです。アバターは、 1回 「やだよね」 といわれて失敗したとしても、 それは意味のないことではなく、 今度は携帯で流行ったりする。次につながって行くという意味では、 Second Lifeも、 つながっているのではないかと思うのですが、 安田さんいかがですか? - Web担当者forum 安田英久氏
ネットワークインフラとしてのインターネットの話と、
Webの話とは、 別に考えたほうがいいですね、 ネットワークとしてのインターネットを使ったリアルタイムのやり取りなんていうのは、 大昔からあるわけです。そういうのは、 別に考えた方がいい。たとえばSecondLifeみたいなものって、 3Dのチャットコミュニケーションという面だけでいえば、 1996年ごろにも、 商社が引っ張ってきた 「Worlds Chat/ J」 という3Dチャットがありました。そういう意味では同じことを繰り返しているような気もします。 - ロフトワーク 林千晶氏
何回も何回もチャレンジしているのは、
何かに惹かれるからでは? - Web担当者forum 安田英久氏
人はコミュニケーションを取りたがる生き物だというのは確かです。ただその舞台として、
どういう形を整えるのか? 理想型というのがまだ生まれてないわけじゃないですか。 またネットゲームの話題になりますが、
ネットゲームって、 慣れていくと、 チャットゲームになるんです。で、 コミュニティができあがってるネットゲームほど、 長く続くんです。そこをどう実装するのかというのは、 やっぱりまだ試行錯誤の段階です。そこを 「連続性」 と言われるのかもしれないですが、 まだまだ見えてこない。 でもそれは、
時間の流れとともに、 社会が変わっていけば違うし、 コミュニティ、 文化圏、 社会が違えば、 その前提となるものも違ってくるので、 「正解の形」 なんていうのはないです。 「2ちゃんねる」 は、 日本には合ってましたよね。 ニコ動! 初音ミク! DENPA!
- ロフトワーク 林千晶氏
ニコニコ動画は、
世界に通用する文化なんでしょうか? - Web Site Expert 馮富久
僕はハマってはいないですけど、
YouTubeといちばん違うところはセリフですよね。時間軸とともにコメントが付けられるところ。別にみんなコンテンツだけを見たいわけではなく、 そのコンテンツの、 特定の部分に対するみんなの反応が楽しくて見ちゃうと思うんです。YouTubeみたいに、 過去のデータを見るのが純粋に目的になっているのとは違う。そう考えるとアメリカでは受けないような気もします。世界で受けるサービスとは、 ちょっと違うかな。ほんと日本向けの……言葉は悪いですけど、 暇つぶしができるメディアだと思うんですね。ながらで見ても楽しいですし。 - ロフトワーク 林千晶氏
ニコニコ動画は、
日本のサイトでアクセスランキングの必ず上位に入っていますよね。 先週末、
「DENPA というイベントがありました。(電刃)」 「アニメとファッションとエレクトロの融合」 をテーマにしたイベントで、 この様子をYouTubeで見ると、 すごく盛り上がっている。初音ミク的な要素から、 2ちゃんねる、 ニコニコ動画、 コスプレ、 クラブカルチャーの要素がぜんぶ混ざった、 すごいイベントになっています。海外からは 「こういう日本がすごい素敵!」 と見られている。先日デジタルガレージ主催の 「The New Context Conference2008」 で海外から来た人たちも、 何が欲しいか訊くと、 『NARUTO‐ナルト』 だったり、 初音ミクだったり。 「日本はワンダフルだ!」 と言います。 今日のメディアの方々があまり
「そうだよね!」 と言わないのは、 お金を持っている層には今のところリーチしてないためだからだと思います。だから 『日経ネットマーケティング』 にも 『Web担当者forum』 にもまだ出ていないけど、 この人たちがもう少し年をとってきたら、 彼らもお金を持つ世代になるのではないでしょうか? このカルチャーが残ったときに、 将来的にはどういう影響が出てくるのかというのは、 クリエイターに近い馬場さんはどう思われますか? - Web Designing 馬場静樹氏
1990年代の話をすれば、
パソコンがそれだったでしょうし、 1990年代の末ぐらいからはケータイだったのでしょうが、 それぞれの時代で 「ケータイ世代がカルチャーを変える」 といった話は常にあり、 またそのことが実際に影響ない、 ことも絶対にないと思います。ただ、 その影響が直接的なものかというと、 それはわからない。 大前提として、
Webってすごく広ーいプラットフォームじゃないですか、 そこの中で 「傾向としてこれはこうだ」 というのは、 なかなか成立しない。むしろ成立しないのがWebじゃないかと思うんですね。たとえば今すごく流行っているものがある。それは廃れていくかもしれないけれども、 一過性だからという話ではなくて、 層として、 幅として広がっていく世界だろうと思うんです。それぞれ微妙に関係し合っている、 という世界かなと思います。 - Web担当者forum 安田英久氏
サービス全般として
「どれが流行るか?」 とかいう話をしたときって、 「日本人」 というマスとして、 または 「ネットユーザ」 という固まりとしてとらえています。でも実際はそこに、 社会人もいる、 おっさんもいる、 主婦もいる、 学生もいる、 フリーターもいる。だから 「どのセグメントの、 どのニーズに対して、 どういうサービスを提供すれば受けるのか?」 というような話をして、 考えるべきです。企業がアクションをするなら、 「そこに対する投資を、 どういう形で回収するか?」 まで設計できてないと、 単なる子どもの遊びと同じなんですよ。 - ロフトワーク 林千晶氏
携帯ビジネスを考えたとき、
今の10代20代を動かすことが必須になってきます。彼らはモバゲーで占いにお金を使い、 アバターを買い、 そしてちょっとしたコミュニケーションのために、 大きなお金を落としていて、 それが何百億円にもなっているわけです。 携帯とWebはとてもカルチャーが異なっていると思っているのですが、
両方をターゲットにしたときに、 どんな接点が生まれるのでしょうか? そのあたりの難しさは? 高校生や主婦 「も」 ターゲットに入れたマーケティング戦略というのが、 事例として出てくるのでしょうか? - 日経ネットマーケティング 渡辺博則氏
出てきてますね。
「携帯とパソコンでは、 ユーザ層が違う」 ということは、 みんな言ってることですね。サブカルチャー的なものでいうと、 「東京ガールズコレクション」 のように、リアルなイベントとからめて携帯から商品を購入する、 という仕組みはすでにあって、 今のカルチャー的なものって、 実は携帯の世界の方が早くて、 先に花開いていくかもしれません。 Webとリアルなイベントをからめた形というのは、
「まだちょっと場が小さいかな」 という感じがします。イベントがもっと大きくなって、 携帯とくっついた方が、 ビジネス的に成功する確率は高まっていくでしょう。 携帯とパソコンの違いとして、
マクドナルドの例があります。マクドナルドがWebサイトを9月にリニューアルしました。お店によく来てくれてる人は、 携帯のクーポンを使ったりして、 携帯サイトの方からよく来てくれている。リニューアルの目的は、 彼らにとっては、 「行きたがらない人をどうつかまえるか?」 が最大の焦点で、 「そのためにWebサイトを使う」 という話になったんです。だからWebサイトの方も作り方が変わって、 インタラクティブにメニューがくるくる回って、 閲覧者に興味を持たせるような形になっています。マクドナルドの場合は、 パソコンの方では 「新規ユーザにどうやって興味を持ってもらうか?」 をテーマにしていて、 携帯の方ではいつも来てくれる人にクーポンをあげている。それぞれのメディアの使い方が、 だんだんと分かれてきています。 - Web担当者forum 安田英久氏
それは結局、
「コンシューマーとしての人」 がターゲットですね。ここに来ている人も、 数時間後にコンシューマーになっています。だけど今はビジネスの人間なので、 「B2Bのニッチビジネスでは携帯はどう活用したらいいんですかね?」 「放っておけばいいのではないですかね」 という話で終わってしまう。でも 「今はそこは無理」 という切り分けでいいのではないでしょうか。投資対費用効果の話でいえば、 「今の携帯ユーザから回収できるのなら、 携帯やりましょう」。それだけの話になると思います。 あとは、
パソコンを持っていなかったり、 めったに使わない層に対して、 サービスを提供したい方──たとえば飲食店なんかはそうですが、 店舗検索とか、 そういうスキームは携帯が合ってます。それは、 その先に利益を上げるものがあって、 そこへ誘導させるためのものなので、 お金をかける価値はあるということです。 DENPAのイベントは、
それ自体の文化としてはいいと思います。ただそこに企業がお金を使って何かの行動をすることは、 売上なり、 ブランディング効果なり、 いろんな面を明確にできない限り、 企業は動けないですよね。 - ウェブエキスパート 諏訪光洋氏
DENPAのイベントがあることを知って、
DENPAのことを結構調べました。そして 「これは行きたい!」 と思いましたね。今回は行きそびれましたが。いわゆるアキバのコアなイベントは知らないし、 行けないのですが、 DENPAは楽しめるような気がします。行っておけば良かったっと後悔しました。 そんなにいろんなことに深い興味を持たない方ですが、
その私が 「これは行けるな!」 と思う。だから 「DENPAには、 企業が協賛をする方向性がある」 と感じました。たとえばトヨタが、 若者向けのちょっと変わった車を訴求したいとき、 このイベントの協賛をするような余地が今後出てくる気がします。 DENPAの会場には、
お金を持っている層、 たとえば30~40代のIT系のプロデューザーやディレクターなども意外と参加していそうな気がします。リーダーシップを持った人が集まる、 というのは企業からするとかなり価値がある気がします。次回はぜひ行きたいです。みんなで一緒に行きましょうよ (笑)。 - Web Designing 馬場静樹氏
思い切りサブカルの色をしていると、
企業はなかなか乗りづらいけど、 これには乗ってみても、 「そこに入っていない人にとっても、 ちょっとカッコいいなと思わせる、 何か」 がありそうな感じがしますね。 - ロフトワーク 林千晶氏
この手の流れは、
「新しい流れ」 を生み出す流れになっていく気がしています。なぜかというと、 この人たちは、 「お金になるから」 とか、 「アニメと何かを融合させよう」 とか、 そういうことは思っていないから。初音ミクが大好きで、 初音ミクで踊りたくて、 そこで 「踊ろう!」 という人の多くがたまたまファッションが好きで、 実はITオタクもいっぱい集まっている。これが 「たのしいよね」 「たのしいよね!」 と伝播していく。そのことは、 必ず何らかのビジネスにつながっていくと思います。 だけど、
ビジネス側の人間は、 「それがなぜ流行っていて、 どうビジネスに使っていくのか?」 が見えてこないと、 ここに乗れない。半年後くらいには、 ここにいらっしゃる方々が、 DENPAの記事を書いていると思うし、 そうするとスポンサーやクライアントも付くと思いますよ (笑)。 DENPAは、
ベンチャー企業と一緒で、 「これが好き!」 からはじまっているような気がします。初音ミクが流行ったのは、 何のマーケティングでもなく、 「かわいすぎる!」 という理由だけなので。でもそのパワーがすごい! 初音ミクを通じた韓国や台湾との交流が生まれたり、 あるいは3DCGであるとか……ここからまた新しいものが生まれるかなと思います。 - Web Site Expert 馮富久
おっしゃるとおりだと思うところもあります。ただ、
クリエイティブとしておもしろいのを、 ビジネスにしなくてもいいのではないかって、 ちょっと思います。このままこの文化が続くだけで、 別にお金は付かなくてもいいと思ってます。無理にビジネスにつなげていく必要はないように思う。 「おもしろい!」 で終っちゃうのも、 1つの答えではないでしょうか。 - ロフトワーク 林千晶氏
企業のマーケティングは、
「狙って」 いかないといけません。だけど 「狙って狙って」 だけのマーケティングでは限界があります。 「狙っていない、 自然発生的な流行り」 をうまく取り込んでいく。わたしが花王のマーケティングにいたころそれを強く実感しました。 「狙ってできたわけではない流行を、 必ず吸収しながら進化していく」 ということがとても重要で、 そこから乖離したら、 企業のマーケティングは腐っていってしまうと思うのです。 たとえばWebと携帯を見た場合、
携帯のほうが、 「より人を見ないと、 絶対に動かない」 から、 どんどん進化します。Webの場合は、 結構 「理想論」 でビジネスできちゃうからそこまで進化しない。 「企業ホームページはこうあるべき」 というような、 べき論になっている傾向があるかもしれない。だからその融合を目指す 『日経ネットマーケティング』 はすごい! と思います (笑)。