2013年関心のある技術はトップ10発表、テック界のスター誕生!「CROSS VS」、アンカンファレンスも大賑わい「エンジニアサポート新年会2013 CROSS」レポート(後編)

1月18日に、西新宿ベルサールグランドで勉強会の祭典エンジニアサポートCROSS 2013を開催しました。

昨日公開したレポート前編では「次世代Webセッション」「スポンサーセッション」について紹介しましたが、後編である今回は「Tech 10」セッションと、今年実施した新企画の「CROSS VS」「アンカンファレンス」についてレポートします。

「Tech 10」

「この飲み会の概要は…」⁠この会場でやるのってアニメ10だっけ?」⁠僕と契約してFreeBSD使いになってよ」などの異色の様相で始まった「Tech10⁠⁠。

データホテル株式会社 伊勢幸一氏、さくらインターネット株式会社代表取締役社長 田中邦裕氏、 技術評論社 Software Design編集長 池本公平氏など、Web界隈の一部では知らぬ人のいない面々が、2012年に「来た」技術、2013年に「来る」技術、エンジニアの生きる道、心構え、技術本の売れ行きから見るマーケット情報などを交えて、熱く楽しいトークを繰り広げました。

伊勢幸一氏
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2012年の振り返り

まずは、昨年のCROSS 2012の参加者アンケートの振り返りを行いました。

「2011年キタコレ技術」「2012年クルコレ技術」
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昨年は、⁠2011年キタコレ技術」⁠2012年クルコレ技術」の両方のランキングでHTML5が1位となっていました。注目された理由について「クライアントアプリを使いたくない、つまりタブレットやスマホアプリを別に作るくらいなら、HTML5で共通に書いてしまえという人が多かったのではないか」と指摘した田中さんと、⁠注目はされているようだが、そこまで本は売れなかった」と嘆く池本さん。実際にエンジニアが必要とする情報のマーケットと注目や興味とは多少異なるところがあるのでしょうか。

また、最新のテクノロジーであるHTML5をやると給料に反映されるかという疑問に対し、⁠HTML5をやると給料が上がる、⁠ただし、さくらインターネット以外では!!』ウチはウチ、ヨソはヨソ」⁠田中社長)とのこと。一つの技術に取り組んでいるだけでは、給料を上げることは一筋縄ではいかないようですね。

田中邦裕氏
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2013年のカテゴリ別ランキング ~ランクインしているものの不思議

そして2013年のカテゴリ別ランキングが発表されました。ランキングはCROSS参加者の興味から作成されていますので、このランキングをみると、市場の動向がうっすらと見えてくるように思います。

例えば、昨年ランクインしていたiOSは今回ランクインしていない。このことについて、⁠iOSが当たり前のもの(コモディティ)になったといえるのではないだろうか。むしろAWSが入ってきている点が気になっていて、AWSがコモディティ化しインフラとして市場に認知されてきているのではないのだろうか…。もしかして、ランキングされると使われないってことなの?」と発言した田中社長に対して、⁠今年は)IPv6、オープンフローも入ってきているので、これらもやっぱり使われないということ?」と伊勢さんが切り返し、会場の爆笑を誘っていました。

2013年カテゴリ別ランキング
順位 OS関係 クラウド分散技術関係 データベース関係 フロント・スマフォ関係 運用開発手法関係 言語関係 統計解析関係
1位 Linux AWS MySQL HTML5 CI JavaScript Data Mining
2位 Internet Cloud MongoDB iOS DevOps Ruby 統計
3位 Web Socket Hadoop Memcached Android Programming Node.js Log
4位 Open Source IaaS PostgreSQL CSS3 Monitoring PHP 機械学習
5位 Network PaaS Hive Security Test Perl Solr
6位 Unix Google HBase Visualization Infra Python 自然言語処理
7位 Storage SaaS Titanium Development Scala Lucene
8位 SPDY Mahout UI Trouble Shooting R
9位 UX LogCollector Haskell
10位 Design Document Lisp

技術タグのカテゴライズの難しさ

技術をカテゴリ分類する試みについては、分類する人の主観が入りやすく観点も様々なので、正確なカテゴライズはやはり難しいようです。ましてや最新のテクノロジーとトラディショナルなテクノロジーがCROSSするWeb業界。登壇者たちも、登録された技術情報の粒度や分類については困惑していました。

例えば、⁠Linux」「IaaS」と非常にざっくりとしたものから「MySQL」⁠MongoDB」といった製品、はては「DevLove」⁠人事」などテクノロジーではなくコミュニティの名前やエンジニア活動の枠のようなものもあり、入力側も何を入れたらよいか、困っていたのかもしれません。

逆に言語関係は、比較的カテゴライズしやすかったようです。田中社長は「男は黙ってC!!⁠⁠、伊勢さんは「JavaScriptがあればJavaのカテゴリは不要!!」と発言して会場の笑いとどよめきを誘っていました。ちなみに、さくらインターネットではC言語がかけると給料が上がるようです。今年はエンジニアを積極採用するようなので、興味のある方は検討してみると良いかもしれません。

ランキングの中のキャリア

「テクノロジー」ランキング内に「キャリア」というタグがあり、それについて「皆興味があるはず」と伊勢さん。しかし、⁠何年か前に『生き残り』っていうテーマでやったけど案外みんなそういう話題は嫌いみたい、あまりそこらに触れると『やめてくれ』っていう声が。⁠俺は職人として生きたい』人が結構いるみたいで……」と池本さん。キャリアデザインには興味があるものの、職人魂がそれを全面に出すことを拒むような気質がWeb業界のエンジニアにはあるのでしょうか。

また、⁠ネット系は今から10年、15年くらいはいけると思っている、IT業界の高度経済成長は終わっていなくて、みんな給料上がって、みんな出世できる世の中ができるかもしれない」と田中社長が明るい未来について語ったところ、即座に伊勢さん、池本さんの両名から「はい!ダウト!!」の声があがり、明るい未来も見えつつ、業界の激しい競争も垣間見えました。

テクノロジーの幻想を打ち砕く

カテゴライズされた各分類でのランキングが語られる中、池本さんがHadoopの本を例にあげ「読者構造が変わってきていて、わかる人は(わかっているから)本を買わない、⁠わからない人は)難しい本は読まない、⁠だから)買わない、ってなってきてしまっています。よほどわかりやすく書かないと売れないですね。Hadoopをどうやってビジネスに展開するか、いまいち想像ができないんだろうと思います」と発言。当初から技術に精通しているエンジニアと、ビジネスに活かせることがわかってから技術に入っていくエンジニア層がいることが改めて見て取れました。

また、⁠テクノロジーについては、みんなが持っている幻想を打ち砕くことが必要で、インターネットに載っているものを真に受けない力を身につけることが必要」と語られたのも非常に印象的でした。エンジニアには、すべてのテクノロジーを良いところと悪いところ含めてちゃんと見る力が求められているのでしょう。なかなか大変な時代になって来ました。

様々な技術について簡単にわかる「30ページでわかる◯◯」⁠アニメでわかる◯◯」のような本があったら良いと3名が言及していたので、今年販売されることを期待しましょう。

池本公平氏
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総合ランキングに今のWeb業界を垣間見る

総合ランキングからは、AWSの上でLinuxベースのOSを利用し、MySQLを使ったHTML5とJavaScriptをフロントエンドに、バックエンドをRubyかNode.jsでクライアントをiOSで作っているという現在のWeb業界を見ることができました。

2013年総合ランキング

順位技術タグ得票数
1位MySQL95
2位Linux90
3位AWS85
4位HTML582
5位JavaScript80
6位MongoDB76
7位Ruby72
8位Cloud69
9位Node.js62
10位iOS58

個別技術では、MySQLのI/O負荷を軽減するようなテクノロジーが発達していることから、エンジニアの質というよりは、単にコストの問題として捉えて現状の課題解決を図るようなものが多かったようです。

伊勢さんからは、変化していく技術のなかでひたすらにトレンドを追いかけて行くのではなく、エンジニア自身が好きな技術をひたすら追いかける、現状の課題解決のためだけにテクノロジーを採用するのではなく、エンジニアの技術を高めるほうが、モチベーション的にも、企業の成功のためにも重要だというお話があり、テクノロジーとの関わり方について非常に考えさせられました。

以上、だいぶ端折ってしまいましたが、それぞれの技術項目での非常に深い話、エンジニアの生き方についての話、本の売れ行きの話ありと、多彩な内容となりました。来年は、⁠アニメでわかる◯◯」シリーズのランキング企画でお会いできればと思います。

「CROSS VS」

今回のCROSS2013では、新たな試みとして、エンジニアの起業を支援するステージづくりにも取り組みました。⁠CROSS VS~アプリ/サービス公開オーディション」は、世に出したいサービスやプロダクトを持つスタートアップやエンジニアのための、サービスやアプリのプレゼンテーションステージ(ピッチコンテスト)です。

当ステージは、サムライインキュベート、MOVIDA JAPAN、グローバルブレイン、インキュベイトファンドなど著名なベンチャーキャピタリスト、ヤフー、楽天、DeNA、mixi、NTTグループなどネット企業の新規事業担当者、メディアの方など総勢22名を審査員として招き、100人を超える観客が見守る中、開催されました。

ステージにつけたコピーは「テック界のスター誕生!⁠⁠。往年のスター発掘番組のテック版といった光景が展開され、独特の緊張感とエンタメ性のある、リアルなイベントの醍醐味が味わえるステージとなりました。

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出演者はCROSS2013の公式サイトで募集され、20組のエントリーがありました。一次予選の通過者は7組。高倍率を勝ち抜いた、個性あふれる「7人の侍」が、熱いプレゼンテーションを展開しました。

  • 1組目の「LaunchApp⁠⁠:ザオリア株式会社による、アプリのユーザーテストをクラウドソーシング型で実施できるサービス。
  • 2組目の「ROBOprof⁠⁠:Facebookのアイコン画像からペーパークラフトを作成できる、フリーエンジニア・森雅秀氏によるアプリ。
  • 3組目「Saturn Storage⁠⁠:現役大学生とネット企業の1年目社員が中心メンバーの「Team Saturn Storage」で作った、複数の無料ストレージサービスを1つの画面でまとめて管理できるサービス。
  • 4組目「limica⁠⁠:株式会社ナスカークラフトによる、気になる人にドリンクとメッセージを送ることができるリアル店舗向けのサービス。
  • 5組目「Cu-hacker⁠⁠:株式会社ジェネストリームによる、複数名のカレンダーを束ねて日程が調整できるサービス。
  • 6組目の「告白の行方⁠⁠:エンジニア菊本久寿氏による、自動音声によるワンコイン告白サービス。
  • 7組目の「ワガコダケ⁠⁠:ソーシャルで集めた写真から、あらかじめ登録しておいた「わが子」の写真だけをピックアップしてくれるサービス。

実に多種多様なサービスが、名だたる審査員の前で堂々のプレゼンテーションを展開しました。ライブ感あふれるプレゼンの数々に、審査員からは「想像以上に、みなさんのプレゼンテーションのクオリティが高かった」という声も聞かれました。

各発表者によるプレゼンテーションが終わった後は審査員による「入札」が行われます。演出上の「入札」であり、この札を上げることで即、投資や提携が決まるわけではありませんが、リアルタイムで審査員の反応がわかり、札が上がる瞬間は、発表者、観客の間に独特の緊張感が走りました。⁠自分の出番で札は上がらないと思うなあ」と出演前に話してくれた発表者も、一度札が上がると、その数に驚いたり、興奮を隠せなかったり。札を挙げた審査員と、ステージの終了後談笑する発表者もいて、⁠入札」の演出は、マッチングの第一歩として役立つ仕掛けとなりました。

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ニフティクラウドの使用権400万円分が賞品として提供される「VS大賞」を受賞したのは「Saturn Storage⁠⁠。大賞は、審査員22人による5点満点の採点の合計点で決定されました。⁠Saturn Storage」「入札」する審査員の数も多く、講評では「必要だと思ったものを自分たちで作ろうと思い、実際にカタチにしたところが素晴らしい」という評価が目立ちました。

学生が中心となって作られたサービスがチャンピオンになったことは、CROSS VSというステージにとって、象徴的な結果でした。今回のコンテストは、あえてスタートアップやフリーのエンジニア、学生などの所属を問わずに、出演者を選抜しました。審査員も、出演者も、観客もCROSSするピッチコンテストにしたかったのです。そして結果として、経歴も何も関係なく、会場のみなさんがいいと感じたサービスがチャンピオンをとったのは、CROSSらしい結末だったと言えるでしょう。

「Saturn Storage」は楽天賞とのW受賞。KLab賞は「Cu-hacker」が、DeNA賞とおばかアプリ選手権賞は「告白の行方」がW受賞を果たしました。

特に「告白の行方」は、その独特のユーモアとプレゼンテーションスタイルで、会場をもっとも沸かせてくれたサービスです。プレゼンテーターの菊本さんは「レンタルCTO」という変わった肩書きを持つフリーのエンジニア。⁠おばかアプリ選手権への出場は本当に夢だったので、夢がかなってうれしいです」とコメントを残しました。VSが生んだニューヒーローの1人と言っても、過言ではないかもしれません。

コンテストの開催は、実験的な試みでした。資金投資自体、エンジニアにとってセンシティブな一面もあります。ですが、エンジニアがビジネスの成功に至る一つの重要な道に進むきっかけとして投資や事業提携があることも事実です。そのきっかけづくりのために、コンテストステージを開催することにしましたが、マッチングの場づくりとして一定の成果が上げられました。何より、大勢の出演者や観客の方々、審査員の皆様に喜んでいただける、ライブ感あふれるステージになったことが、大きな成果だったと感じています。

「CROSS アンカンファレンス」

CROSS アンカンファレンスは、実はCROSS2012の積み残しでした。昨年準備が足らずにやりたかったものの泣く泣く諦めた企画を、DevLOVEの協力で今年実施することができました。

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DevLOVE小芝さん松下さんの強力なコンテンツ吸引力によって、後述のテーブルのように甲乙丙と3トラックがすべて埋まりました。セッション内容は「シェルからクラウドソーシングまで」といった具合に、本セッションに負けず劣らず「上から下まで」網羅した内容になりました。

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この時間帯はアルコールが解禁されたこともあり、会場内はすごいボルテージで私が今まで見聞きしたアンカンファンレンスの中では最も高いテンションで開催されたのではないでしょうか。また、私が目指した形の一つである学会のポスターセッションにも限りなく近く、通常のセッションでよく見られる「話者 vs. 聴衆」という形ではなく「話者を中心とした議論」の形式のセッションも多数見受けられました。中には最初から「どうしよう?どうだろう?」といった議論を目的としたセッションもあり、まさに「CROSS=交流」の名の通りコミュニケーションを多くとれたことと思っています。

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お酒が入っている時点で「負けなし」を踏んでいましたが、盛り上がりすぎて、同時刻の別のセッションからは迷惑だったようでした。以降の課題としたいと思います。

アンカンファレンス プログラム
 
18:00-18:15Symfony1.4 管理画面
@soramugi
ラズベリーパイ
@yujiod
こんなJSのツールがほしい
@kyo_ago
シェル芸と私と2013年
@nullpopopo
子供向けプログラミング
@yando
18:15-18:30OS CAM x OSS x NW
菱信一郎
クラウドソーシング/クラウドソーシングの活用
よしだ
MS Pixelsenseの話
@tokoroten
アプリ値下げ情報サイトを作ってみた
Tech Lionへのお誘い
@hourin
18:30-18:45本当はこわいLVS
@Yuryu
日本のメールをモダンにしよう rfc6449
@ar1
AppBank GAMES裏話
@akisutesama
異常値検知のおはなし
@muddydixon
microsoftのアレでつくるAWSのアレ
@harutama
18:45-19:00「SQLアンチパターン」がでるよ
@t_wada
超PaaS EngineYardのご紹介
今中
PHP x Rubyの架け橋
@do_aki
TDの今
@repeatedly
ドワンゴの今について
@meso
19:00-19:15自宅DCの初夢
@nanbuwks
CDP実践 クラウドデザインパターン
@kaz_goto
HW構成管理話し合うの場
@kuwa_tw
すくすくスクラムの紹介
@natsu_nanana
エンジニアから見たUXのためのデザイン
@chachaki
19:15-19:30ネットってどんだけ
@naoto_matsumoto
クラウドコミュニティ「JAWS-UG」の紹介
@yoshidashingo
スポンサーの語るイベントのいいところ悪いところ
職務経歴書2.0
@kwappa
「ルビーストのみなさん」集団ぼっちになっていませんか?
@bash0C7

まとめ

最後になりましたが、スポンサーの皆様、120名にものぼる登壇者の皆様、実行委員会のスタッフ、事務局のスタッフ、そして、ご来場いただいた参加者の皆様、本当にありがとうございました。反省点はまだまだ残されておりますが、今後の課題として検討したいと思います。

2013年1月は過ぎて行きましたが、CROSSの内容やCROSSで行われた交流が、少しでも皆様の今年一年のエンジニア活動の一助となれることを願っております。

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