2016年10月18日~20日の3日間、アメリカ、サンフランシスコでQt World Summit 2016 (以下QtWS) が開催されました。会場はフィッシャーマンズワーフの有名な観光スポットであるPier 39に近い、Pier 27のJames R. Herman Cruise Terminalでした。
User Experience Design for Embedded and Mobile Devices (ICS)
Qt GUI Testing with Squish (froglogic)
トレーニングは基本的には講義形式で行われましたが、「User Experience Design for Embedded and Mobile Devices(ICS)」のようにグループディスカッションを中心に進められたものもありました。
私は「Model/View Programming in Qt(KDAB)」に参加しました。このコースでは、Qtの基本的な理解がある人を対象に、Qtのモデル/ビューアーキテクチャの概念や使い方が講義されました。講師は、QtとOpenGLの豊富な開発経験を持ち、全米でQtのトレーニングコースの講師をしているJim Albamont氏です。受講者は30人程度で、講義中は受講者が積極的に質問をしていました。説明が淡々と行われるわけではなく、サンプルアプリケーション実装のデモもあり、実装がイメージしやすかったです。デモの途中で、講師の方が「ここはどう実装すれば良いと思いますか?」と受講者に質問しながら進めていたことで、頭を使いながら講義を聞くことになり、より理解を深めることができました。
キーノート
2日目、3日目は本格的なカンファレンスが行われ、The Qt CompanyのCEOであるJuha Varelius氏の挨拶をもってキーノートが始まりました。両日ともセッションを挟んで最初と最後にキーノートがあり、2日間で約10項目のトピックが紹介されました。ここでは、直近の最新情報であるQt 5.7、Qt 5.8に触れた「The future is written with Qt」の詳細なレポートと、その他のキーノートの簡単な紹介を記載します。
ここでは、上記「The future is written with Qt」以外のキーノートの簡単な紹介を記載します。
雑誌「WIRED」の創刊編集長であるKevin Kelly氏によるキーノート「The Inevitable Digital Futures」では、ユビキタス社会や人の代わりをするロボットの実現等、30年後には避けられない変化について説明がありました。その上で、私たちはその変化を阻止したりせず、向き合うべきであることが述べられていました。
IoT製品等のデザインを手掛けるBig Medium社の創始者であるJosh Clark氏の「Magical UX and the Internet of Things」では、IoT製品による新しいUXは魔法のようなものであるとして、さまざまなIoT製品のアイディアが紹介されました。おむつにセンサを取り付け、取り替えるタイミングを知らせてくれるようにする等のユーモアあふれるアイディアもあり、会場の笑いをとっていました。
ここでは、Qt Liteについて触れていた「Where Qt is going - Qt Lite Overview」、「Qt Lite's configuration system explained」と、IoTやUX等の流行のトピックに触れていた「Qt & IoT - Do they fit together?」、「Performance Boost Through Eye Control」について詳細をレポートします。
Where Qt is going - Qt Lite Overview / Qt Lite's configuration system explained
前述のキーノート「The future is written with Qt」でも触れられていたQt Liteについては、この2つのセッションで詳細な説明がありました。前述のLars Knoll氏とQt LiteのプロダクトマネージャであるNils Christian-Nielsen氏により説明が行われました。
また、今回のQtWSでは、キーノートやセッションの情報が確認できるスマホ用アプリケーションも用意されていました。スマホ用アプリケーションはERP分野のソフトウェアアーキテクトであるEkkehard Gentz氏が開発したものと、V-Play社が開発したものの2種類あり、いずれもQtで開発されています。これら2つのアプリケーションはそれぞれセッション「Qt World Summit Conference App: Behind The Scenes」、「How to Develop with Qt for Multiple Screen Resolutions and Multiple Platforms and Best Practices for an Efficient App Lifecycle with Qt」でも紹介されていました。冊子として配布されていたセッションのスケジュールや場所に対して、変更があった場合の最新情報は、このアプリケーション上で確認することができました。
私は今回初めてQtWSに参加しましたが、Qtの最新情報が得られたり、2015年のQt Championの方とお話できたり、Qtを使用している外国人の方とお友達になれたりと非常に良い機会になりました。次回のQt World Summit 2017はベルリンでの開催だそうです。興味を持たれた方は、参加してみてはいかがでしょうか。