今回は4月22日にリリースされるUbuntu 21.04の主な変更点を紹介します。
Ubuntu 21.04
4月22日にUbuntu 21.04(Hisute Hippo)とそのフレーバー(公式派生版)がリリースされます。今回はUbuntu 21.04の新機能についていくつかピックアップしてお知らせします。
とはいえ、図1を見てもわかるとおりあまり大きな変更点はありません。一番大きな変更点はWaylandセッションがデフォルトになったことでしょう。
では具体的に見ていきます。
Ubuntu 21.04 ≒ GNOME 3.38
まずは図2をご覧ください。Ubuntu 21.04のGNOMEのバージョンは、20.10と同じくGNOME 3.38で据え置きです。もちろんこの3月にはGNOME 3.38の次のバージョンであるGNOME 40がリリースされていますが、21.04では採用が見送りになりました。というのも図3のようにGNOME 3.38のGNOME Shellとはずいぶん違うデザインになり、Ubuntu独自の変更点を加えるには時間がなさすぎる、という理由で見送りになったということです。
では完全にUbuntu 20.10と同じなのかというとそういうわけでもなく、一部のアプリケーションはGNOME 40のバージョンに上がっています。というわけで、久しぶりにGNOMEのバージョンが混ざったキメラなリリースになっています。
GNOME関連コンポーネントのバージョン表を掲載します。
3.32.x |
gnome-power-manager, zenity |
3.34.x |
gnome-bluetooth |
3.36.x |
gnome-getting-started-docs, gnome-keyring, gnome-logs, gnome-menus, gnome-mines |
3.38.x |
adwaita-icon-theme, cheese, file-roller, gcr, gdm3, gedit, gnome-calendar, gnome-control-center, gnome-initial-setup, gnome-mahjongg, gnome-online-accounts, gnome-screenshot, gnome-session-bin, gnome-settings-daemon, gnome-shell, gnome-terminal, gnome-user-docs, mutter-common, nautilus, orca, simple-scan, totem, ubuntu-session |
40.x |
baobab, eog, evince, gnome-calculator, gnome-characters, gnome-disk-utility, gnome-font-viewer, gnome-system-monitor, yelp |
Ubuntu 20.10の時は本連載で変更点を取り上げなかったので、比較することが難しく、少し後悔しています。Ubuntu 20.10の時には3.34.xに分類されていたgnome-charactersとgnome-font-viewerが40になっていたりします。そのほかバージョンを上げやすいものだけ40にしたというところでしょう。
画面共有サーバーの交代
UbuntuにはVNCで画面共有を行う機能があり(図4)、バックエンドのサーバーはVinoが採用されていました。調べてみたところUbuntuの最初のバージョンである4.10ではすでに採用されていたので、なかなかの歴史を感じます。
このように古い設計であったためWaylandには対応していませんでした。そこでGNOME Remote Desktopが新たに開発され、この度置き換えられました。
実は第661回でRemminaを紹介した際に、Ubuntu 21.04の開発版に接続しています(第661回の図6)。つまりVNCクライアントは従来のままでいいことがこれでわかります。
Waylandセッション
ようやく本題です。Ubuntuの歴史を振り返るとWaylandセッションがデフォルトになったのはこれが2回目です。1回目はUbuntu 17.10で、Unity 7がGNOME Shellに置き換えられた際に、同時にWaylandセッションもデフォルトになりました。詳しくは第493回をご覧ください。
しかし次のバージョンであるUbuntu 18.04 LTSでは再びXセッションに戻っています。理由の一つは、実は前述の画面共有の問題でした。Ubuntu 17.10の頃にはGNOME Remote Desktopはまだ開発の最中で、Fedoraで採用されたのも2018年10月にリリースされた29からでした。17.10や18.04 LTSの頃にはまだ時期尚早だったことがわかります。
今回のWaylandセッションのデフォルト化はもちろん次のLTSであるUbuntu 22.04 LTSを見越したもので、今からXセッションに戻ることはほぼないと考えられます。
とはいえ、Waylandセッションでは不都合な場面がまだあるのも事実です。第493回でも言及していますが、典型的な問題はNVIDIAのプロプライエタリなドライバーを使用している場合です。この場合は強制的にXセッションに戻されます(図5)。
画面共有系のサーバーも影響を受けます。あまりに広範囲なので詳細な調査はできていませんが、第575回で紹介したBarrierは2021年4月中旬現在Waylandセッションには非対応です。しかし必要な金額の寄付はまかなえているため、近日中にサポートされるのかもしれません。
Waylandセッションで不都合がある場合は、ログインパスワードを入力する際に右下の歯車アイコンをクリックしてセッションを切り替えてください(図6)。
「ファイル」とデスクトップ間のドラッグ&ドロップ
また少しUbuntuの歴史を振り返ると、第566回で紹介したように19.04からは「ファイル」(Nautilus)のバージョンが上がり、デスクトップとの統合機能が削除されたことによってさまざまな機能が削除されました。しかしDesktop Icons拡張機能で基本的な機能が補われました。それでも完全ではなく、デスクトップにあるファイルを「ファイル」にドラッグ&ドロップすることも、またはその逆もできませんでした。
この21.04からはDesktop Icons NGに置き換えられ、ドラッグ&ドロップの機能が復活しました(図7)。その他にもいくつかの機能が実装されています。
ちなみに「NG」は、日本語だとあまりいい印象を受けませんが、通常はNew Generationを指します。
ホームディレクトリのパーミッション変更
Ubuntu Weekly Topics 2021年1月15日号で既報のとおり、ホームディレクトリのパーミッションが変更変更され、デフォルトで「0750」となりました。
他のユーザーのホームディレクトリを権限なしで読めないと困るシチュエーションはそれほど多くないので影響は特にないと思いますが、Webサーバーでホームディレクトリにコンテンツを置いているようなケースでは問題となってくるかもしれません。しかし今となってはそれもレアケースでしょう。