Ubuntu Weekly Recipe

第810回Ubuntu 24.04 LTSの変更点

今回は4月25日にリリースされる予定のUbuntu 24.04 LTSの変更点の概要をお知らせします。

Ubuntu 24.04 LTS

明日4月25日に、Ubuntu 24.04 LTSとUbuntu Serverとフレーバーがリリースされる予定です。Ubuntu Weekly Topics 4月5日号にもあるようにxz-utilsの問題によって開発がまるまる1週間(見方によってはそれ以上)遅れたにもかかわらずリリース日の変更はなく、執筆段階でも活発に開発が行われています。

それはさておき、Ubuntu 24.04 LTSの開発コードネームは「⁠Noble Numbat⁠」で、⁠高貴なフクロアリクイ」という意味です。デスクトップ画像にも、フクロアリクイをあしらった王冠が見えます図1⁠。

図1 Ubuntu 24.04 LTSのデスクトップ
図1

今回はいつものように23.10から24.04 LTSへの変更点を紹介しています。前のLTSである22.04 LTSから24.04 LTSへの変更点をはじめ、Ubuntuを開発環境で活用する方法を知りたいのであればSoftware Design 2024年5月号を参考にしてください。すでに店頭に並んでいます。

リリースノート

24.04 LTSを試す前に、必ずリリースノートに目を通してください。リリースノートのドラフトは現在でも読めますが、日本語訳などの詳細な情報はリリース後に公開される(予定の)Ubuntu Weekly Topicsをご覧ください。

インストーラーの変更

インストーラーに関しては、この24.04 LTSでも多くの変更点があります。

まず、アクセシビリティサポートが入りました図2⁠。

図2 ⁠Ubuntuのアクセシビリティ」が追加された
図2

またUbuntu Serverにあり第615回参照⁠⁠、Ubuntuにはなかった自動インストール機能が追加されました図3⁠。いずれ本連載で詳しい解説がされることでしょう。

図3 ⁠自動インストール」が追加された
図3

23.10では「Default Installation」「Full Installation」だったのが、24.04 LTSでは「既定の選択」「拡張選択」となりました図4⁠。インストールされるパッケージはおおむね同じです。パッケージ構成の変更点は次項で説明します。

図4 パッケージ選択の文言が変更された
図4

余談ですが、インストーラーのリポジトリ名はubuntu-desktop-provisionに、パッケージ名は「ubuntu-desktop-bootstrap」になりました。

使い方はよくわからないのですが(OEM用途と考えられる⁠⁠、リカバリーイメージ作成ツールなども追加されて単なるインストーラーではなくなったのは事実です。

24.04 LTS = GNOME 46

24.04 LTSのGNOMEはおおむねGNOME 46になっています。いつもの表を見ていきましょう。

バージョン コンポーネント(パッケージ名)
3.36.x gnome-menus
3.41.x gcr
3.50.x gnome-online-accounts
3.52.x gnome-terminal
42.x yelp
43.x gnome-power-manager, seahorse
45.x eog, gnome-logs
46.x adwaita-icon-theme, baobab, evince, gdm3, gnome-bluetooth-3-common, gnome-calculator, gnome-characters, gnome-clocks, gnome-control-center, gnome-disk-utility, gnome-font-viewer, gnome-initial-setup, gnome-keyring, gnome-remote-desktop, gnome-session-bin, gnome-settings-daemon, gnome-shell, gnome-system-monitor, gnome-text-editor, gnome-user-docs, mutter-common, nautilus, orca, tecla, ubuntu-session

GTK4対応になってバージョンスキームが変わったzenityは、今回から調査の対象外とします。

実のところ23.10との違いは、バージョンを除けば大きくはありません。

「拡張選択」でインストールすると、ゲーム3種類がインストールされなくなりました。また長らく使われてきたWebカメラアプリである「Cheeze」「Camera」⁠パッケージ名は「gnome-snapshot⁠⁠)に置き換えられています。

ちょっと面白いのは、nautilus-sendtoがデフォルトでインストールされるようになったことです。もともとはNautilus(⁠⁠ファイル」の旧名兼内部名)の拡張機能としてリリースされたのですが、現在は実行ファイルが提供されるだけでNautilusの拡張機能としては使用できません。⁠とはいえその他のアプリがこれを利用している」⁠However, many other apps use it)とのことで復活しています。

GNOME 46の変更点で興味深いのは、Ubuntu Weekly Topics 2024年4月19日号でも紹介されたOneDrive対応でしょう。もう少し詳しく解説すると、Microsoft 365アカウントをサポートするため、gvfsに対応ライブラリmsgraphを追加しました。同時にユーザーインターフェースとしてオンラインアカウントに「Microsoft 365」が追加されました図5⁠。

図5 ⁠Microsoft 365」が追加された
図5

換言するとMicrosoft PersonalアカウントでOneDriveが対応されたわけではないので、必要であれば従来どおりOneDrive for Linuxonedirverを使用しましょう。

Netplan

Ubuntuでもネットワーク設定のバックエンドにNetplanが使用されるようになりました。DHCPで使用する分には特に意識することはないでしょうが、固定IPアドレスに変更したりすると、/etc/netplan/以下に設定ファイルが作成されます図6⁠。

図6 固定IPアドレスにした場合の設定例
図6

deb822形式

deb822に関しての詳細は第677回を見るとわかりやすいでしょう。このdeb822形式に準拠したリポジトリ情報が、24.04 LTSから採用されることになりました。具体的には図7のようになります。

図7 24.04 LTSからはdeb822形式でリポジトリ情報を記載する
図7

換言すると/etc/apt/sources.listは使われなくなりました。なお図7にもあるようにリポジトリ情報ファイルの拡張子(.sources)が従来(.list)とは異なり、混在は可能です。

ThunderbirdのSnapパッケージ化

「拡張選択」を選択してインストールすると著名なメールクライアントであるThunderbirdがインストールされますが、24.04 LTSからはSnapパッケージで提供されるようになりました。

アプリセンター

23.10から導入されたアプリセンターも、少しだけ変更点があります。

ゲームページの強化

Ubuntuでゲームをプレイするユーザーを増やしたいのか、⁠ゲーム」の項目が充実しました。図8では上のほうしか見えませんが、実際に表示してスクロールすると下のほうまでいろいろ表示されます。

図8 アプリセンターの「ゲーム」に表示される項目が増えた
図8

なお第805回にもあるように、NVIDIAのプロプライエタリなドライバーを使用している場合はSnap版Steamがうまく動作しないことを確認しています。

ローカルのdebパッケージインストール

これは第783回のUbuntu 23.10の変更点を説明する際に述べておくのを忘れたことであり、この24.04 LTSでも改善されていないのですが、アプリセンターにはローカルのdebパッケージをインストールする方法が用意されていません。実際に該当ファイルをダブルクリックしてみると、図9のようなメッセージが表示されます。

図9 Google Chromeをインストールしようとすると表示される無情なメッセージ
図9

解決方法はいくつかありますが、ここでは「ソフトウェア」⁠パッケージ名はgnome-software)をインストールするのをおすすめします。ついでに「gnome-software-plugins-flatpak」もインストールすると、Flatpakパッケージも扱えるようになります。詳しくは第720回をご覧ください。

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