ビジネス課題を解決する技術 〜数理モデルの力を引き出す3ステップフレームワーク
- 森下光之助 著
 - 定価
 - 3,300円(本体3,000円+税10%)
 - 発売日
 - 2025.6.27
 - 判型
 - A5
 - 頁数
 - 320ページ
 - ISBN
 - 978-4-297-14992-5 978-4-297-14993-2
 
概要
現代のビジネスシーンにおいて、データサイエンスの活用は競争優位性を確立するための鍵となっています。しかし、多くの企業が「データをどうビジネス価値に結びつけるか」という共通の課題に直面しています。特に、生成AIの進化により分析技術が身近になった今、データサイエンティストには単なる技術力以上に、「曖昧なビジネス課題を、データサイエンスで解決可能な具体的な問題へと的確に変換する能力」が強く求められています。
本書は、この重要な「問題変換能力」を養い、データに基づいた最適な意思決定を導くための実践的な指南書です。その核となるのが、著者が提案する「3ステップフレームワーク」です。このフレームワークは、複雑で捉えどころのないビジネス課題を前に、数理最適化、数理モデル、そしてデータの力を統合的に活用することで、具体的なアクションを導出するための体系的なアプローチを提示します。
ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
最初のステップでは、解決すべきビジネス課題を数理最適化問題として明確に定義します。具体的には、「何を最大化または最小化したいのか」、「そのためにどのようなアクションが取れるのか」、そして「守らなければならない条件は何か」を数式を用いて具体的に表現します。このプロセスを通じて、課題の核心が明らかになり、分析の方向性が定まります
ステップ2:数理モデルを構築し、未知のパラメータをデータから推定する
次に、ステップ1で定式化した最適化問題を解くために不可欠な「アクションと成果の関係性」を明らかにします。多くの場合、この関係性は未知であるため、数理モデルを構築し、手元のデータを用いてモデル内の未知のパラメータを推定します。この際、分析対象のデータ生成過程に対するドメイン知識を活用し、分析者の仮説を数理モデルに反映させることで、現実に即した妥当性の高い推論を可能にします
ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
最後のステップでは、ステップ2で関係性が明らかになった数理最適化問題を実際に解くことで、ビジネス課題に対する最適なアクションを導出します。これにより、勘や経験だけに頼るのではなく、データに基づいた客観的で合理的な意思決定を行うことが可能になります
本書では、この3ステップフレームワークを、テレビCMの効果測定といった具体的なビジネス事例を通じて詳細に解説します。読者は、単なる理論学習に留まらず、実務の現場でどのようにフレームワークを適用し、具体的なビジネス価値を生み出していくのかを深く学ぶことができます。
データサイエンティスト、データアナリスト、機械学習エンジニア、そしてデータサイエンスをビジネス成果に繋げたいと考えるすべての人にとって、本書は課題解決のための強力な思考ツールとなるでしょう。
こんな方にオススメ
- データサイエンティスト
 - データアナリスト
 - 機械学習エンジニア
 
目次
はじめに
- 0.1 ビジネス課題とデータサイエンス
 - 0.2 本書のアプローチ
 - 0.3 本書の構成
 - 0.4 本書で扱わないトピックと関連書籍
 - 0.5 本書で用いる数式の記法
 - 0.6 本書で用いるPythonコード
 
1章 ビジネス課題を解決する技術
- 1.1 ビジネス課題とデータサイエンスの問題
- 1.1.1 データサイエンスの問題と数学の文章題
 - 1.1.2 ビジネス課題と文章題のギャップ
 
 - 1.2 ビジネス課題を解決するためのフレームワーク
 - 1.3 ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
- 1.3.1 数理最適化問題としての定式化
 - 1.3.2 なぜ数理最適化問題として定式化するのか
 - 1.3.3 条件付き期待値の導入
 - 1.3.4 なぜ条件付き期待値を利用するのか
 
 - 1.4 ステップ2:数理モデル構築し、未知のパラメータをデータから推定する
- 1.4.1 単純集計
 - 1.4.2 数理モデルの導入
 
 - 1.5 ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
 - 1.6 本章のまとめ
 
2章 マーケティングにデータサイエンスを導入する
- 2.1 マーケティング活動としてのテレビCM
- 2.1.1 マーケティングにおけるテレビCMの役割
 - 2.1.2 広告指標
 - 2.1.3 指標の測定
 - 2.1.4 テレビCMの出稿形態
 - 2.1.5 スポットにおけるグロスリーチとユニークリーチの関係
 - 2.1.6 実務における課題
 
 - 2.2 ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
 - 2.3 ステップ2:数理モデルを構築し、未知のパラメータをデータから推定する
- 2.3.1 データの準備と可視化
 - 2.3.2 機械学習モデルによる推定
 - 2.3.3 線形回帰モデルによる推定
 - 2.3.4 対数変換による推定
 - 2.3.5 既存の予測モデルの限界
 - 2.3.6 CM接触の数理モデルの構築
 - 2.3.7 ポアソン分布によるリーチカーブの推定
 - 2.3.8 負の二項分布によるリーチカーブの推定
 
 - 2.4 ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
 - 2.5 本章のまとめ
 - コラム:シミュレーションによる数理モデルの検証
 
3章 認知形成を数理モデリングする
- 3.1 ビジネス課題:製品認知率の改善
 - 3.2 ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
 - 3.3 ステップ2:数理モデル構築し、未知のパラメータをデータから推定する
- 3.3.1 求められるデータ
 - 3.3.2 データの読み込みと可視化
 - 3.3.3 機械学習モデルによる推定
 - 3.3.4 線形回帰モデルによる推定
 - 3.3.5 数理モデルによる問題の分解
 - 3.3.6 CM接触確率と製品認知率の関係
 - 3.3.7 個人差を考慮したモデルの拡張
 - 3.3.8 パラメータの推定方法
 - 3.3.9 数理モデルの実装
 
 - 3.4 ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
 - 3.5 本章のまとめ
 
4章 連続最適化で広告予算を配分する
- 4.1 ビジネス課題:広告予算配分の最適化
 - 4.2 ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
 - 4.3 ステップ2:数理モデル構築し、未知のパラメータをデータから推定する
- 4.3.1 必要なデータ
 - 4.3.2 データの読み込みと可視化
 - 4.3.3 機械学習モデルによる予測
 - 4.3.4 線形回帰モデルによる予測
 - 4.3.5 数理モデルの構築
 - 4.3.6 重複リーチのモデリング
 - 4.3.7 重複リーチの補正
 - 4.3.8 各媒体のユニークリーチの予測
 - 4.3.9 予測モデルの統合
 
 - 4.4 ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
- 4.4.1 最適解の算出
 - 4.4.2 最適化のインパクト
 
 - 4.5 本章のまとめ
 
5章 離散最適化で広告出稿番組を選択する
- 5.1 ビジネス課題:番組選択の最適化
 - 5.2 ステップ1:ビジネス課題を数理最適化問題として定式化する
 - 5.3 ステップ2:数理モデル構築し、未知のパラメータをデータから推定する
- 5.3.1 必要なデータ
 - 5.3.2 データの読み込みと可視化
 - 5.3.3 線形回帰モデルによる予測
 - 5.3.4 リッジ回帰による予測
 - 5.3.5 機械学習モデルによる予測
 - 5.3.6 数理モデルの構築
 - 5.3.7 数理モデルの推定
 - 5.3.8 数理モデルの実装
 - 5.3.9 データを用いた予測精度の検証
 
 - 5.4 ステップ3:数理最適化問題を解いて最適なアクションを導出する
- 5.4.1 離散最適化問題
 - 5.4.2 貪欲法による近似解の探索
 
 - 5.5 本章のまとめ
 - コラム:フリークエンシー分布の推定
 - コラム:合算のユニークリーチを各番組の貢献度に分解する
 
- 参考文献
 - 索引
 
プロフィール
森下光之助
REVISIO株式会社 執行役員CDO データ・テクノロジー本部長。東京大学大学院にて経済学修士号を取得後、データサイエンティストとして活動。現在はREVISIOにてデータ戦略の策定・実行を統括。データサイエンスの知見を活かした実践的なデータ活用を推進している。REVISIOでのデータ基盤移行プロジェクトはSnowflake社の「DATA DRIVERS AWARDS 2023」で最高賞を受賞。機械学習モデルの解釈性を扱った著書『機械学習を解釈する技術』は「ITエンジニア本大賞 2022」技術書部門ベスト3に選出された。