できる知的ワーカーはなぜ体を鍛えるのか? 頭をフル回転させる人が⁠体力トレーニングにはまるワケ

  • 『仕事でモテる男はなぜ、体を鍛えているのか?』
  • 『お金を稼ぐ人は、なぜ、筋トレをしているのか?』
  • 『筋トレが最強のソリューションである』

いずれも最近出版されて売れている本のタイトルだ(ただし他社のもの⁠⁠。単純な仕事はITに置き換わり、知的労働者はよりクリエイティブで高度な仕事に頭を使うことが求められている。そんな中で肉体回帰とでもいう現象が起きている。なぜだろう。

一日12時間はPCの前に座って画面をにらみ、キーボードを叩き続ける。終電で帰るころには視力は著しく低下、肩や腰はコリコリになって、服を脱ぐのももどかしくベッドに倒れ込む。そんな生活が365日続いて、いい仕事ができるわけがない。

パフォーマンスを出す人は、ひたすら業務に時間を使う人ではない。見えないところで自分の心とカラダのメンテナンスをきっちりしているのだ。とくに精神面の疲れは溜まるとやっかいなもの。朝ベッドから体を起こすのもつらくなると黄信号だ。

心を元気にする原点となるのが実は自分のカラダ。こんな実験結果がある。うつ病の人が、有酸素運動をしたら改善したというのだ。1999年、米デューク大学で50歳以上のうつ病の男女156人を対象に、薬だけ、運動だけ、薬と運動という3つのグループに分けた治験を行った。運動は1回30分のトレッドミルでのウォーキングかジョギングを週3回。

4か月後、3つのグループとも60%以上の被験者に改善が見られたが、注目すべきはさらに6か月後の追跡調査。薬だけのグループは38%が再発、薬と運動を併用したグループは31%が再発したが、運動だけのグループは8%と、90%以上が効果を維持できた。運動で自ら改善したことで達成感と自己評価が高まり、それが好循環を生みリバウンドを防いでいると考えられる。

『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者でハーバード大学医学部臨床精神医学准教授のジョン・J・レイティは、運動はセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンといった神経伝達物質の放出を促し、精神疾患の重要な薬と同様の効果があるといっている。

また、筋トレなど筋肉に強い負荷を与えると、テストステロンというホルモンの分泌が促進される。テストステロンは若返りホルモンや社会性ホルモンともいわれ、カラダの健康と同時に、積極性や意欲といった精神面にも大きな効果を与える。

冒頭で紹介したような本が相次いで出版されたことで、こういった知見がビジネスパーソンには常識になりつつある。現代、パフォーマンスを上げたい人は、こぞって運動の時間を意識して確保するようにしている。

知的労働をしている人は、もともと知力を高めることで生きてきたので、スポーツより読書に割いてきた時間が多いはず。そのうちの2%の時間でも運動に割くことによって、残り98%の知的活動のパフォーマンスが大きく改善するとしたらどうだろう? 運動は1日15分でも十分に効果がある。

運動の効果を持続させるには無理なく継続すること。それには自分の好きなことから始めるのがいい。筋トレ、ラン、自転車、水泳、山歩き、どれをやっても効果はある。はじめての運動に不安がある人は、ここで紹介する本をまず手に取ってみてほしい。読み終わったころには、すぐに始めたくなるはずだ。