Huawei問題 その後…
安全保障や外交上の驚異を理由に、米商務省が中国の通信機器大手のHuaweiを輸出管理規則に基づく禁輸措置対象のリスト(エンティティ・リスト)に登録したことが発表されて、アメリカ政府の許可なくアメリカ企業からの部品や技術が輸出できなくなり、Huaweiはスマートフォンの開発に必要な部材やソフトウェアの調達が困難になっています。
前回、この話題について取り上げましたが、新たな動きがあったので今回も取り上げます。
SD標準化団体へ復帰、Wi-Fi Allianceへも
前回、HuaweiがSD標準化団体から除名されたことにより、自社製品でSD規格が使用できなくなると報じられましたが、原稿執筆時点ではHuaweiがメンバーとして復帰をしており、SD Associationのホームページで「Huawei Technologies Co., Ltd.」の名前が確認できます。
一時期、Huaweiの名前がなかったのは事実です。復帰の理由は不明です。
また、Wi-Fi規格を策定するWi-Fi AllianceがHuaweiの参加を一時的に制限したとも報じられました。この制限は標準化の検討に参加できないものでしたが、現在はスポンサーとして「Huawei Technologies Co., Ltd.」の名前が確認できます。
いずれもHuaweiの働きかけによる成果なのかもしれませんが、先週の騒ぎは何だったのか?と思わせるほどあっけなく沈静化しました。ともに、本拠地をアメリカに置く団体ですが、政治とは切り離して動くべきなので、時間の経過とともに冷静な対応がとられたと考えるのが順当かもしれません。
Huawei独自OSが少しだけ明らかになる
HuaweiはAndroidの代替OSとして、独自OSを開発しているうわさが以前からありました。本連載の2016年6月第5週でもこの話題に触れたことがあります。
その独自OSが少し明らかになってきました。
5月24日に、独自OSの名称をヨーロッパで商標登録したとAndroid Policeが報じています。この名前は「ARK OS」とされています。中国では「HongMeng OS」の名前で商標登録されていることから、グローバルでARK OSの名称が使われるとされています。このOSは、早ければ今秋にもリリースされるのではないかとのうわさもあります。
ARKの名称は、EMUI 9.1に搭載されるアプリ実行用の仮想マシンにも使われています。この名前は「ARK Compiler」と呼ばれ、Huaweiが開発したものでAndroid標準の仮想マシン「ART」に置き換わるものです。
ARK Compilerは、システムの処理速度が24%向上、応答速度が44%向上、サードパーティ製アプリを60%高速化するとしています。YouTubeには、Samsung Galaxy S10+とHuawei P30 Proの動作を比較する動画が公開されています。この動画を見ても動きの違いは明らかでHuawei P30 Proの方がスムーズです。
GIZMODECHINAでは、ARK Compilerはオープンソースになると報じられています。
端末メーカがAndroidの根幹に関わる機能を自社開発するのは、Androidを使う意義までも問われます。しかし、ARK Compilerは、ARK OSの成果の一部を先行リリースしたと考えれば不思議ではありません。このARK Compilerを搭載したEMUI 9.1は、P30やP20、古くはP10まで数多くの端末をサポートします。
やはりチャンスなのかも
今回の件は、Huaweiがこれまで進めてきたことを、花開かせるチャンスなのかもしれません。
Androidに絞ってみれば、課題はGoogleサービスが使えないことですが、GoogleはEUの独占禁止法違反の制裁を受けて、EU圏ではAndroidに搭載するGoogleサービスの有料化を発表しています。これが突破口になる可能性はあります。また、ARK OSがヨーロッパで商標登録されたのも関係がありそうです。
今週は、このあたりで、また来週。