と述べています。
mixiのこれから、2012年に向けた新たなるステージ―株式会社ミクシィ笠原健治氏に訊く
http://gihyo.jp/design/column/01/social/2011/mixi
こうしたライトなコミュニケーションは、前述のノンバーバルやロケーションにも連動しているため、私自身、2012年もこうしたコミュニケーションが主流なものになっていくと予想しています。
直感的なコミュニケーションの先は?
ノンバーバル・ロケーション・ライトを実現した「Path」
これまで紹介した3つのコミュニケーションの特徴をうまく反映したサービスの1つが「Path 」です。これは、iOS/Android向けのアプリケーションで、写真や位置情報、さらに音楽やコメントを共有できるサービスとなっています。
2011年12月に大幅リニューアルされ、UI(ユーザインターフェース)が改善されたり、それまで50名までに限定されていたフレンド数を150名に増やすといった仕様変更が行われました。この、ユーザ限定で醸し出せる雰囲気、そして、特徴的なUIから、2011年末から2012年始にかけて大幅にユーザ数を伸ばしています。私も使っているのですが、とくに、ユーザ限定という部分と投稿しやすいUIが、ノンバーバルかつライトコミュニケーションにマッチしていると感じています。
図 2011年後半から注目を集め始めた「Path」
直感的なコミュニケーションの難しさ
さて、ここまでコミュニケーションの特徴から2011年のソーシャルネットについて振り返り、また、それを実現しているサービスを紹介しました。
ライトなコミュニケーションからもわかるように、今、ソーシャルネット上の人のつながり、コミュニケーションは「直感的 」になってきているのです。これはポジティブな関係性を構築する上では、( 時間的ロスもなく)非常に良い傾向ではありますが、つねにポジティブな関係性につながるとは限りません。
というのも、ノンバーバルやライトなコミュニケーションと言うのは、場合によっては説明不足に陥り、結果として自分が意図しなかった表現を生み出してしまう危険性があるからです。たとえば、「 いいね!」という表現について、言葉のとおり「良い」という意味で使っているのか、あるいは単に「見たよ」という意味で使っているのか、捉え方1つで、相手に伝わる気持ちは変わってしまいます。もしそうなると、ユーザ同士のトラブルやソーシャルネット上の炎上といった悪い事象につながってしまうのです。
ただ、これは直感的なコミュニケーションに限らずソーシャルネット上であればつねに起こりうる問題でもあります。というのも、ソーシャルネットが普及したことで誰もが発言しやすく、また、他ユーザの言動を引用しやすくなってきているからです。
この点について、株式会社コンセント代表取締役長谷川さんは「今のネットのつながり、スピード感では、言葉が独り歩きして、間違って伝わる可能性、転送される可能性があります。どんな文脈であってもどう使われるかはわからない時代です」と、2010年末の時点で述べています。
キーパーソンが見るWeb業界~第16回 ソーシャルメディアの次の展開
http://gihyo.jp/design/serial/01/key-person/0016
複数のソーシャルがつながることの良し悪し
もう1つ、ソーシャルネットのコミュニケーションを考える上で意識しておきたいのが、多くのソーシャルネットがつながりやすくなってきていることです。どういうことかというと、たとえばOpenIDと呼ばれる技術によって複数のサービス間で同じユーザIDを使えたり、また、Web APIを利用するサービスが増えたことで、1つの投稿を複数のサービスに対して同時に行える環境が整備されてきていることです。
通常の場合、ユーザIDの連携や複数投稿については、ユーザ自身が確認してから行えるようになりますが、たとえば、自分としては限定公開した投稿内容を誤って別のサービスにも投稿してしまい、さらにそこでつながっているユーザが共有してしまい拡散する、といった状況も起こりえます。また、とあるサービスでは利用者年齢制限が18歳だったものが、もう1つのものでは制限無しとなっていた場合に、その2つのサービスに対して複数投稿をすることで想定外のユーザに情報が伝達していく可能性があります。このあたりの情報伝達の仕方とスピード、そこから生まれるつながりの多様化は、リアルな社会ではあまりなかった特徴ですので注意しておきたいものです。
このようなことに対して、あえてアドバイス的なことを述べるとすれば、私個人として心がけているのは「ソーシャルネットに投稿する内容は、どのユーザの目にも触れてしまう可能性がある」と考えてソーシャルネットを利用しているということです。また、ソーシャルネットも(ソーシャルとついているように)社会の1つであるわけですから、「 ネットだからと軽んじるのではなく、日常的な社会生活と同じような人と人とのつながりを意識し、ルールは守っていくべき」と私は思っています。それに、リアルなコミュニケーションと異なり、自分の顔の表現や声色が伝えにくいという前提でコミュニケーションを図っている点にも注意したいものです。
時間軸が加わってくる2012年のソーシャルネット
最後に、2012年のソーシャルネットの展望について考察します。
直感的なコミュニケーション、つながりの多様化という流れはますます強くなっていくはずです。そして、2012年は、そこに「時間的な感覚」が増えていくと考えています。その最大の理由と考えているのが、2011年12月に一般公開されたFacebookのTimeline機能 です。
これまでの主なソーシャルネットのうち、FacebookやTwitterには時間的蓄積の概念は少なく、どちらかというと瞬間瞬間を表現する、いわゆる「今」をつなげるコミュニケーションが主軸に置いてありました。その中で、mixiには日記という機能があり、時間的アーカイブとしてのソーシャルネットの特徴をも持っていましたが、mixiの場合、クローズドなソーシャルネットである側面が強く、( ユーザ自身が)オープンに時間軸を意識するケースはあまりありませんでした。
しかし、FacebookのTimeline機能の登場により、よりオープンな環境でソーシャルネットの時間軸、とくに過去に遡れるという意識が強くなると予想できます。たとえば「自分がいつFacebookに参加したのか」「 去年の今頃は何をしていたのか?」「 大学時代の出来事ってなんだっけ?」などなどです。自分自身のことではあるので、ユーザ自身はそれほど強く意識しないかもしれませんが、自分以外、たとえば、新たにつながったユーザ、あるいはこれから繋がるであろうユーザに、時間軸の観点で見たユーザプロフィールを伝えられる状況が生まれ、そこから新しいソーシャルグラフが生まれていく可能性があります。
こうしたソーシャルネット上での時間軸を踏まえた感覚は、ユーザに新たな感覚を生み出させるのではないでしょうか。とくに、デジタルデータになっていることで、( 記憶だけに頼りがちな)リアルな生活と比較して、過去の出来事に直接的、そして鮮明に辿りつくことが可能になります。こうした背景から生まれる新たな感覚が、これからのソーシャルネットを楽しむポイント、あるいは利用する上で注意するポイントになっていくと、私は考えています。
ソーシャルネットの醍醐味はサービスの機能ではなく、人と人とのつながりから生まれるコミュニケーション
日本でmixiが登場してから今年の2月で丸8年を迎えます。すでにソーシャルネットを使い始めて5年、6年、あるいは8年というユーザの方も多くいらっしゃると思います。また、インターネットを使い始めた時点で、すでにソーシャルネットも活用しているというユーザの方もいらっしゃるでしょう。2012年はそうしたソーシャルネット経験値が異なるユーザが、さまざまなサービス上で交わる機会がより一層増えるはずです。そこで生み出される「ユーザ同士の活発なコミュニケーション、それこそがソーシャルネットが持つ醍醐味」だと私は感じています。2012年、今年はどういったソーシャルネットライフが過ごせるのか、今から楽しみです。