編集者に刺され、編集者をさらすのは“ブランディング”です
- 「この連載の第3回から、ヒール役として登場しています」
と、このコラムを担当している傳智之さんは(私がコッソリと見つけた)ソーシャルネットワーク上でこんな反応をしていました。
私の別の連載の担当編集者である吉岡綾乃さんに至っては「私もチクッと刺されないように気をつけよう」と言う始末。
こういう楽屋落ち的な書き出しを続けていると「なんだよ、身内のグタグタした話か」とお叱りの声も飛んできます。
しかし、これは私なりの“ブランディング”なのです。
いつまで継続できるのかわからないこの連載は、まだ5回目ですが、こういう書き出しを続けていると、読者の皆さんもだんだんと慣れてきて「ああ、また書いている」と思ってくれるかもしれません。もしかしたら、たまに楽屋落ち的な話がなかった回などは「あれ、今週はないのか」と、寂しがってくれるかもしれません。
エンジニア出身ではない採用担当者は、自分のわかる範囲でしかブランディングをしない
じつは、エンジニアを「転職したいと翻意させる」中期的な視野に立った技術は、「ブランディング」に尽きるのです。
前回も書きましたが、エンジニアに限らず、従業員が転職を考えるときは、その企業にいられなくなる/いたくなくなる、のどちらかの理由です。突き詰めてしまうと、それ以外にはありません。
企業の採用担当者と話をしていると、「自社のブランディング」にはとても気配りしています。どんなイメージを持たれているのか、そして、そのためにはどんなアウトプットをすればいいのか。真剣に考えていないという採用担当者はいないでしょう。
しかし、残念なことに「エンジニア出身ではない」採用担当者は、自分のわかる範囲でしかブランディングをしません。そもそも「エンジニアに向けたブランディング」など、想像もできない人も少なくないのです。
エンジニア向けのブランディングで考えるべき、たった4つのこと
- 「エンジニア向けのブランディングって、なにをすればいいのだ!」
この連載を読んでいるエンジニアの方ならわかっていることでしょうが、エンジニアの採用に苦戦している採用担当者の皆さんにはサッパリわからない話だと思うので、かんたんに整理してみましょう。
エンジニア向けのブランディングは、じつはそれほど難しいことではありません。
すばらしい環境で、すばらしい仕事を、すばらしいエンジニアたちが、すばらしい待遇でやっていることを、広報すればいいだけです。
お叱りが飛んでくるのを承知で書きました。「それができれば苦労はない!」というブーイングの嵐でしょう。
しかし、考えてもみてください。上記のような状態になっていれば、エンジニアの採用で苦戦することはありません。もちろん、エンジニアの「質」という点で、「ジーニアスな人が採用できない」とか「極めて有能なエンジニアを大量に確保できない」という問題は発生するでしょう。しかし、いまエンジニア採用は「それ以前の問題」を抱えています。
自社のエンジニア採用が苦戦中であるという採用担当者の方は、以下の4点をあらためてチェックし直してほしいのです。
- 自社はすばらしい環境なのか?
- 自社はすばらしい仕事を与えているのか?
- 自社にはすばらしいエンジニアたちが在籍しているのか?
- 自社の待遇はすばらしいのか?
しかも、単なる採用担当者の目線ではなく、エンジニア目線で(周囲のエンジニアに協力してもらうことをお勧めします)再確認を。こういう当たり前のことをいくら口が酸っぱくなるほど言っても、わかってくれない人は意外に多いのです。ただ、裏を返せば「当たり前のことなのにできていない」のが現状といえるのかもしれません。
エンジニアの気持ちがわかっている人だけが、エンジニアに好かれる
こんなことを書いてしまうと話を混ぜ返してしまうことになるのかもしれませんが、先ほどの「すばらしい」は、「じつはもう実現できている」というケースも少なくありません。もしかしたら、じつはすばらしいのに、
- エンジニアにとってのすばらしさを、採用担当者が理解していない
- 外のエンジニアに対して、自社のすばらしさを伝えられていない
でいることも多いのです。
このことが理解できている企業は、エンジニア以外の人から見たら、そこそこの環境で、まあまあの仕事、ほどほどの人材で、適度な待遇であっても、美味く(=あえて上手くではなく)ブランディングをして「エンジニアオリエンテッド」もしくは「エンジニアファースト」な企業としてのイメージを作り上げることに成功しています。
そう、「エンジニアの気持ちがわかっている人たちだけが、エンジニアに好かれる」という構図なのです。
これらのことは、一朝一夕ではできません。ただ、抜本的に手を入れるとなると相当な長期戦が予想されますが、わざと視野を“中期的”と絞ってしまうと、「中期的だったら」できることが浮かび上がってくるはずです。
たとえば、「エンジニアファーストの企業と思われるように、ブランディングする」と決めてしまう。いままで見たこともなかった、エンジニアたちが開催しているイベントやカンファレンスに関心を持ち、スポンサードしたり、参加しているエンジニアへ援助を行ったりする。それだけでも、イメージは変わってきます。
大切なのは、自分自身も参加してみることです。エンジニアが好きなことがわかれば、エンジニアに好かれる方法だって見つかるのです(私がプロデュースしているCodeIQに参加してみるのもアリ)。
- 「当たり前なはずなのに、あきらめていたことをちょっと見直す」
まずはそこから始めてみてください。
次回は、長期的な視点で「エンジニアを転職したいと翻意させる技術」を解説します。連載のサブノート的なブログも併せて読んでみてください!