会社で「ポエム」を綴ろう! ~ポエム駆動で理想を語ると社内の風が変わる!~

第3回「ポエム」どうやってピクシブ社内へ広まったか?

ピクシブでは「ポエム」によって開発が駆動しています。第3回は「ポエム」がどうやってピクシブの社内へと広まっていったかを、節目となる出来事やその時の「ポエム」とともにご紹介します。⁠ポエム」で開発を活性化する際に参考にしていただければ幸いです。

ポエムが会社にやってきた

日常の中で出たエモーショナルな想いを共有して欲しい。そんな想いのこもった「ポエム」とともに、⁠ポエム」とesa.ioというドキュメント共有サービスがピクシブにやってきました。

図1 esa.ioというドキュメント共有サービスがピクシブにやってきた
図1 esa.ioというドキュメント共有サービスがピクシブにやってきた

導入の経緯については、前々回前回でご紹介しておりますので、ぜひご覧いただければと思います。

初期の利用状況

さて、新しいツールとしてピクシブにやってきたesa.ioですが、導入初期からエンジニアを中心に、10~20人単位での利用が行なわれるようになりました。初めの1週間ほどでエンジニアの技術資料・雑記・思いつき・外部勉強会のメモ書きなど約30記事程の投稿が投稿されていたようです。

図2 初めの1週間ほどで約30記事程の投稿が投稿されていた
図2 初めの1週間ほどで約30記事程の投稿が投稿されていた

「ポエム」と新しいツールであるesa.ioがピクシブに浸透した背景には、大きく分けて2つの理由があったと考えています。

1つは、初期段階において以下の社内に広めていく工夫を行ったことです。社内に向けて継続的に利用を促していくことで、利用するメンバーの数は増えていきました。

  • 社内の全メンバーに向けて、導入の意図をプレゼンテーションし率先して「ポエム」書きとレス返しを行う
  • 「ポエム」更新がグループチャットによってリアルタイムに通知される仕組みづくりを行う

2つめは会社組織の拡大に際して発生していた問題です。当時、会社組織が拡大する中で、業務効率化として以下のことが行われていました。

  • チームや業務範囲の細分化
  • 全体へ情報共有の場の削減

結果として、自分の考え・想いが会社の皆に共有しづらい、という閉塞感が出てきていたように思います。共有のハードルが低い「ポエム」という手段が提供されたことで、それまで抱えていた考え・想いが投稿されるようになりました。

ポエムとは何か? の議論が発生

さて、⁠ポエム」を書くメンバーが増えてきた頃、⁠ポエム」とは何なのか? という議論が発生します。

図3 ⁠ポエム」という単語について
図3 「ポエム」という単語について
結局のところ「文書」っていうお固い単語を柔らかくして、誰でも気軽に独り言だったり想いだったり、それこそ本当にお固い感じのまとめだったりを作れるようにしたい、っていう意味が「ポエム」に込められているんだと僕は解釈しているんだけど、そのあたりの文脈が伝わってないとただの「おふざけ」に取られてもおかしくないなあ、とも思っています。
お固く「ポエム」という単語が指す意味を定義する必要はないけど、どういう文脈から生まれた言葉なのか、それがわかるポエムがどこかにあると良いのかなーと思いました。

この疑問に対しては、筆者が返答のポエムを投稿しました。

なぜ「ポエム」というのか

ビジネス文章と言うと、整合性がとれており後から追跡して検証できる事が重要ですが、その分エモーショナルな要素が欠落しがちです。
・日記というと、その日の事以外は書きにくいです。
・日報というと、ビジネス文章の香りが強くなります。
・チャットやTweetでは、端的な発言のやりとりになってしまい、発言の情報量が乏しいです。またまとまった考えを発信するための道具ではないため、その場のひらめきを即時に書くという感じになります。

何らかの感情の発露を自分の中で反芻してとりまとめた表現した文章、こういう事柄の共有は意外と普段の仕事の中で発信しにくく後に残りにくい。にも関わらずそういうエモーショナルな事柄は我々にとって非常に重要なのです。

では共有すべき「何らかの感情の発露を自分の中で反芻してとりまとめた表現した文章」とは一体なんなのでしょうか。

  • 共有を必要としない内容であれば、書く必要はない。
  • 技術的な資料であればWikiに書けば良い。複数乱立しているのは無駄だ。
  • 盛り上がるだけの話題なら、チャットツールで行えば良い。

ピクシブではesa.ioの導入以前から、Wiki、issue管理ツール、チャットツールなどでドキュメントの共有が行われていました。従来よりより気軽なドキュメント共有ツールという側面は持っているものの、個人のメモ書きではなく社内へのドキュメント共有ツールとして使う以上、情報の乱立を防ぐためにも、これらの既存ツールとの明確な差別化が必要でした。

「ポエム」とは何のために、誰に向けて書くものなのか。使い方が模索されていくなかで、一つの「ポエム」が投稿されました。

これが俺たちのポエムだ

図4 これが俺たちのポエムだ
図4 これが俺たちのポエムだ

このポエムは普段アプリを開発しているメンバーが、PC版pixivの機能改善案を書いたものです。

  • 便利そうなのはわかる。だが問題もあって……
  • なるほど。解決案を思いついたんだが……
  • そもそもこの機能の設計思想とは……

とても興味深いことに、投稿にはすぐさま10を超えるコメントがつき、PC版の開発を行うメンバー以外にも、UIチーム・グロースチーム・マーケットチームなど、様々な部署のメンバーを巻き込んだ議論へと発展しました。

通常、自分の業務範囲以外のプロダクトに関しては、バグやクリティカルなエラーで無い限り、要望や意見を伝えるのを尻込みしがちです。仮に機能改善などの要望を伝えたとしても、担当チームのMTGで検討が行われ、後日議事録の形で決まったことを知る、という関わり方が多いと思います。これは、口頭ベースでの議論、あるいは従来のドキュメント共有ツールでは解決しない問題でした。

  • 気軽に自分の役割を超えたサービスについて語れる
  • コメントで部署・時間的制約を超えて議論ができる

上記特徴を備えたesa.ioは、意見・要望を出し、それを議論するのに最適なツールだったのです。

このような、改善案を投稿するポエムが徐々に増えていくことで、業務の中で、自分の役割を超えてサービスについて語れる場所、夢の提案とそれに向けた議論の場として、着実にhttps://esa.io/はピクシブの中に根付いて行きました。

とりあえず「ポエム」

esa.ioが社内で浸透していくことで、⁠とりあえずポエム」という文化が流行しました。これは、日常会話の中でサービスの機能改善の話が出た時、飲み会で新サービスの話で盛り上がった時など、その話題をとりあえず「ポエム」としてesa.ioに投稿して、後でコメント上で議論しようという意味です。

「とりあえずポエム」には以下の利点があります。

  • 普段個人の手帳にしまわれていた改善案・機能案が共有される
  • 最初の会話に参加していなかったメンバーも、⁠ポエム」を読んで議論に参加できる

社内のメンバーが日々感じていることが、⁠ポエム」の形で共有されるようになり、その話題に共感できる多くのメンバーを巻き込んで議論ができるようになることで、社内一体となってサービスを作っていっている、という空気をより強めることができました。

みんながポエムを書く時代

現在では、エンジニア・非エンジニア/日本・海外メンバーなどの垣根を超えて、自分の進めている仕事への想いの表現や、それに対するコメント・議論を行う場所として「ポエム」は活躍しています。

図5 エンジニア・非エンジニア/日本・海外メンバーなどの垣根を超えて「ポエム」は活躍している
図5 エンジニア・非エンジニア/日本・海外メンバーなどの垣根を超えて「ポエム」は活躍している

まとめ

気軽な情報共有とそれを題材とした議論の場として、⁠ポエム」とesa.ioはピクシブの社内に浸透していきました。

しかし現在では、esa.ioは「ポエム」を超えたコミュニケーションツールとして、利用されてきています。次回は、現在ピクシブでesa.ioがどのように利用されているかについてご紹介します。

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