次のような手順になります。
- 書き出したすべての情報カードを「記録」「発見」「GTD」「参照」の4つに分類する。
- 方眼の情報カードを用いて、カード上部の方眼マスを分類に応じて塗りつぶし視認性を高める「タブ」の使用と、カードの絶対参照名としての日付と時刻を記入する。
- 分類のグレイゾーンを作らないために、カードを時系列順に並べてストレスフリーに管理する。
- 効率良く情報を収集し、一時的なメモリ(記憶媒体)としてメモ帳(野帳を推奨)を使う。
そして、2が1と3を実現するための書式であり、4が記憶のストック、およびび前処理装置であることを考えれば、PoICの真髄は、「4つに分類する」ことと、「時系列順に並べて管理する」ことだと言っていいでしょう。
つまり、PoICとは「4つに分類された情報が時系列順にストックされている状態」のことなのです。
上記の2つを実現するために、PoICでは方眼の情報カードを用いたり、管理収納するためにドックと呼ばれるカードボックスを使用したりしているわけです。
実際、タブによる視認性は、他のカードシステムにはない優れた点であり、PoICを他のシステムから区別するための、際だった特長になっています。
ですが逆に言えば、情報カードを用いないのであれば、方眼である必要もなく、方眼でなければタブを設けなくても良い、と言うことになります。つまりタブは、情報カードを用いたシステムにおいてのみ必須なのであって、それ以外のツールを使うなら、必ずしも必要というわけではありません。とにかく4つの分類が解りやすければ、PoICの「4タグ」思想は実現できていると考えて構わないということになります。
では、情報カードに特化しているPoICメソッドを、なぜEBtで代替させようとするのでしょうか。それはEBtにはPoICの「4タグ」と、「時系列スタック法」を容易に実現できる機能が、アプリケーションの主だった特長として備わっているからに他なりません。
まず、EBtでは新規メモを作成すると、自動的にタイトル欄に「YYYY/MM/DDHH:MM:SS」という形式でメモ作成日時が挿入されます。これは任意のタイトルに変更することが可能ですが、「時系列スタック法」でメモを管理するなら、変更する必要はありません。メモを作成すれば、それだけで時系列で管理する準備ができるのです。このことが僕の中でEBtとPoICを結びつけました。
では、「PoIC4カード」はどのように実現させるのか。それにはEBtの特長でもある「リンク構造」を利用します。メモを時系列順に並べ、尚且つリンクによって4種類に分類することで、分類項目だけを抽出したり、メモの内容から検索することで、新たなカテゴリーを作成したりすることができ、それによって「知的エントロピーの解放」を成し遂げることができるようになります。
準備
EBtでPoICするための下準備を整えます。
まず、ルート直下に、以下のような構成で新規メモを作ります。
項目の前についている「A:」や「D:」はインクリメントサーチ用です。EBtを表示させ、キーボードで「A」を押すと「ドック」が選択されます。また「ドック」が「A:」なのはソートしたときに最上部に来させるためで、それ自体に意味はありません。その後の項目は「記録」が「Document」、「発見」が「Find」、「GTD」が「GTD」、「参照」が「Reference」の頭文字になっています。数字でもかまいません。PoICの「記録:Record」「発見:Discovery」「GTD:GTD」「参照:Cite」に微妙に対応していないのは、ひとえに並び順のためです。
次に、「ドック」の下に「XXXX年」を、その下に「XXXX年XX月」を作成します。これらはカードボックスにおける「見出しカード」の代わりになります。
続いて、「記録」の下に「XXXX年X月の記録」を作成します。最初から複数月分作成しても、一月毎でも構いません。
「発見」の項目は、知的再生産にとって最も重要な項目であるために、あえて細かく分類することはしません。
続いて「GTD」の項目です。ここではデビッド・アレン氏の提唱する「GTD」ではなく、「GTD+R」を導入します。「GTD+R」については後述します。
「GTD+R」直下に、「GTD+R」メソッドに従って、「INBOX」「TODAY」「WEEK」「MONTH」「SOMEDAY」「HOLD」の6つのメモを作成します。
「参照」にも小分類は設けません。この項目はまだ使用方法が定まっていないために、後々変更するかも知れません。
以上で、EBtでPoICする準備が整いました。
ツリー部はこのようなイメージになります。最近使っていないことが判ります。
運用
では、実際の運用方法です。
まず、今月のメモ(「2008年03月」)を「ホームメモ」に設定します。次に、日々の行動や考え、予定などのメモを逐次作成します。基本的に、当月の出来事として何かあれば、当月のメモにリンクしたメモを新規に作成します。次いで、作成したメモを、4つの分類にしたがってリンクしていきます。例えば、日記のようなものでしたら、「2008年03月の記録」にリンクを張ります。また、来月発売の本を買うというような内容のメモであれば、それはとりあえず「INBOX」にリンクします。このようにメモを蓄積し、リンクも張っていきます。
「記録」
毎日、起きている「自分がしたこと」の記録を、「記録」直下の「XXXX年X月の記録」にリンクしていきます。主には日記のようなものになるでしょう。その他に、小遣い帳、健康管理、その他雑多な今日起きたことを記し、リンクします。
「発見」
今日起きた出来事のうち、「自分が考えたこと」をリンクします。「発見」直下には小分類は設けていませんので、直リンクになります。知的再生産は、主にこのメモを見直しながら行われます。
「GTD」
運用開始当初、最初に利用するのは日々の予定管理、すなわち「GTD」の項目だと思います。メモの数も大量になるでしょう。しかし、PoICのGTDカードやEBtにおいて、本格的なGTDを導入するのは手順の複雑化を招いてしまいます。そこで、EBtでのPoICでは「GTD+R」を導入します。
「GTD+R」は太田憲治氏が提唱する『ゲーム感覚でできる「誰でも簡単に始められて、続けることができるGTD」』のことです。カードゲームの要素を取り入れ、プロジェクトなどの考え方を省いた、シンプルなルールが特徴です。
「GTD+R」に関してはgihyo.jpで連載されていた「GTDでお仕事カイゼン!」の「第6回誰でも始められるGTD+R(1) 仕事を成し遂げるためのカードゲーム」以降を参考にして下さい。
「GTD+R」のやり方について説明します。
まず、ドックの中の予定をすべて「INBOX」にリンクします。これが「山」になります。この「山」の中にあるメモを見直しながら、「タグ」を書き込みます。「タグ」はその予定の中で対応する動詞で、「買う」「見る」「行く」「作る」「申し込む」などとなります。
そして、この「山」を以下のように振り分けて、リンクし直していきます。
- 「TODAY」→今日やるタスク
- 「WEEK」→今週やるタスク
- 「MONTH」→今月やるタスク
- 「SOMEDAY」→いつかやるタスク
- 「HOLD」→他の人に依頼するタスク又は依頼中のタスク
リンクを張り直したら、「TODAY」の中のタスクを処理していきます。タスクが終了したら、その時点でメモに終了した日時を(Ctrl+D)挿入し、「TODAY」から、終了した時点の「XXXX年X月の記録」にリンクを張り直します。「GTD」あるいは「GTD+R」ならば、タスクの終了時点でメモを削除してしまうのでしょうが、あくまでも「PoIC」ですので、メモは削除しません。
新しいタスクを思いついたら、逐次「HOME」である、「ドック」の、「XXXX年XX月」直下に作成し、「INBOX」にリンクします。とにかくメモはその内容がなんであれ、「ドック」の中に作成されます。
また、「HOLD」内の他の人に依頼しているタスクは、それに対する返事が返ってきた時点で新たな「タグ」を記入し、INBOXにリンクします。
EBtの場合、リンクを張り直す作業が「レビュー」になりますので、毎朝の「レビュー」で「INBOX」「TODAY」の中のメモを、毎週一回の「週次レビュー」で「WEEK」「MONTH」、毎月一回の「月次レビュー」で「WEEK」「MONTH」「SOMEDAY」の中のメモを見直し、リンクを張り直します。
「参照」
本からの引用など、「他人の考えたこと」をリンクする項目です。情報のソースを忘れずに記入します。
今のところ、本の題名をつけたメモを作成し、本のタイトルや著者名、出版社、価格等を記し、本を読みながら「ホームメモ」直下に取った複数のメモを、本の題名をつけたメモにリンクしています。
タスクフォース
EBtのメモを読み返し、メモ間にリンクを貼る作業を日常的に行っていると、やがて多くのリンクを含むメモが浮かび上がってきます。そのリンクを辿るうちに、それらのメモに共通なテーマが発見できるはずです。そうなったら、ルート直下に「タスクフォース」という名のメモを作成し、その直下に、そのテーマをタイトルにしたメモを作成してリンクを貼ります。これがタスクフォースに相当します。
タスクフォースを編成したならば、EBtの「書き出し」機能を利用して、ファイルに書き出します。その際に「べた」「階層付きテキスト」「html」の3種類の形式が選べます。僕が推奨するのは「階層付きテキスト」です。
「階層付きテキスト」を選択すると、起点となるタイトルメモから2階層分を書き出すことができ、そのファイルを、「TTextReader」や「WZNotes」といったZaurusのアプリケーションで、アウトライン表示が出来るようになります。「WZNotes」では直接、「TTextReader」では、「ZEditor」というエディタを呼び出して編集することが出来ます。SDカードに保存したり、あるいはメールに添付してファイルを送信すれば、PCのエディタで開くことも出来ます。
急ぎ足の概要だけの説明で申し訳ありませんが、以上のように運用することで、PoICをZaurus上で実行することできます。
まとめ
PoICは「情報を時系列順にストックする」、「すべての情報を4つのタグで緩やかに分類する」という基本を押さえてしまえば、それ以外のことは比較的自由に考えても構わないシステムだと思います。
そして、この2つさえきちんと理解していれば、5×3サイズの5mm方眼罫の情報カードにこだわらずに自由に拡張できます。こうした拡張性の高さが、PoICの魅力のひとつだと思います。そのひとつの例として、ZaurusでのPoICを紹介しました。
「Re:PoIC」は次回で最終回を迎えます。いま僕が立っている場所から振り返ってみると、PoICの荷台に厄介になりながらの僕の旅は、結局のところPoICの4つのタグを巡る旅だったように思います。
「4タグ」とは一体なんなのか、ということがこの旅の目的だったのだと、辿り着いてから気づいているような有り様ではありますが、とにかくその問いについて、ひとつの答えを持つに至りましたので、次回でとりあえずの総決算をしようと思います。
次回は「Re:PoIC~Knowledge Navigator(ナレッジ・ナビゲーター)」と題して、PoICの捉え直しをしたいと思います。