6月9日、グリー株式会社主催のもと、六本木にて「Ubuntu 18.04 LTSリリース記念オフラインミーティング18.06 」が開催されました。今回はいつもと趣向を変えて、フォトレポートという形でイベントレポートをお届けします。
Ubuntuオフラインミーティングとは
Ubuntu Japanese Teamは主にグリー株式会社主催のもと、半年に一度「オフラインミーティング」を開催しています。
これはUbuntuが半年に一度4月と10月にリリースされるので、それにあわせてリリースパーティやりたいよねというのが、主な目的です。「 パーティ」なので食べ物も出ますしお酒も出ます[1] 。せっかくUbuntuユーザーが集まるのだからと前でセミナーをおこなったりしますが、別に後ろでセミナーの邪魔にならない程度の酒盛りをしていてもかまいませんし、なんなら手持ちのデバイスを広げて黙々とハッカソンを行っていてもかまいません。そういう「ゆるめ」のイベントです。
[1] 若い人も気軽に参加できるようにと、参加費は無料となるように心がけています。ただUbuntu Japanese Teamはただのボランティア集団です。過去に執筆した記事の原稿料・印税収入の一部やサイトのアフィリエイトなどをやりくりすることで、イベントを成り立たせています。
たまに勘違いされるのですがいわゆる「勉強会」ではありません。ただの「パーティ」です。 リリースパーティでUbuntuについて勉強したり、日々の疑問を解消したいのであれば、積極的に詳しそうな人に話しかけたり、自分からセミナー発表に立候補してください。特に後者は主体性をもって調べなくてはならないため、「 こうかはばつぐん」です[2] 。
[2] さらに誤解されている向きもあるのですが、「からあげ」はおまけです。メインはUbuntuです。 たしかに当日のアナウンスではからあげ関連が多めではあります。これはからあげは来場者の胃袋と心を満たすメインの飲食物であり、参加者の増減に合わせて分量を調整する必要があるためです。
ATNDのページにもあるように、今回のテーマは「 Ubuntu 18.04 LTSがやってきた! 」 でした。2年ぶり7回目のLTS(長期サポート版)であるUbuntu 18.04 LTSは、前回のLTSと比較するとなんかもういろいろ変わっています。長期サポート版ということで、14.04や16.04からのアップグレードを考えている利用者も多いでしょうし、今回からUbuntuデビューを考えているご新規さんも訪れるであろうことから、このテーマとしました。
なお、これまでのオフラインミーティングの様子は、次の記事を参照してください。
今回はほぼ写真だけのレポートです[3] 。きっとイベントの詳細は参加者の方々のブログに満ち溢れているでしょうから。
[3] 「写真+ひと言コメント」のような体裁ならRecipeにイベントレポートを書いてもいいよという方、次回以降に司会が募集した時はぜひ立候補をよろしくお願いいたします。用語の確認、よく聞いてなかった・わからなかった部分のフォローアップなどはJapanese Teamで行いますので、未経験者でも安心です。
Ubuntu 18.04 LTS!
Ubuntuオフラインミーティングの魅力は、なんといっても多種多様なバックエンドを持つ登壇者によるセミナーです。UbuntuのようなLinuxディストリビューションは、OSそのものの用途が多岐に渡る上に、仕事上の作業環境として使われることも多いため、とてもバラエティに富んだユーザーを獲得しています。
よってこれまでのオフラインミーティングのセミナーも、他のプラットフォーム的な特徴を持つソフトウェアのイベントと同じように、さまざまな用途で使われるUbuntuの話を聞くことができました。
今回はテーマが18.04だったこともあり、LTS関連がメイン……にはなりませんでした。そもそもWindows APIとかCentOSを利用した発表もありました。ただしそれぞれの発表において、LTSが話の枕やきっかけになっていたようです。
図1 なんの打ち合わせもなく司会の長南さん(左)から呼び出されて「いつものアレ[4] お願いします」と言われる小笠原さん(右)
[4] Ubuntuオフラインミーティングではリリースパーティを名乗っているにも関わらず、参加者から「リリースおめでとう」というセリフがイベント後半になってようやく出てくる伝統があります。だいたい最初に思い出すのが小笠原さんなので、今回は小笠原さんにその場でお願いしました。ちなみにお願いした時点で開会から1時間以上経っています。
図2 「 Ubuntu 18.04 LTSリリースおめでとうございます!」
UbuntuでRAW画像を取り扱う
トップバッターの発表は、関西から参加されたRakugouさんによる「UbuntuでRAW画像を取り扱う 」です。
図3 「 ボディは消耗品、レンズは資産」という含蓄のある言葉から始まる発表
Rakugouさんは、自身が保有するカメラである富士フィルムの「X-T2 」を元にUbuntuでRAW現像できるかどうか、そしてできるとしたらどんなソフトウェアが候補になるのかを紹介しました。
図4 人が居なくなるのを30分ぐらい待って撮影したの雪の宝泉院の写真も現像できた
RAW現像についてはdarktable の使い方を解説しました。本連載でも第474回 で水野さんが取りあげています。
しかしソフトウェアがRAW現像に対応していない場合は、そのソフトウェアがサポートする機種を中古カメラでもいいから購入するという選択肢が出てくるあたり、カメラに魂を縛られた人間の業の深さを感じさせます。なお、FUJIFILM X RAW StudioのWindows版はリリースされているようです。
Ubuntuの同人誌をUbuntuで書く
二番手は、あわしろいくやさんによる「Ubuntuの同人誌をUbuntuで書く」です。
図5 イベント後は横須賀で一泊されたあわしろいくやさん
team zpn が発行する『うぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪』や『ざっクリわかるUbuntu 18.04 LTS』の制作舞台裏を紹介しました。
図6 うぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪を支える技術。ちなみに他にもDockerやcloud-initが活躍している
なお、『 ざっクリわかるUbuntu 18.04 LTS 』は絶賛発売中です。また、『 うぶんちゅ! まがじん ざっぱ~ん♪』の最新号であるvol.8 が先日販売を開始しました。vol.8の内容は次のとおりです。ぜひお買い求めください。
Ubuntuではじめる楽しいゼミ運営
ポメラDM200にUbuntuをインストールする
Boomagaを使ってPDFを小冊子印刷する方法
Nano Pi NEOで作成するテレビ視聴環境
いつでも始められるmpv
らくごうさんちのノートPC事情
Ubuntuで心理学実験
国際イベントの招致を手伝ってみましたよ
技術書典4で冊子版『ざっクリわかるUbuntu 18.04 LTS』を頒布できなかった顛末
Ubuntu 18.04 LTSでWineを使ってみよう
三番手はWineのコントリビューターである、さがわさんによる「Ubuntu 18.04 LTSでWineを使ってみよう 」でした。
図7 Wineは1993年の開発開始から今年で25周年とUbuntuより10年以上先輩
Ubuntuには豊富なアプリケーション資産があるとはいえ、「 どうしてもWindowsのみ提供されているこのソフトウェアを動かしたい」ことがそれなりにあります。別のWindows PCを用意したり、仮想マシン上でWindows環境を準備するのとは別の案として使えるのが、このWine です。登場から25年、今でも活発に開発が続いているようなので、おそらく大半のユーザーの予想以上にきちんと動きます[5] 。
[5] たとえば第194回 ではさかもとさんがWindowsのDLLをWine経由で利用する方法を紹介していますし、第409回 ではいくやさんがUbuntuでWindowsソフトウェアのインストーラー(NSIS)を作成しそれをWineで試していたりします。
図8 LTSベースだと1.6.2から3.0へのビッグジャンプとなる
今回のさがわさんの発表では、改めてWineの導入方法から説明を始めて、どのように動作するのか、設定のポイント、うまく動かなかったときのチェックポイントに至るまで必要な情報が一通り揃っていました。おそらくWineを使ってみようというユーザーは、まずこの発表資料を読むといいのではないでしょうか[6] 。
[6] 筆者の個人的な見解としては、Wineとコンテナ技術は相性がいいのではと考えています。Wineは32bit版のパッケージをいろいろインストールし、ホームディレクトリをCドライブとして扱います。何よりWineで動かすWindowsバイナリの大半はソースコードが公開されていません。よってなるべくホストシステムとは隔離された環境で動かしたいところです。実際、第433回 ではKindle
UnlimitedをLXD上のWineで動かしていました。
一読者によるレシピ実践とその経過
最後がtoshi_kdさんによる「一読者によるレシピ実践とその経過 」です。
図9 当日入手した「平成」クリアファイルをかかげるtoshi_kdさん
なかなか硬派なタイトルですが、内容は本連載の第483回 の「UbuntuとOpenNebulaでもういちどクラウド環境を構築してみよう」を実際に試してみようという著者にとってはとてもうれしいであろう発表です。
図10 ただし諸般の事情によりCentOS 7での調査[7]
図11 「 執筆者へfeedbackしよう」
実際にこういう形でフィードバックがあると、執筆陣のモチベーションが一気にリミットブレイクします。ぜひ読者の皆様も、気になったRecipeを試してみて、その結果をアピールしていただければと思います。気になるRecipeがない場合はごめんなさい。精進します。
Ubuntu Japanese Teamによるリリースノートツッコミ
最後に余った時間を使って、Ubuntu Japanese Teamのメンバーで、Ubuntu 18.04 LTSのリリースノートのおもしろポイントを紹介しました。いや、本当はリリースノートを読み直そうという企画だったような気がするのですが、時間と登壇したメンバーの都合上、おもしろポイントメインの紹介になっていました。
この企画、思っていたよりも評価が高かったのと、リリースパーティの趣旨にも合致しているので、次回以降も積極的にやりたいところです。ただし問題は、次回のリリースノートが今回のそれの「ほぼコピペ」になっている可能性があることですが……。
じゃんけんの儀式に供される差し入れ
今回もさまざまな人から、いろいろな差し入れをいただきました。
日経Linux編集部からは、イベント前日に発売されたばかりの『日経Linux 2018年7月号』をご提供いただきました。本号の付録は、Ubuntu 18.04 LTS特集ということで、過去の記事のリファインや新規書き下ろしも含めて、Ubuntu Japanese Teamの一部のメンバーも執筆に参加しています。
図12 日経BP史上最厚(?)の付録になっているとのこと
ちなみに本誌のほうでも水野さんや長南さんが寄稿しています。特に長南さんの連載は「Linux 12星座占い」ということで、6月・7月のLinux運が気になる方におすすめです[8] 。
[8] ちなみに筆者のLinux運は「夏至が訪れるまで強運」「 この時期のボーナスは期待しろ」「 後半は良くもなく悪くもなく」とのこと。しかし、よくよく考えるともう夏至終わってしまったし、ボーナスが支給されるのは「後半」側なので、期待させつつ落とされた気分です。アドバイスどおりじっくり腰を据えてLinuxサーバーの構築に取り組もうと思います。
図13 付録DVDは参加者全員分に行き渡る数をご提供いただきました
しかも今回は参加者全員プレゼントとして付録のトールケース付きインストールDVDまで用意いただきました。今回トールケースにしたのは「5年サポートしているのだから、5年使えるものを」という考えかららしいのですが、「 思っていたよりコストがかかることがわかって、特別付録用の予算がほぼケース代に消えることになった」というおちゃめっぷりも。
図14 技術評論社からの差し入れ
本連載を掲載している技術評論社からは、直近の雑誌も含むさまざまな本をご提供いただきました。個人的に『統計思考の世界 ~曼荼羅で読み解くデータ解析の基礎』は目次だけで読みたくなるくらい面白そうな本だったので、さっそく電子版 をカートに放り込みました。
図15 諸般の事情で参加者全員プレゼントになった印刷版「ざっクリわかるUbuntu 18.04 LTS」
じゃんけんでこれらの景品をゲットされた方や参加者全員プレゼントを受け取った方は、ぜひSNSやブログなどで感想・アピールをしていただけると助かります。
これらの景品以外にも、一般参加者からお酒・食べ物の差し入れをいただきました。全部は把握できていないので個別の紹介はできませんが、この場を借りてお礼申し上げます。
図16(左図) 配信カメラに映るようお供えされる差し入れたち図17(右図) 開会前はからあげタワーもお供えされていました
120人分の食べ物と、その運営
注意:ここからは基本的に食べ物の写真しかありません。
今回は過去最大級だった前回からプラス5人となる130人の申し込みだったため、食事の量をどうするかが最大の懸念点でした。参加者が増えれば増えるほど、参加キャンセルによる誤差が大きくなりますので、単純にたくさん頼んでおけばいいというわけにもいきません。特に参加率は天候に大きく左右されます。多すぎず少なすぎずの塩梅が重要です。
実際、からあげは開催ごとに注文量を増やしても、食べきるまでの時間は同じという状態でした。そこで前回同様「参加者が来場したらとりあえず問答無用で炭水化物を胃袋にインサートする」 という悪魔の手法を使っています[9] 。
図18(左図) 今回はウェルカムなんとかの種類を……図19(右図) ……いろいろと増やしました
図20 もちろん炭酸でも胃袋を膨らましてもらいます
図21(左図) これだけあったオードブルも図22(右図) 飢えた(?)参加者たちの前にあっという間に消費される
また、前回まで懸案だった「生ハムをデプロイするのに時間がかかる」問題も、今回は調理用手袋を入手できたので大幅に改善しています。
図23 バックヤードでバラされる生ハムたち
図24(左図) 日本酒とワインは食後酒という扱いに図25(右図) いつの間にか獺祭も追加
次はUbuntu 18.10「Cosmic Cuttlefish」です
今回は簡単なフォトレポートとしてお送りしました。
まず最初に、前日の予報では大雨の気配だったにもかかわらず、会場まで参加してくださった皆様ありがとうございました。SNSやブログなどに感想を書いて、Ubuntuや差し入れの品を宣伝していただけると助かります。次回に向けての要望がある場合は、ぜひUbuntu Japanese Teamに届く形でご連絡ください。できる範囲で応えていきたいと考えています。からあげ関連以外で。もちろん次回があるなら発表したい、という要望も随時受け付けています。
最後になりましたが、今回もたくさんの方がこのイベントを裏や表で支えてくれています。毎回六本木ヒルズにある広い会場を提供してもらえている主催のグリー株式会社 には頭があがりません。
毎度のことながらCanonical、日経Linux編集部、技術評論社の皆様には「じゃんけん用に」とさまざま景品をご提供いただいています。ここ数回は参加者からの(なぜか主に日本酒の)差し入れも増えてきましたね。準備中はてんやわんやで、ろくに差し入れしてくれた人へのお礼や差し入れの品の紹介もできず申し訳ありません。
会場スタッフには早めに会場入りしていただき、買い出しから設営、受付に給仕っぽいことまでいろいろ手伝っていただきました。最近はいろんな人が忖度しながらがんばってくれるため、当日はだいぶ楽させてもらっています。「 この日にイベントやるんでよろしくおねがいします」と「今日はうまいことがんばってください」って発言を引き継ぐ人が出てくれば、そろそろ筆者は用済みになるんじゃないかと怯える日々です。
今回も@nekomatuさんが、Toggeterに当日のツイートをまとめてくれました 。
最後にJapanese Teamの身内ではありますが、司会の長南さんには毎度毎度じゃんけんやアナウンス、セミナーの前フリなどいろいろなマイク関連のお仕事をこなしてもらいました。また吉田さんには「からあげ(とついでに食料) 」の調達という重要かつ一番精神と頭と予知能力を使うミッションをこなしてもらいました。この2人がいるからオフラインミーティングが成り立っているので、この記事を読んだ方はぜひねぎらいの言葉をお願いします。
次はCosmic CuttlefishであるUbuntu 18.10です。もちろんリリースされたらなんらかのイベントを行うつもりです。おそらく平成最後のオフラインミーティングになることでしょう。今回参加できなかった方も、ぜひ次回は参加していただけたらと思います。
図26 コウイカ(Cuttlefish)のぬいぐるみ