2026年の6月20日、グリー株式会社主催のもと、六本木にて「Ubuntu 26.04 LTSリリース記念オフラインミーティング」が開催されました。今回はいつもと趣向を変えて、このイベントの様子をレポートします。
図1 Raccoon(26.04:下)とStingray(26.10:上)のぬいぐるみ
大雨の中のオフラインミーティング
Ubuntu Japanese Teamは主にグリー株式会社主催のもと、半年に一度「Ubuntuオフラインミーティング」を開催しています。
これはUbuntuが半年に一度4月と10月にリリースされるため、それに合わせてリリースパーティやりたいよねというのが、主な目的です。勉強会というよりはパーティという側面が強く、セミナーは開催するものの別に後ろでセミナーの邪魔にならない程度の酒盛りをしていてもかまいません。なんなら手持ちのデバイスを広げて黙々とハッカソンを行っても良いでしょう。そういう「ゆるめ」のイベントです。直近のオフラインミーティングの様子は次の記事などを参照してください。
新型コロナの流行に伴う各種イベントの自粛に伴い、2019年12月を最後にオフラインミーティング自体が開催されなくなっていたものの、2024年からは少しずつコロナ前と同じような体裁で復活しています。
本記事ではそんなイベントについて、セミナーの様子を中心に紹介します。ちなみにセミナーの雰囲気についてはYouTubeにも配信動画がアップロードされています[1]。またXのイベント当時の#ubuntujpのツイートやPosfieも参考になるでしょう。
DebConf27旭川のご紹介
最初は「DebConf27旭川のご紹介」です(YouTubeのリンク)。これ自体はセミナーというよりは宣伝になります。
Ubuntuの親とも言えるDebianプロジェクトは、毎年夏頃に「DebConf」と呼ばれる開発者イベントを開催しています。世界中のDebian開発者が一堂に会して、さまざまな事柄を協議したり、開発したりするイベントです。2024年は韓国の釜山、2025年はフランスのブレスト、そして今年はアルゼンチンのサンタフェで開催されます。
そんなDebConfが、来年の2027年8月下旬から9月上旬にかけて、日本の北海道旭川市で開催されることが決まりました。現在まだサイト等は準備されていませんが[2]、すでに定例会議が開催され、来年に向けての準備が始まっています。
海外から数百人規模の開発者が集まって、DebCampと合わせて2週間続けて開催されるイベントに遭遇することはなかなかないでしょう。ぜひこれを機に、スタッフとして参加することも検討してみてはいかがでしょうか。
図2 東京から旭川までなら、徒歩で197時間くらいかかるらしい
ちなみに今週末の6月27日(土)のOSC北海道では、より詳しい情報が得られる見込みです。そちらも参考にしてください。
新旧CPU9番勝負 〜Ubuntuが実用に耐えうるCPUはいつ頃のものか実測する〜
図3 一体何台のPCを今回のためにテストしたんだと、会場をざわつかせたいくやさん
次はいくやさんによる「新旧CPU9番勝負 〜Ubuntuが実用に耐えうるCPUはいつ頃のものか実測する〜」です(YouTubeのリンク、発表資料のリンク)。
AMDerを自認するいくやさんが、15年前に発売されたIntel Core i5-2400S「皆さん大好きSandy Bridge」やらそれよりは少し新しいAMD A12-9800Eから最近発売されたCPUまでIntel/AMDを取り混ぜて10種類(プラス2種類)の各種ベンチマーク結果を比較・紹介していきます。
ベンチマーク結果は動画や資料を見ていただくとして、個人的にはTDPの割にN100が思ったより健闘しているなぁという印象でした。
図4 たとえばカーネルビルドの比較
資料だけには書かれていない興味深い考察・事情の説明もありますので、興味のある人はまず動画で見てみることをおすすめします。
Wineの進化と改良
次はさがわさんによる「Wineの進化と改良」です(YouTubeのリンク、発表資料のリンク)。
WineのコントリビューターであるさがわさんはUbuntu 18.04 LTSリリース時のオフラインミーティングでも、Wineの話をしてくれました。
Wineと言えば1993年から開発が続いている、POSIX環境でWindowsアプリケーションを動かすための互換レイヤーです。
図5 Ubuntu 26.04 LTSには最新の一個前であるWine 10.0が入っているとのこと。10.0では32ビットライブラリが不要となったのが大きな違いらしい
Wine自体はいろいろとすごい技術が使われているわけですが、ただWindowsのアプリケーションを動かせるだけでなく、Direct3Dの実現などもポイントです。特にWine開発元のCodeWeaversと、Steam開発元のValveが共同開発しているゲーム特化型のWineである「Proton」では、ゲームサポートを充実させてきました。前回2018年の発表時点では何かやっているらしいという噂は聞いていたとのこと。
もちろんWineがあればなんでもできるわけではなく、ハードウェアに依存した操作、たとえばBIOSのアップデートとかをWindows版のバイナリでやろうとするのはリスキーであることも伝えています。「WineがあればWindowsいらない」とは言い切れないのも事実です。
発表ではWineのインストール方法や基本的な使い方、文字化け対策などの定番設定などを押さえつつ、ここ最近の進化から、Wineで遭遇した不具合修正の実例などを紹介してくれます。
図6 いくつもあるWineの進化の中から、数字のついた5件を紹介
特に新WoW64モードの対応やシェーダー言語(HLSL)のコンパイラの実装などの話を聞いていると、Wineがとても「変態的」ですごい仕組みであることが伝わりました。
図7 さがわさん自身もこんな感じでいろいろな不具合の修正をしているとのこと。特定のジャンルに固まっているのはきっと気の所為
Ubuntu 26.04 LTS Server Considerations 〜26.04 LTSに乗り換える? 乗り換えない?〜
図8 サーバー管理者向けに26.04をどう扱うかの葛藤をわかりやすく解説してくれるhitoさん
次はhitoさんによる「Ubuntu 26.04 LTS Server Considerations 〜26.04 LTSに乗り換える? 乗り換えない?〜」です(YouTubeのリンク、発表資料のリンク)。
26.04と言えばcoreutilsがRust版になるというリスクがありますが、いろいろ違う部分はあるもののそこまで心配はしなくて良さそうです。よって現在使っているバージョンと、業務上の優先度に合わせて更新すべきかどうかを判断すれば良いことになります。
ちなみにAIユーザー、特にGPGPUの性能が重要なユーザーにとっては、性能向上や管理の簡素化が見込めるので、はやめにアップグレードする価値はあります。
後半ではAIを利用した攻撃やポスト量子暗号化も絡めた、現在のサーバー管理者にとって優先度をどう付けて対応していくかって話もあってとても参考になりました。
図9 24.04 LTSのサーバー管理者にとっては、アップグレード以外に優先すべき課題があると思うので、特殊事情がない限りアップグレードは先送りでいい
新しいUbuntu/GNOMEが使いたいからXからWaylandへ移行頑張ってるの巻
次は村田さんによる「新しいUbuntu/GNOMEが使いたいからXからWaylandへ移行頑張ってるの巻」です(YouTubeのリンク、発表資料のリンク)。
図10 26.04にすると音声周りのトラブルでミーティングが立ち行かなくなって困った村田さん
村田さんと言えば25.04リリース時のオフラインミーティングでもXからWaylandの移行に伴う苦労話やノウハウを面白おかしく話していました。今回は26.04を使って引き続きWaylandへの移行を進めている話です。
本題を始める前に紹介してくれたのが、AMD CPUで発生していた音声やマウスが固まる問題です。幸いカーネルの不具合であることがわかっており、修正予定とのこと。本当は4月時点で修正されており、オフラインミーティングまでには直っている予定ではあったものの、GW前後の脆弱性の話が優先されて後回しになっていた模様。
さて、本題のWaylandへの移行についてです。Waylandではセキュリティ機構がしっかりした関係でX時代に比べると自由度が下がっています。それに伴い代替手段があるもの、ないものなどが現れてくるわけですが、村田さんの用途で必要になる部分について具体的に紹介しています。
ちなみに前回のオフラインミーティングでは、村田さんの発表時にFirefoxの不具合らしき挙動が話題になっていました。それについては発表後に村田さんが報告し、その後なんやかんやあって、イベントの直前に無事に修正・リリースされたとのこと。
図11 一度リリースされたもののアクセシビリティ関連のリグレッションが発覚し一度撤回された。その後の6月16日に無事に正式な修正版がリリースされたとのこと
Ubuntu 26.04 LTSのリリースノートは読みません
いつもだとリリースノートの読み合わせをやるのですが、ここまでの発表で閉会時間まで残り15分。とてもじゃないですが間に合わないので、「各自で読んでおくように」ということになりました。
ちなみにこれまではDiscourseで公開されていたリリースノートを、WikiもしくはDiscourseで翻訳・展開する形をとっていました。Ubuntu 26.04 LTSからは過去のリリースノートも含めてすべてSphinx化されて「Ubuntu release notes」サイトで公開されることになります。
これはSphinxドキュメントをRead the Docs上に公開しているのですが、実はどちらも国際化に対応しています。つまり頑張ればpoファイルを使って翻訳できるわけです。しかしながらこの翻訳の仕組みを有効化するようにUbuntu側に働きかけているものの、現時点で対応されていません。
というわけで翻訳済みのサイトを作成しました。英語版も有効化しているので、日本語で気になるところがあったらそのまま右下のメニューから英語版に切り替えられます。
Rustとgtk-rsで自分用GUIツールを作ろう
図12 空いている時間を使って急遽登板してくれたsunnyoneさん
最後にsunnyoneさんが「Rustとgtk-rsで自分用GUIツールを作ろう」です(YouTubeのリンク、発表資料のリンク)。
自分用のツールにGUIをつけたい場合にどんな選択肢があるのか、それぞれのメリット・デメリットをリストアップしつつ、今回GTK + Rust(gtk-rs)を採用した理由も解説してくれました。
gtk-rsについては2023年7月の「Rust Monthly Topics」でも紹介されていました。
図13 GitのGUIクライアントをgtk-rsで作ってみた例
次のオフラインミーティングは開催できるのか?
Ubuntuのオフラインミーティングといえば「からあげ」は欠かせません。いや、Ubuntuとからあげはまったく関係ないはずなのですが、歴史的経緯で日本においてのみ欠かせないことになっていました。
最近は「思ったよりも参加者が増えていないのに、からあげの量を減らし忘れた」とか「そもそも参加者が高齢化して油ものがきつくなってきた」なんて悲しい事情も出てきています。そこで前回同様量を抑えめにして普通のオードブルだけにしてみました。ところがLTSということで参加率が良かったのか、参加者の胃腸が強くなったからなのか、今回はあっさりとなくなってしまいます。
図14 あいにくの雨なので実参加が少なく、余ってしまうのではないかと当初危惧されていたからあげ。筆者も食べられませんでした
こちらも恒例のじゃんけん大会では、「はじめてのUbuntu」に加えて以下の景品を提供していただきました。
図15 本連載が掲載されているgihyo.jp(技術評論社)からは「[入門]LLMアプリ開発」と出版されたばかりの「Software Design for Beginners」の1、2、3
図16 ひっそりと開催していた26.04体験コーナー
図17 便利でおしゃれなグリーさんのイベントスペース
図18 YouTubeの配信ブースの様子
次回は半年後の「Ubuntu 26.10」のリリースパーティになる見込みです。Topicsでも話題になっていた音声入力は、果たして無事に使えるようになっているのでしょうか。そしてそもそもオフラインミーティングの次の会場を見つけられるのでしょうか[3]。
次のUbuntu 26.10も期待しましょう。