12月14日、グリー株式会社主催のもと、六本木にて「Ubuntu 19.10リリース記念オフラインミーティング19.12 」が開催されました。今回はいつもと趣向を変えて、フォトレポートという形でイベントレポートをお届けします。
Ubuntuオフラインミーティングとは
Ubuntu Japanese Teamは主にグリー株式会社主催のもと、半年に一度「オフラインミーティング」を開催しています。
図1 こんなきれいな会場でひたすらからあげを貪るイベント
これはUbuntuが半年に一度4月と10月にリリースされるので、それにあわせてリリースパーティやりたいよねというのが、主な目的です。「 パーティ」なので食べ物も出ますしお酒も出ます[1] 。せっかくUbuntuユーザーが集まるのだからと前でセミナーをおこなったりしますが、別に後ろでセミナーの邪魔にならない程度の酒盛りをしていてもかまいませんし、なんなら手持ちのデバイスを広げて黙々とハッカソンを行っていてもかまいません。そういう「ゆるめ」のイベントです。
[1] 若い人も気軽に参加できるようにと、参加費は無料となるように心がけています。ただUbuntu Japanese Teamはただのボランティア集団です。過去に執筆した記事の原稿料・印税収入の一部やサイトのアフィリエイトなどをやりくりすることで、イベントを成り立たせています。
たまに勘違いされるのですがいわゆる「勉強会」ではありません。ただの「パーティ」です。 リリースパーティでUbuntuについて勉強したり、日々の疑問を解消したいのであれば、積極的に詳しそうな人に話しかけたり、自分からセミナー発表に立候補してください。特に後者の発表は事前に主体性をもって調べなくてはならないため、勉強としての「こうかはばつぐん」です。
なお、これまでのオフラインミーティングの様子は、次の記事を参照してください。
今回はほぼ写真だけのレポートです[2] 。きっとイベントの詳細は参加者の方々のブログに満ち溢れているでしょうから。
[2] 「写真+ひと言コメント」のような体裁ならRecipeにイベントレポートを書いてもいいよという人は、次回以降に司会が募集した時にぜひ立候補をよろしくお願いいたします。用語の確認、よく聞いてなかった・わからなかった部分のフォローアップなどはJapanese Teamで行いますので、未経験者でも安心です。
ちなみにセミナーの雰囲気はYouTube にアップロードされています[3] 。またTwitterのイベント当時の#ubuntujpのツイートをtogetter にまとめてあります。
次のLTSに向けて
これまでのUbuntuは、LTS(長期サポート版)のひとつ前のリリースに大きめの新機能や影響範囲の広い下回りの改善を投入する傾向があります。たとえばUbuntu 18.04 LTSのひとつ前である17.10ならUnityからGNOME Shellへの切り替え、13.10ならユーザーセッションのUpstartへの移行、11.10ならGNOME 3への本格的な移行といった例があげられます。15.10には特筆すべき変化はありませんが、この時期のUbuntuはUbuntu Phoneなどに注力していたために、見た目上の変化はほとんど存在しなかったという事情があります。そして、2020年4月にリリースされる20.04はLTSであるため、19.10にもLTSを想定した機能が追加されることが予想されました。
蓋を開けてみたら、19.10は19.04に引き続き目立った変化はありませんでした。もちろん、その代わりZFSのルートファイルシステム対応[4] 、NVIDIAドライバーの同梱、i386のサポート終了に向けた措置、Chromiumのsnapパッケージの移行[5] などなど、細かい対応は行われています。GNOME Shellへの移行が一段落し、サーバーやIoTに注力しつつデスクトップは次の一手を考えている状況のようです。Waylandの標準化やPython 2の無効化は20.04以降の作業となることでしょう。
参加者は72人でした[6] 。前回より増えたものの、セミナーの申し込み者が身内だけという状況は継続中です。少しさびしい状態なので、次回20.04のリリースパーティにはふるって発表を申し込みください。なんなら今から申し込んでいただいてもかまいません[7] 。実際に参加できるかどうかは当日付近になってから判断する形で大丈夫です。その代わり、発表枠を用意できるかどうかもイベントに近くなってきてからの相談となります。
発表内容はUbuntuに関連していたらなんでもかまいません。「 Ubuntuユーザーのためのxxx入門」みたいな体裁を取れば、世の中のありとあらゆることがUbuntuに関連していると主張できます。ただし炎上しそうなネタは避けておくのがお互いのためでしょう。時間は5分から3時間まで相談に応じます。顔出しやYouTubeで配信される件についても、調整可能です。
「19.10をUnityっぽくして使う」
Ubuntuのオフラインミーティングはおおよそウェルカム糖分で小腹を満たしつつ、イベント開始直後にからあげとオードブルで殴るというスタイルをとっています。つまりイベントが始まった段階では、みんな口に何か入っているのです。
その状態でセミナーやっても皆さん食べるのに夢中なので誰も聞いてくれません。前回同様、今回も開始直後は特にセミナーを行わないことにしました。決してセミナー発表者が少ないことに対する苦肉の策ではありません。YouTubeの配信を見ていた人は、Fossa(次回20.04のコードネームの動物)のぬいぐるみが映った画面の後ろでひたすら咀嚼音が流れているのを聞くことになります。
食べ終わったあとの一回目のセミナーはUbuntu Japanese Teamのメンバーでもあり、Canonicalの社員でもある村田さんによる「19.10をUnityっぽくして使う 」です。
図2 19.10をUnityっぽくして使う
3年前のオフラインミーティングで発表した 「オレのUbuntuノートPCセットアップ」の2019年版として、Unityユーザーだった村田さんがGNOME Shellに移行するにあたって設定した内容・考え方を面白おかしく解説してくれました。現状のUbuntu DockよりももっとUnityなUIに寄せたいユーザーにとっても参考になることでしょう。
図3 デスクトップ設定を直接、届ける村田さん
図4 3年前からノートPCも買い替えた模様
ちなみにCanonicalでは、日本での採用、特にIoT分野のエンジニアの採用を行っているそうです。興味のある人は「採用ページ 」から「Japan」や「APAC」で検索してくださいとのこと。また、2013年から運用しているUbuntu JapanのTwitterアカウント でも日本語の情報発信を強化しているようで、フォロワーが増えると嬉しいとのことでした。
今回のリリースノートとUbuntu Pro
もうひとつのセミナーは恒例になりつつあるリリースノート一気読みです。
Ubuntu 19.10のリリースノート をよく読むと、個々のコンポーネントのバージョンアップのおかげで、細かい改善は数多く行われていることがわかります。また大きな変更点については本連載でも紹介してきました。セミナーでは、そのへんの解説済みの改善点を適度にスキップしつつ、紹介していきます。
図5 リリースノートを画面に大写しして進める
図6 Ubuntu Weekly Topicsでもお馴染みの吉田さん
ここ数回のリリースで恒例となっている大量のs390xアーキテクチャー(IBM Z/Linux ONE)についても、「 s390xなマシンを触っている」という人が日本でもみかけるようになったので、そのうちご家庭でも使えるようになるのではないでしょうか。すみません、適当なこと言いました。s390xがご家庭で使えるようになることはたぶんないです。とにかくs390xは本連載でも一度取り上げてみたいところではあります。
リリースノート自体の紹介はそこそこに、最近アナウンスされたUbuntu Pro を紹介するフェーズに移ります。現時点でUbuntu Weekly Topicsに掲載されている以上の話はあまりないのですが、これまでの状況をまとめたり、今後の展開を予想したり、実装コードの公開されているコミットログを晒し上げたりと、それなりに盛り上がっていました。
図7 Ubuntu ProはCanonicalの村田さんも交えて、いろいろと濃い話を
Ubuntu ProでUbuntu Weekly Topicsのページを紹介したついでに、「 来年にアメリカで開催されるWSLConf 」の話も出てきました。CanonicalでWSL(Windows Subysystem for Linux)を担当している開発者も、日本でのWSLConfの開催 を期待している模様。今後のアナウンスが楽しみですね。
また、Ubuntu 20.04 LTSリリースに向けたユーザーアンケート についても紹介していました。要するにUbuntuユーザーがどんなふうに使っていて、どういう印象を持っていて、どんな機能を期待しているかのアンケートをとって、今後の開発に役立てようというものです。ウェブからアカウントを作ることなく簡単に回答できますので、読者のかたもぜひ回答してください。
ちなみにおそらく英語で回答する必要があります。しかしながらほとんどが選択式なのと、自由入力欄も単語の羅列でも回答になるような質問(2年後にはどんな技術が流行っていると思いますか?)がほとんどなので、そこまで大変ではないでしょう。
なんかもうここのコーナー、リリースノートよりも「最近のUbuntu Weekly Topics」のほうがウケるんじゃないかって気がしてきました。
「GREEのUbuntu担当です」
主催・会場提供のグリー株式会社の松澤さんは、グリーでのUbuntuの話とせっかくなので最近のグリーの取り組みや採用 に関する話を紹介しました。
図8 GREEでのUbuntuの事例を紹介
オンプレミスな大量のUbuntuサーバーをGCPに移行中だとか、サポートの切れたUbuntu 14.04 LTS(Trusty Tahr)をひたすら駆逐し続けているだとか、インフラ周りの話を紹介しつつ、グリーの採用 についても説明していました。あとGREEも、Twitterアカウントであるgree_tech のフォロワーを募集中だそうです。
ただし、これだけで終わらないのが松澤さんのすごいところ。おもむろにもうひとつのプレゼン資料「水中ドローン作ってみた」を取り出します。曰く、次のような流れで水中ドローンを作ってみることになったんだとか。
社内の非公式Make部の活動の一環でテグスを使うことになった
どうせテグスを使うなら釣りもやってみようと一式揃えてみた
うまく釣れないけど、釣れない理由がわからない、PDCAが回せない
まずは視覚化からということで水中カメラを作ってみた
たしかに撮影できるけど安定できず見ているだけで酔う
そこで水中カメラをドローン化することに
3Dプリンターを買って筐体作った
ドローンとコントローラーの間の通信は「50mのLANケーブル」
きちんと安定して映像を撮れるようになった
それでも釣れなかった
現在、改良するために基板から作成中
……優秀な人は発想と行動力からして違いますね。
図9 LANケーブルを水没させる案は周囲からも反対されたそう
図10 テスト用の場所は台風で使えなくなったので急遽代替地を用意したんだとか
図11 撮影した様子はYouTubeでも見られるとのこと
じゃんけんの儀式に供される差し入れ
今回もさまざまな人から、いろいろな差し入れをいただきました。
さらに日経Linux編集部からは、6月8日に発売された『日経Linux 2019年7月号 』の特別付録である「microSDカードアダプター」を「参加者全員プレゼント」という形でご提供いただきました。
図12 日経Linux編集部からの差し入れ
図13 microSDカードアダプターの山
本連載を掲載している技術評論社からは、直近の雑誌も含むさまざまな本(『 IT業界の病理学 』『 今夜はおでん 』 )をご提供いただきました。
図14 技術評論社からの差し入れ
じゃんけん大会でこれらの景品をゲットされた方や参加者全員プレゼントを受け取った方は、ぜひSNSやブログなどで感想・アピールをしていただけると助かります。
これらの景品以外にも、一般参加者からお酒・食べ物の差し入れをいただきました。全部は把握できていないので個別の紹介はできませんが、この場を借りてお礼申し上げます。
図15 レアなEoanシャツ
図16 日本酒「屋守」
また本連載でも執筆している北海道の写真家水野さんからは、卓上カレンダーをいただきました。
図17 前々回のイベントでWSLでバックアップする話をした水野さん作のカレンダー
図18 いきなり「カレンダーが景品です」と言われても困るだろうと、経緯の紹介資料まで作ってくれた
Ubuntuユーザーの食糧事情
今回もからあげを用意しました。からあげプレートが選べなくなった結果、「オードブル、ただし中身はすべてからあげに変更」 なんて注文をすることになったのだとか。「 オードブル(前菜) 」とは一体。
図19 こちらが普通のオードブル
図20 こちらがからあげのみのオードブル
図21 こういうのが何皿か用意される
図22 参加者は一度整列した上で
図23 こんな感じでお皿に乗せていきます
図24 ソフトドリンク
図25 アルコール類
図26 やたらと消費が速く、もう一ケース追加することになったサッポロクラシック
また、今回は諸事情により「生ハムをデプロイ職人」はおやすみでした。
図27 「 Ermine=おこじょ」ということで多摩のお菓子「おこじゅ(三時のおやつという意味) 」
次はUbuntu 20.04 LTS「Focal Fossa」です
というわけで令和最初のUbuntuリリースに対する、2010年代最後のオフラインミーティングの様子をお届けしました。
まず最初に、いつものように会場まで参加してくださった皆様ありがとうございました。SNSやブログなどに感想を書いて、Ubuntuや差し入れの品を宣伝していただけると助かります。次回に向けての要望がある場合は、ぜひUbuntu Japanese Teamに届く形でご連絡ください。できる範囲で応えていきたいと考えています。からあげとコールスロー以外で。もちろん次回があるなら発表したいという要望も随時受け付けています。
最後になりましたが、今回もたくさんの方がこのイベントを裏や表で支えてくれています。毎回六本木ヒルズにある広い会場を提供してもらえている主催のグリー株式会社 には頭があがりません。
毎度のことながらCanonical、日経Linux編集部、技術評論社の皆様には「じゃんけん用に」とさまざま景品をご提供いただいています。ここ数回は参加者からの(なぜか主に日本酒の)差し入れも増えてきましたね。準備中はてんやわんやで、ろくに差し入れしてくれた人へのお礼や差し入れの品の紹介もできず申し訳ありません。
会場スタッフには早めに会場入りしていただき、買い出しから設営、受付に給仕っぽいことまでいろいろ手伝っていただきました。最近はいろんな人が忖度しながらがんばってくれるため、当日はだいぶ楽させてもらっています。「 この日にイベントやるんでよろしくおねがいします」と「今日はうまいことがんばってください」って発言を引き継ぐ人が出てくれば、そろそろ筆者は用済みになるんじゃないかと怯える日々です。
最後にJapanese Teamの身内ではありますが、司会の長南さんには毎度毎度じゃんけんやアナウンス、セミナーの前フリなどいろいろなマイク関連のお仕事をこなしてもらいました。また吉田さんには「からあげ(とついでに食料) 」の調達という重要かつ一番精神と頭と予知能力を使うミッションをこなしてもらいました。ちなみに今回のからあげ、オードブルは、すべて吉田さんのポケットマネーです。この2人がいるからオフラインミーティングが成り立っているので、この記事を読んだ方はぜひねぎらいの言葉をお願いします。
次は2年ぶりのLTSであるUbuntu 20.04 LTSです。もちろんリリースされたらなんらかのイベントを行うつもりです。今回参加できなかった方も、ぜひ次回は参加していただけたらと思います。
図28 カメラの前に陣取っていたFossaのぬいぐるみ
次回はUbuntu Weekly Recipeの第600回です。