Ubuntu Weekly Recipe

第698回デスクトップ環境の2021-2022年

新しい年の始めに、Ubuntuで使用できるさまざまなデスクトップ環境について2021年に起こったことと2022年に起こりそうなことを紹介します。

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。本連載も14周年を迎えました。

もうすぐ700回ということで、筆者がパッと思いつく長寿TV番組である『8時だョ!全員集合』を調べてみると、放送回数は803回ということでした。まだまだ背中は遠いです。

安定して回を重ねていくには執筆者の多様化が必要であるという昨年以前からの課題は現在も引き続いていますが、今年も誠心誠意継続していきますのでよろしくお願いいたします。

デスクトップ環境

では早速各デスクトップ環境を見ていきましょう。昨年第648回でお届けした内容の今年版になりますが、昨年の内容と今年の内容はリンクしません。

GNOME

昨年GNOMEは40と41をリリースしました。Ubuntuでは21.04で3.38を継続して採用し、21.10で40を採用したので、現在開発中の22.04 LTSでは41が採用されることになるはずですが、いきなり42にジャンプアップする可能性もあります。

第687回でも紹介したように、GNOME 40では大幅なルック&フィールの変更があったものの、Ubuntuでは可能な限り旧来のルック&フィールを維持しています。実際ワークスペースを縦にすればUbuntu 21.04とほとんど区別がつかなくなるでしょう。そのための拡張機能もリリースされていますが、同じく第687回で述べたように適用が困難、というオチがつきます。

今年はGNOME 42と43がリリース予定で、各コンポーネントのGTK4へのポーティングが進んでいくことでしょう。すでにいくつかのアプリケーションは完了しており、42で使用できるようになる見込みです。

GNOMEに関して特筆すべきこととしては、その名もGNOME Text Editorの開発が始まったことですブログ記事⁠。

GTK4ネイティブのテキストエディターで、現在も絶賛開発中ではあるものの、Flatpakパッケージとして提供されており、テストできる状態になっています図1⁠。Vimキーバインドも(試験的)サポートとのことなので、Vimユーザーにも嬉しいです[1]⁠。

図1 GNOME Text EditorでMarkdownファイルを表示し、設定(Preferences)を開いているところ。geditと違って同じウィンドウ内に表示される
図1

果たしてgeditに代わってデフォルトのエディターになるのか注目したいところです[2]⁠。

なお昨年から本連載ではGNOME関連の基本的な使い方を紹介してきました。

今年も継続する予定ですのでご期待ください。

KDE

何度となく述べていますが、現在KDEというデスクトップ環境はリリースされていません。KDE Frameworks、KDE Plasma、KDE Gearに分けてリリースされています。

正直なところKDEに関しては昨年の大きな変更点今年のロードマップが公開されているため、ここで触れることはあまりありません。Steam DeckにPlasmaが採用されたこと、Waylandセッションの開発が進んだことなどが昨年行われたこととして挙げられています。KDEシステム設定の「言語」「形式[3]⁠」が統合されること、WaylandセッションがX11を完全に置き換えるようになることなどが年内に行われる予定です。

昨年はKDEプロジェクトが発足から25周年という節目を迎え、10月14日にリリースされたPlasma 5.28が「25th Anniversary Edition」としてリリースされました。とはいえ「25th Anniversary Edition」っぽさはあまりなく、通常のリリースという感じです図2図3⁠。ログイン時にデスクトップに遷移するまでにその旨のテキストが表示されるのですが、早すぎてスクリーンショットが取れません。Kubuntu 21.10用のPPAでもパッケージが公開されているので、インストールしてみてください。

図2 Plasma 5.28にアップデートしたKubuntu 21.10のデスクトップ
図2
図3 ⁠About this System」を表示するとPlasma 5.23であることがわかる
図3

Xfce

Xfceは新規のリリースがない1年でした。

GSoCでファイルマネージャーであるThunar強化を行ったとのことです。

GSoCをうまく活用して開発が進むといいのですが、メンターの労力もかなりのものなので即座に開発力強化とはなりません。とはいえ今年中には4.18がリリースされることを期待したいところです。

LXQt

LXQtは昨年4月16日に0.17.0が、11月6日に1.0.0がリリースされました。最初のリリース版は2014年5月の0.7.0だったので、7年半で1.0にたどり着いたことになります。

相変わらずロードマップが公開されていないため今後どのようなことが予定されているのかはわからないのですが、Qt 6への移行をどうするかの議論が始まっています。

MATE

MATE昨年8月10日に1.26がリリースされました。Ubuntu MATE 21.10で採用されており、おそらく22.04 LTSでも同じバージョンを採用すると思われます。

ここ何バージョンかはおおむね1年毎のリリースとなっていましたが、1.26は1年半程かかりました。いずれにせよ今年中にもリリースが見込まれますし、課題は徐々に進めているWayland対応で、おそらく数年がかりで継続して行っていくものと思われます。

Cinnamon

Cinnamonは昨年5月27日に5.0.0が、11月15日に5.2.0がリリースされました。Linux Mintの変更点として挙げられている5.05.2の変更点を見ても、小規模の変更にとどまっているようです。その分なのかはどうかは不明ですが、Linux Mintに収録しているアプリケーションの変更や強化に重点を置いているようで、それはそれで喜ばしいことでしょう。そのうちの一つは第667回で紹介したWarpinatorです。

このようにCinnamonのリリースはLinux Mintのリリースと連動しているため、今年も2回リリースされるのは間違いありませんが、やはり小規模の変更点にとどまるものとは予想できます。しかしLinux MintはUbuntuのLTSをベースにしているため、Linux Mintも大きな変更を迎えることになります。これに合わせて何か動きがあるのかどうなのかといったところでしょうか。

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