Ubuntu Weekly Recipe

第808回Ubuntuフレーバー10種類総ざらい

今回は、今まで意外となかったUbuntuフレーバー全10種類を紹介します。

フレーバーとは

みなさんもご存知のとおり、Ubuntuはデスクトップ環境としてGNOMEを採用したLinuxディストリビューションです。

UbuntuのリポジトリにはDebian由来の多くのデスクトップ環境のパッケージがあります。また、デスクトップ環境だけではなく用途によっても分類できるでしょう。そう、ちょうどUbuntuとUbuntu Serverのように。

「フレーバー」とUbuntuの関係も似たようなもので、Ubuntuの公式派生版といったものです。Ubuntuのリポジトリを使用して、各種デスクトップ環境や用途によってインストールするパッケージを分けています。

フレーバーにもLTSはあり、現在は3年サポートで延長はありません。次のLTSは特に、23.10との違いはあまりなさそうです。もちろんバージョンアップするだけで3年サポートになるため、充分に価値のあるものですが。

今回紹介するベースのバージョンは23.10です。この時期なので24.04 LTSベースにしたかったのですが、Ubuntu Weekly Topicsにもあるとおり執筆時点でxzのバックドア問題でリポジトリが盛大に壊れており、かつインストーラーも生成されずインストールすらままならない状態で不可能でした。現在インストールはできる状態になっていると思われます。

では詳しく見ていきましょう。ちなみにリリース順に並んでいます。なおUbuntu 23.10のデスクトップを確認したい場合は第783回の図1をご覧ください。

Kubuntu

図1 Kubuntu 23.10のデスクトップ
図1

Kubuntuはその名のとおりKDEをベースにしたフレーバーですが、現在KDEというデスクトップ環境はリリースされていません。デスクトップシェルであるKDE Plasma、フレームワークであるKDE Frameworks、アプリケーションであるKDE Gearに分かれてリリースされています。

先日KDE Plasma 6、Frameworks 6 Gear 24.02がリリースされました。KDE(コミュニティ名)ではKDE MegaRelease 6と呼んでいます。

ツールキットがQt 6ベースになり、Waylandセッションがデフォルトになったのが特長ですが、24.04 LTSでは見送られ、従来どおり5.27系でリリースされる予定です。

GNOMEと同等かそれ以上に作り込まれたデスクトップ環境なので、GNOMEが合わない場合は真っ先に試してみるのがKubuntuといえるでしょう。

Xubuntu

図2 Xubuntu 23.10のデスクトップ
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XubuntuXfceデスクトップ環境をベースにしたフレーバーです。Xfceはシンプルなデスクトップ環境で、操作感も伝統的でGNOMEの先進的なルック&フィールが合わない場合には使用してみるといいでしょう。ハードウェアにかかる負荷もあまり大きくなく、少し古いPCでも軽快な動作が期待できます。

Ubuntu Studio

図3 Ubuntu Studio 23.10のデスクトップ
図3

Ubuntu Studioはクリエイター向けのフレーバーです。⁠クリエイター向け」といっても漠然としていますが、オーディオ、グラフィック、写真、出版、ビデオと大きく5ジャンルに分かれています。これらのパッケージが一挙にインストールされるので(ただし出版はオプション⁠⁠、ストレージの容量も多く取ります。

しかし自分はビデオ編集しかしないので不要なパッケージはアンインストールしたいんだ、ということも往々にしてあるでしょう。そういった場合は、⁠Ubuntu Studio Installer」で簡単にパッケージの増減ができます図4⁠。

図4 ⁠Ubuntu Studio Installer」で構成の変更ができる
図4

なおデスクトップはKDE Plasmaです。クリエイター向けアプリケーションはQt/KDEで書かれたものが多いので、納得のチョイスです。

Lubuntu

図5 Lubuntu 23.10のデスクトップ
図5

もともとはLXDE、現在はLXQtデスクトップ環境を採用したフレーバーです。他のデスクトップ環境と比較しても極めてシンプルで、あまり統合感はないかもしれません。しかし、端末が主な用途で他に使用するアプリケーションがQt/KDEベースという場合には試してみるべきフレーバーです。

デフォルトでは日本語入力に必要なパッケージがインストールされていないため、ibus-mozcfcitx5-mozcをインストールするといいでしょう。後者がおすすめでしょうか。

Ubuntu Kylin

図6 Ubuntu Kylin 23.10のデスクトップ
図6

Ubuntu Kylinは中国語向けのフレーバーで、日本語で使う積極的な理由はありません。後述するMATEをフォークしたデスクトップ環境UKUIは、Windowsのルック&フィールに似せていて目を引きます。一応日本語での使用も可能なため、UKUIを体験してみるのも面白いでしょう。

Ubuntu MATE

図7 Ubuntu MATE 23.10のデスクトップ
図7

Ubuntu MATEMATEデスクトップ環境をベースにしたフレーバーです。MATEはGNOME 2.xからフォークしたデスクトップ環境で、古いユーザーには懐かしく、新しいユーザーにはレトロ感を味わうことができるでしょう。

MATEの面白いところは、MATE Tweakでパネルレイアウトの変更が簡単にできることと、AIで生成した壁紙が収録されているところでしょう。23.10には雄々しいミノタウロスがリストされています図8⁠。

図8 壁紙をAIで生成したミノタウロスに変更したデスクトップ
図8

本連載では珍しく、Ubuntu MATEに関しては過去に3回ほど取り上げています。

第348回ではリミックスをフレーバーとして紹介していますね。それはさておき、第373回と第496回は、今でもおおむね役に立つ内容です。

Ubuntu Budgie

図9 Ubuntu Budgie 23.10のデスクトップ
図9

Ubuntu Budgieは、GNOMEをベースにデスクトップシェルをGNOME ShellからBudgieに変更したフレーバーです。スクリーンショットを見る限りでは、GNOMEベースであることを感じることはないでしょう。

macOSっぽいレイアウトですが、⁠Budgie Makeovers & Layouts」でテーマとレイアウトの変更も可能です。また「Budgieデスクトップの設定」でさらに細かなカスタマイズもできます。

日本語入力にはやや難があり、⁠IBusの設定」を起動して「システムトレイにアイコンを表示する」を有効にしてもシステムトレイ(あるいはAppIndicator)にIBusのアイコン表示はありません。⁠プロパティーパネルを表示する」「自動的に隠す」または「常に表示する」にするのがおすすめです図10⁠。

図10 ⁠プロパティーパネルを表示する」「自動的に隠す」または「常に表示する」にする
図10

Ubuntu Unity

図11 Ubuntu Unity 23.10のデスクトップ
図11

昔々ネットブックというものがありました。ノートPCの筐体を小さくしたもので、⁠当時としては)軽く安価でもありました。その分ディスプレイの解像度は小さく、当時のGNOMEのユーザーインターフェース(前出のUbuntu Mateが類似)では使用に難がありました。ネットブックに関しては次の記事が参考になります。

そこで登場したのが、Ubuntu独自のデスクトップシェル、Unityです。本連載での初出は第143回でした。現在のバージョンであるUnity 7[1]については第394回で紹介しています。小さなディスプレイでも大きなディスプレイでも単一(Unity)のユーザーインターフェースで使用できるようにと開発されたものですが、その後さまざまな機能が追加されていきます。

UnityがUbuntuデフォルトのデスクトップシェルになったのは11.04からで、17.04まで継続しました。17.10からは現在のGNOME Shellに変更されています。

そんな紆余曲折を経て、22.10からUbuntu Unityがリリースされました。Unityが気に入っていたとか、話に聞くUnityがどんなものだったか後追いしたい場合にはインストールしてみるといいでしょう。

Edubuntu

図12 Edubuntu 23.10のデスクトップ
図12

Edubuntuは教育機関向けのフレーバーで、5.10から14.04 LTSまでリリースされていました。かつてのEdubuntuは特別扱いで14.04 LTSでも5年サポートがあり、すなわち2019年4月まではサポートが継続していましたが、その後終了となります。

コンセプトを引き継いで別の開発者によって開発が再開されました。いわば新生Edubuntuです。

教育機関向けといっても、就学前教育(主に幼稚園や保育所)から高等教育(大学や専門学校)まであり、幅が広いです。そこでEdubuntu Installerというツールが用意されており、就学前教育(Preschool Education⁠⁠、初等教育(Primary Education⁠⁠、中等教育(Secondary Education⁠⁠、高等教育(Tertiary Education)と発達段階に応じてパッケージの構成が変更できるようになっています図13⁠。

図13 Edubuntu Installerでパッケージの構成を変更する。よく見ると図4と酷似しており、実は同じ開発者によるものだ
図13

Ubuntu Cinnamon

図14 Ubuntu Cinnamon 23.10のデスクトップ
図14

CinnamonLinux Mintが開発しているデスクトップ環境です。Linux MintはUbuntuをベースとした派生版なので、Linux Mintを使えばいいと思われがちです。しかしながらUbuntu Cinnamonは、アプリケーションの構成はLinux Mintと全く異なりますし、独自ツールはUbuntuのものをそのまま使えるため、違いは大きいです。

第618回でRemix時代に紹介しているので、こちらも参考にしてください。現在では古くなった記述が多いものの、⁠IBusのステータスを見やすくする」で紹介しているコマンドは現在も有用です。

リミックス

非公式派生版の中で、特にUbuntu色が強いものはRemixと呼ばれます。前出のネットブックがブームだった頃にはNetbook Remixがありましたし、Ubuntu Cinnamonも以前はUbuntu Cinnamon Remixでした。そして日本語独自の変更を加えたものは日本語Remixです。

第794回ではUbuntu Sway Remixを紹介しました。これもフレーバーになったら面白いことでしょう。

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