新年おめでとうございます。
2018年を迎えました。今年も、日本の電子出版市場の考察と専門出版社からの電子出版ビジネスの展望についてまとめてみます。
過去のコラムについては以下をご覧ください。
堅調に伸び続ける電子出版市場
まずは今年もインプレス総合研究所が発行した最新の『電子書籍ビジネス調査報告書2017※1』の数字から紐解いてみます。
2016年度の市場規模は2,278億円、2017年度は電子書籍単体で2,000億円規模突破の見込み
※1の文献の調査数字によれば、2016年度に電子出版市場はついに2,000億円規模を突破(2,278億円)し、2017年度終了時点では市場規模は2,630億円に上ると予想されています。2014年(1,411億円)からの3年間で約1,200億円の市場拡大となりました。
| 電子出版総合 | 電子書籍 | 電子雑誌 | 前年からの伸び |
2014年 | 1,411 | 1,266 | 145 | ― |
2015年 | 1,826 | 1,584 | 242 | 415 |
2016年 | 2,278 | 1,976 | 302 | 452 |
2017年 | 2,630 | 2,280 | 350 | 352 |
※単位は億円、2017年は予測値
中期で見れば堅調な伸びと言えますが、懸念点としては、2016→2017年の伸びが過去2年の年間の伸びより鈍化している点です。また、※1の資料では、今後3年間も伸びは緩やかになると予想しています。
コミックのジャンルに関しては電子の存在感が顕著に
この3年間で1,000億円を超える市場拡大をした要因としては、2015年の成長要因でもあった電子雑誌の読み放題の普及・浸透に加えて、電子コミック市場の爆発的拡大が挙げられるでしょう。
※1の資料でも、電子書籍全体の市場規模のうち、2016年度は1,617億円(約82%)となっており、中期で見たときの電子出版市場の成長を牽引した最大要因は電子コミックといっても過言ではありません。
コンテンツそのものの品質や価値はもちろんのこと、電子コミックにフォーカスしたプラットフォーム・アプリとスマートフォンのシェア拡大が一番の要因と言えるでしょう。
後者のスマートフォンの普及は、総務省の『平成29年版情報通信白書』の数字で2017年の世帯保有率は71.8%となっている他、各種調査でもこの数年間で大幅に伸びている状況になっています。
ユーザ一人ひとりがスマートフォンを持ち始めた状況の中、3年前の本コラムで紹介したLINEマンガや「pixivコミック」のように既存のサービスユーザベースから拡張しているもの、あるいは「電子貸本Renta!」や「めちゃコミック」のように携帯電話(いわゆるガラケー)からスマートフォンへシフトした定番サービス、さらには、『少年ジャンプ+』のように紙の雑誌をアプリ化しユーザに対応したものなど、単なる電子書店だけではないところで「スマホでマンガ」を体験する環境が整備された結果と言えるでしょう。
ちなみに今、ざっと挙げたサービス・アプリのリリースあるいはスマートフォンシフトが2012~2014年の間の出来事(他にも紹介しきれなかったサービス・アプリが多数あります)が、この3年間の伸びにもつながっていると筆者は考えます。
そろそろ電子出版市場“のみ”を特別視しなくても良い?
電子出版市場が伸びている一方で、出版市場全体については、新聞やテレビあるいはソーシャルメディアなど多数の場所で取り沙汰されているとおり、年々市場規模が縮小しています。
たとえば、出版科学技術研究所によれば2016年(1~12月期)の紙の出版市場は1兆4,709億円、去る2017年12月25日に同研究所が発表した予測によれば2017年(1~12月期)の紙の出版市場は1兆3,700億円の見込みと1年で1,000億の市場縮小です。先ほどの中期(2014年~2017年)で見ると2,360億円の減少となっています(2014年:1兆6,060億円、2017年:1兆3,700億円)。
この減少幅を見る限り、電子出版市場の伸びだけでは補えていません。逆説的な捉え方をすれば、楽天KoboやAmazon Kindleがリリースした2012年ごろによく言われていた「電子出版市場が紙の市場を食う」という仮説に対して、出版市場減少には電子化の波以外の、別の要因があると考えられるのではないでしょうか。このあたりについては、外部のメディアで取り上げられる意見や考えにむやみに流されず、出版業界・出版市場の当事者の課題として意識していくことが大事なのかもしれません。
その観点から、筆者自身は電子出版に関わる立場として、もうそろそろ電子出版市場をあえて特別視する、あるいは、(形態としての)紙と電子を必要以上に意識して比較する時期は終わってきているのではないかと考えています。
書店減、EC市場規模拡大に伴う紙と電子の選択
先ほど、電子化の波という表現を使い、出版市場の拡大と減少について触れました。筆者は、「電子化の波」に関して言うと、コンテンツそのものの電子化(紙→電子)よりも、流通の電子化の波が、今後、より一層大きな影響を与えてくると感じています。
電子出版の前に紙の出版流通、書店について見てみると……
まずはじめに、日本出版販売株式会社(日販)が刊行する『出版物販売額の実態 2017』の数字を紐解いてみると、2006年度には1万4,000店舗以上あった書店が2016年度には1万店舗(10,583)ほどと約30%減少しています。この数字については、日本著者販促センターでは2006年(17,582店舗)から2017年(12,526店舗、5月1日時点)という、異なる数値ではあるものの、ほぼ同じ割合の減少が起きていることが発表されています。
先ほど、出版市場の減少に別の要因があると書いた点の1つとして、この書店減少が挙げられるのではないでしょうか。
上記の数字だけで見ると、書籍や雑誌の売り場が減っているだけです。しかし、一方で、EC(電子商取引)市場については年々拡大し続けています。
対象が(出版刊行物より)大きくなりますが、経済産業省が2017年4月に発表した「平成28年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」によれば、2016年のBtoCでのEC市場規模は15兆1,358億円(前年比9.9%増)、EC化率は5.43%(対前年比 0.68ポイント増)となっています。これは出版物のEC以外も含まれるため、あくまで参考値ではありますが、日本国内でのEC利用者数の増加を裏付ける数字と言えるでしょう。
ECでの選択とポイントの影響力、購読者の環境への配慮
そして、ECが増えることで、電子出版にはどのような影響があるかというと、以下の点が挙げられます。
- 購入経路の選択肢増
- 購入時間の24時間365日化
- EC上における紙と電子の選択
上の2つについては、出版刊行物に限らない、ECの特徴であるので省きますが、3つ目はまさに紙と電子の選択にほかなりません。Amazon Kindleをはじめ、楽天Kobo、hontoなど、各種電子書店の多くが、1つの書誌ページ(書籍や雑誌の紹介・購入ページ)で、紙と電子が選択できるデザインとなっています。
読者にとっては、自分が読みたいスタイルや時間に合わせて、紙と電子の選択ができる環境がほぼ整ったと言えるでしょう。筆者としては、今後、ECにおける販売の施策が、電子出版を含めた出版市場の成長に対して、大きな鍵を握っていると考えます。
さらに、電子出版には再販制度が適用されないことで、販売価格の自由化があり、今では多くの電子書店で価格を落とすキャンペーンを実施するようになっています。最近ではそういった価格変動を自動的に検知し、報告するまとめサイトなども多数生まれており、読者にとっての価格の概念が大きく変わっている最中です。
また、2017年は、電子書籍・雑誌だけではなく、紙の書籍・雑誌でも販売施策での変化が見られた年でもありました。それが、ポイントバックです。ポイントバックとは、本体価格は変えず(再販制度適用内)、代わりに購入したタイトルや金額に応じてさまざまな場所で使える金銭的価値のあるポイントを読者に還元する仕組みで、これまでも書籍や雑誌以外ではあたりまえに行われていたものが、2017年は紙の出版物にも適用するネット書店が増えたのです。
また、直接ECで購入するだけではなく、書店への動線としてのWeb/インターネットの価値が改めて評価されています。たとえば、2017年の電子出版アワード大賞を受賞した「絵本ナビ」はその一例です。絵本ナビは、絵本購入をサポートするためのカタログ的な意味合いを持っているのですが、ここからECへの導線をつなぐだけではなく、実際にオンラインで試し読みができることで、絵本の中身を、自分だけの空間で吟味できるという価値があります。絵本の主購読者である保護者にとって、ゆっくりとあるいは子供と一緒に選ぶ時間がインターネットを通じていつでもどこでも用意される、その結果、購入までつながることも、流通の電子化がもたらした恩恵の1つと言えるのではないでしょうか。
このように、コンテンツ以外の、流通のさまざまな部分での電子化と、それを選ぶユーザの環境がこれからの電子出版にとって非常に重要な要素になるはずです。
シェアリングエコノミーの拡大はどう影響するか
最後に、こちらも2017年にはあたりまえになってきた「シェアリングエコノミー」の存在もこれから注視する必要があると考えています。日本発のユニコーン企業(非上場で10億ドルの価値がある企業)でもある「メルカリ」を筆頭に、さまざまなフリマアプリ・サービスが登場しました。これまでは購入から所有までが、読者(ユーザ)の体験だったものが、シェアリングエコノミーの存在から、購入~所有~共有のサイクルが、読者の体験になってきています。
Amazon Kindle Unlimitedやdマガジンなどの読み放題サービスなどもその一貫と言えるでしょう。
そして、このメルカリが2017年5月にリリースした「メルカリ カウル」は、書籍に加えて、CD/DVD、ゲームなど、エンタメジャンルを主対象としたシェアリングサービスで、今後、こういったサービス群が出版市場にどのような影響が出てくるのか、筆者も気になるサービスの1つです。
2017年の電子出版動向~技術的観点から
ここまでは電子出版および出版市場のこの数年の流れと展望についてまとめてきました。これからは、2017年に起きた技術面から見た電子出版動向と2018年の展望について考察します。
IDPFがW3Cへ統合、EPUB3.1のRS公開
昨年の本コラムでも取り上げたように、2017年1月31日、IDPFが正式にW3Cに統合されました。今後は、電子書籍フォーマットであるEPUBの仕様策定は、W3C配下のプロジェクト「PUBLISHING@W3C」で進んでいきます。
これに先立ち、2017年1月5日に、EPUBの最新バージョンであるEPUB3.1のRS(Recommended Specification)が公開されています。
もともとEPUB自体はXHTMLとCSSというWeb技術をベースに生まれたものであり、今後、Web標準を司るW3Cにおいてどのように開発が進んでいくのか、個人的にも興味深いところです。
また、日本国内に関して言うと、2017年6月27日に、慶応技術大学SFC研究所を筆頭に、株式会社KADOKAWA、株式会社講談社、株式会社小学館、株式会社集英社、株式会社出版デジタル機構によるAdvanced Publishing Laboratory(APL)が設立されました。
APLは、日本の出版業界を対象に、新しい技術、新しい時代に対応するために、出版とデジタル技術を融合させることを目的に設立された研究所です。前述のEPUBに関する話題を含め、日本国内のこれからの出版において大きな役割を果たすのではないでしょうか。
ブラウザベースの電子書籍リーダーは普及するか?
2017年の電子出版にまつわる技術動向でとくに注目したいのが、Microsoft EdgeへのEPUBリーダー機能の標準実装です。Microsoft Edgeは、Microsoftが開発するOS、Windows 10に搭載されるWebブラウザで、2017年4月11日にリリースされた「Windows 10 Creators Update」において、EPUBリーダー機能が標準実装されたのです。
さらに同年10月リリースの「Windows 10 Fall Creators Update」では、テキストコピーおよびCortanaへの質問機能やインクノート、注釈などの機能が追加実装された他、米国内でのWindowsストアにて、EPUBの販売が行えるようになりました。
Microsoft EdgeへのEPUBリーダー機能標準実装は、今まで弱いとされていたPC(デスクトップ・ノート)での電子書籍(EPUBフォーマット)の閲覧が強化・改善される可能性があります。
また、現在米国限定となっているWindowsストアでのEPUB販売が、米国外にも適用されれば、今まで以上に販路が広がる可能性があります。読者にとっては選択肢の幅が増えることは、必ずしもメリットではないかもしれませんが、コンテンツを提供する出版社としては、販路に関して1社独占ではなく市場内で適正な競争が行われることは、ビジネスメリットとして非常に大きいと、筆者は考えています。
ここではMicrosoft Edgeをとくに取り上げましたが、それ以外のWebブラウザベースの電子書籍リーダーが、今後さらに普及する可能性があります。その理由はGoogleが推進しているPWA(Progressive Web Apps)の進化です。
PWAは、その名のとおりWebベースの技術で、Webブラウザ上で実行できるアプリ環境になります。2017年4月にはTwitterがPWA対応の「Twitter Lite」を発表するなど、各種サービスのアプリにおいて、PWA対応が進んできました。
これまでも、電子書籍リーダーの多くは、iOSあるいはAndroid向けのアプリとして展開されることが多い状況ではありましたが、先のMicrosoft Edge、そして、今後のPWAの普及度合いによっては、Webブラウザベースの電子書籍(EPUB)リーダーが改めて見直され、今まで以上に普及するかもしれません。
スマートスピーカーと電子書籍
最後に、2017年の技術動向で取り上げたいのが、スマートスピーカーの登場です。日本国内においては、2017年10月5日に、LINEの「Clova」とGoogleの「Google Home」「Google Home mini」が発表され、あとを追う形で、Amazon Echoが同年11月15日に発売されました。まさに2017年の秋は、日本国内でスマートスピーカーの競争が始まった時期でした。
一方で、スマートスピーカーの機能としては、まだまだこれからな部分が多く、現在は、対応しているアプリに対して自動応答する他、サービスと連動した音楽スピーカーとして利用されるシーンが多いようです。
しかし、今後、スマートスピーカーのメディアである「音声」とコンテンツがマッチすれば、新しいコンテンツの姿が見えてくるでしょう。電子出版に関して言えば、たとえば、文芸やビジネス書などのテキスト主体の読み物、あるいは、子ども向け文学作品などの読み聞かせのツールとして活躍するシーンは想像に難くありません。
さらに、室内のディスプレイやスマートフォンのスクリーンと連携させることで、音声+αのコンテンツの開発も可能となるでしょう。
筆者が所属する企業のような専門出版物ではまだ直接的な関わりが少ないかもしれませんが、出版物において、スマートスピーカーが持つ可能性は小さくないと筆者は考えています。
普及期における課題と対応
以上、2017年の電子出版市場と技術動向について振り返りながら、これからについて考察しました。最後に、それらをふまえて、普及期に入ってきた電子出版市場において、筆者が考える課題と対応についてまとめます。
日本の直近の電子出版元年から6年~端末やOSは何世代変わったのか?
電子出版市場の成長は先に書いたとおりです。市場の成長とともに拡大するのが利用者、すなわちユーザ数です。先ほどは、形態としての紙と電子について必要以上に意識・比較をする必要がないと書きましたが、1点だけ、意識・比較する必要があります。
それは、電子書籍・雑誌を読む端末の進化です。紙の書籍・雑誌に関しては、(紙の劣化はあるものの)紙の仕様が変わることはありません。しかし、電子書籍・雑誌に関しては、フォーマットであるEPUBのバージョンアップに加えて、そのコンテンツを閲覧するデバイスの進化がつねにつきまといます。
たとえば、1つの例として、日本の(直近の)電子出版元年と言われている楽天KoboやAmazon Kindleがリリースされた2012年の冬と、昨年2017年の冬のiPhoneについて比較してみましょう。
2012年冬のiPhoneの最新バージョンはiPhone 5(2012年9月21日発売)です。この端末の画面サイズは4インチ、解像度は1,136×640ピクセル、326ppiになります。2017年冬、直近のiPhoneの最新バージョンはiPhone X(2017年11月3日)です。この端末の画面サイズは5.8インチ、2,436×1,125ピクセル、458ppiになります。この解像度でタテ・ヨコそれぞれ倍に、ppiは1.5倍に大きくなっています。これは、電子書籍・雑誌制作時に、コンテンツの画像サイズに大きな影響を与える数字です。
OSのメジャーバージョンについては、前者はiOS 6.0、後者はiOS 11.0となっており、さまざまな機能拡張や改善が行われています。また、この間、2014年には開発言語がSwiftへ変化したことも付け加えておきます。
このように、電子書籍・雑誌の場合、コンテンツそのもののフォーマット、あるいは、それを閲覧する端末が、読者が購入したタイミングによって異なるケースがあるのです。その結果、とくに最新端末で古いコンテンツを閲覧する際に、(コンテンツリリース時の仕様に合わせた結果)画質が荒くなったり、あるいは、電子書店が提供するアプリのバージョンアップで、旧バージョンで制作したコンテンツが崩れるといったトラブルも起こりえます。
実際、技術評論社の電子書籍に関して、EPUBの仕様に則って制作しているコンテンツ(2013年発売)であるにも関わらず、最新の端末・電子書籍リーダーで閲覧した際、レイアウト崩れが起きたというケースもありました。結論としてはコンテンツの不備ではなく、電子書店リーダーのバグだったのですが、こういった問題に対して、電子出版の流通に関わる電子書店や電子取次には、より一層注意しきちんと対応してもらいたいところです。
進む技術、対応に追われる法整備
今の例に限らず、年々技術が進化していくことは避けて通れない道です。デジタル技術を活用する電子出版においては、技術進化から目を背けることはできない、不可避な流れと筆者は考えています。ですから、電子出版市場が成長していることをただ受け入れるのではなく、技術進化によって起こりうるトラブルに対応することはもちろんのこと、トラブルが起きる可能性を意識していくことが大事でしょう。
あくまで筆者の主観ですが、日本の電子書店や電子取次はこの部分が非常に弱いと感じており、トラブル=コンテンツの不備とするケースを何度も見てきました。コストの面からは下位互換が難しいのはわかりますが、そうであれば、どのタイミングで下位互換を放棄するのか、そういった部分のケアはもっとしてほしいところです。
また、電子化において避けられない問題として、海賊版対策もあります。2017年は、「はるか夢の址」や「フリーブックス」など、非常に悪質で大規模な海賊版あるいは海賊版誘導サイトが多数顕在化し、多くのニュースで取り上げられました。今挙げた2つについて、前者は著作権侵害容疑で逮捕となり、後者もサイト封鎖となっていますが、複製がしやすい電子書籍・雑誌ではこれからもイタチごっこが続くことが想定されます。
このほか、仕様面だけではなく、法律面でもまだまだデジタル技術に追いつていない部分があるでしょう。とくに日本の著作権についてはインターネットができる前から整備されてきたため、後追いで整備されている部分があるのも事実です。
繰り返しになりますが、デジタル技術やインターネットにはさまざまなメリットがある一方で、これまでには想定できなかったトラブルの危険性も抱えています。メリットをきちんと享受するためには、それらのトラブルを回避すべく技術動向をきちんと追い続け、また、ビジネスを健全に成長させるための法整備、そして、それに紐づく契約などへの意識を高める必要があるでしょう。
改めて技術の進化ありきで電子出版を考えてみる
最後に、改めて技術の進化ありきで電子出版を考えてみます。
この記事もそうですが、電子出版についてさまざまな情報を伝える場合、どうしても、提供する側の目線が強くなりがちです。しかし、技術の進化は提供側に影響があるだけではなく、利用者側(電子出版で言えば読者側)にも多大な影響を与えます。ときに、これまでのルールが通用しなくなるかもしれないのです。コンテンツを提供する側は、まずその点を改めて意識しなおす必要があるでしょう。
筆者は、今、電子出版が普及期に入ってきたと感じています。と同時に、2018年以降のさらなる電子出版市場の成長に向けて、これまでの読者・今の読者・これからの読者の皆さまに、技術が進化していくことを前提に良質なコンテンツを提供することが求められています。これは月日が経てば経つほど重要になり、ときにコストが大きくなる場合があります。
2018年は、過去数年の電子出版業界にあったような目新しさだけではなく、環境を整備する意識、他のWebサービスと同様、電子出版事業でも運用保守、それに伴う取捨選択の重要性が高まる1年になると予想します。